水草QA100 〜これから水草をはじめたい方に〜この4月に発売されたばかりの「水草QA100」。

アクアライフブログで連載していた記事をベースにさらに編集的な改良を施し、パワーアップした書籍となります。

ここでは著者である轟 元気さんをお招きして「水草QA100」についてお話しいただきました。

水草QA100 〜これから水草をはじめたい方に〜
水草Q&A

アクアリウム専門誌「月刊アクアライフ」編集部や著者である轟 元気さんに寄せられた水草にまつわる様々な疑問に、プロの水草水槽レイアウターであり、水草育成の第一人者である著者が懇切丁寧に回答します。 読めば水草にまつわる失敗を大幅に軽減できること間違いなし! 「水草水槽を部屋に置いてみたいけれど、制作や維持が難しそう…」そう思っているあなたにおすすめです!

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著者略歴
轟 元気 Genki Todoroki
1984年埼玉県生まれ。専門学校にてアクアリウムを専攻したのち2005年よりアクアリウム業界で従事。現在はアクアリウムショップ「e-scape」店長。「もっと簡単に、もっと自由に」をコンセプトに、ショップ業務ほか専門誌への寄稿、イベントでの水草レイアウト展示、水草育成のワークショップなど幅広く活動している。美しい水草レイアウトの制作を得意としており、これまでに植えてきた水草は10万本を超える!

水草のプロでブログのベテラン

まずは轟さんの人となりについてお聞きします。現在はアクアリウムショップの店長をされていますね。

轟:2005年から業界にいるので、かれこれ17年になりますね。意外とベテランです。

中でも水草レイアウトをお得意とされていて。

轟:そうですね、水草レイアウトを始めたのは高校生の頃からで、そもそもが好きですし、仕事としても意識的に力を入れてきました。

水草QA
著者製作の水草レイアウト水槽

この書籍では本文の執筆を主に担当されています。編集は私が担当したのですが、ずいぶん書き慣れていると感じました。

轟:以前から月刊アクアライフにも寄稿していますし、ブログであれば2018から始めていましたから、書くことについては特に抵抗はなかったですね。

ブログは度々拝見しますが、かなり作り込まれている印象です。

轟:そう言っていただけると嬉しいですね。けっこう手間がかかるので(笑)。

それにしてもバイタリティがありますね。発信欲が旺盛というか。

轟:若い頃から「発信側」に回りたいと考えていました。ブログもその一環ですね。

発信する上で気を付けている点はありますか。

轟:「水草レイアウト」と一口に言っても、いろいろな場面がありますよね。水草を植える、トリミングする、藻類の対策をする。

はい。

轟:そのそれぞれで、たくさんの理屈はある。けれど、発信する上では自分が試してうまくいった方法を最優先しています。

実践した結果であると。

轟:ええ。「理屈はこうだけれど実際にはこうだ」ということも多々ありますから。それに、自分が体験したことでないと自信を持って伝えられませんよね。

ブログを拝見すると化学的なアプローチが多い印象もあります。

轟:再現性があることが大切だと思っているので、自然とそういう表現になっているのかもしれません。

裏付けとなる情報を収集・整理するのは大変ではないですか。

轟:アウトプットのためにはそれなりの時間の勉強が必要ですから、大変ではないと言えば嘘になります。ただ、アウトプットをすれば、その知識はより強固になって身に付きますし、自分のためでもあるんですよね。

そうした発信を支えてきた動機や原動力があれば。

轟:アクアリウムの世界は免許や資格の類がさほど重要ではありません。ただ、それでは心もとない。自分をより広く深く理解してもらうためには、僕個人に根ざした成果物が必要で、その手段としてブログがあった……というのが動機にあたるでしょうか。

しっかりされています。

轟:今では僕を知ってもらうには履歴書なんかよりブログを見てもらうのが一番よいとすら思います。

水草QAの着手

実は、私も轟さんのブログを見てウェブ連載「水草QA」を依頼したという経緯がありまして。

轟:ブログは仕事に繋がれば……と思っていたのでうまくいきました(笑)。

依頼があった時、どんなふうに思いましたか。

轟:いろいろな思いがありましたね。というのも、私のブログを見た仲間から、「雑誌などの紙媒体と内容がバッティングするのではないか」と言われていたんです。

といいますと。

轟:つまり、雑誌などの紙媒体からライバル視される……というのも大袈裟ですが、結果として仕事の依頼されにくくなるのではないかと、そういう心配をされた。

今はウェブでの発信を敵視するような時代でもないかと思いますが……。

轟:私もブログと雑誌では発信するメディアや読者が異なるので問題ないだろうとは思っていました。けれど、実際にこうして執筆の声をかけていただいたことで、ほっとした面はあります。

執筆では自分も成長できた

基本的には私ども編集から質問を轟さんに投げて、または轟さんの経験から質問を設定していただいて、それに轟さんが答えるという形でブログの連載を進めていきました。執筆の際に気をつけたところはありますか。

轟:ビギナー向けの書籍になるだろうというお話であったので、なるべく具体的な説明をしようと思っていました。

水草QA

水草QA
専門的な情報だけでなく基礎的な情報も掲載

実践から導き出された答えを書いていただいたと。

轟:また、表現についてはなるべく平易にしようと思っていました。内容には興味があるのに文章がややこしいから読めない、では悲しいですし。

書いていて難しいと感じたところは。

轟:原稿には文字数の設定がありましたよね。ブログであれば5000字でも10000字でも納得するまで書けばいいけれど、短い原稿の中で、わかりやすく、誤解を与えないように書く。そこは苦労したかな。

では逆にポジティブな面があったなら。

轟:水草の管理に関する原稿は日常的に書いてきましたが、たとえば「水草とは?」という設問があれば、それについて改めて調べる必要があった。

それがポジティブな面ですか。

轟:ええ、普段は感覚として理解していることであっても、誰かに伝えるとなればきちんと言語化する必要がある。言語化するということは、自分の理解も深まるということですから、原稿を書きながら自分自身が成長できた気がします。

定説にも切り込んでみた

さて、内容について少し触れていきましょうか。どれも良い原稿であると思うのですが、いくつか印象に残ったものを挙げてもらえれば。

轟:硬度についてはちょっと面白いと思っています。

いくつかの回答で硬度の話が出てきますね。

轟:ええ、水草は高い硬度が苦手だということ。これをしっかり認識してほしかった。ここをクリアできれば水草の育成がだいぶ楽になりますから。

それも轟さんの実践からの答えですか。

轟:そうですね。まず、全国的に見て、水道水の硬度が高い地域がいくつかあって。

千葉などは有名です。

轟:私の住む埼玉も硬度が高い。そうした場所ではいくら水換えしても水草がきれいに育ちにくいんです。

反面、水草の育成には水換えが一番! という説も根強いですよね。

轟:たしかに日本全国で見ると、さほど硬度が高くない地域が多いですから、そうした説が当てはまることも多いんです。でも、私はもう一歩踏み込んでみました。

概論から各論にシフトしたんですね。

轟:私のブログでは以前から日本全国の水道水の水質を記載しています。そうした編集の作業をした身からすると、「日本全国、同じ管理方法で良いですよ」とはとても言えません。

他に石と硬度についての言及も目立ちます。

轟:石は人気のレイアウト素材ですが、ものによっては硬度を上げてしまいますから。その際の対応も記しました。

たしかに、石ではプロショップの方でも苦慮している場面に居合わせたことがあります。

轟:そうなんですよね。プロショップの方はもちろん石と硬度についてご存じではあるのでしょうが、意外なほど硬度が高くなることがあるのもまた事実で。

水草QA
硬度の話は水道水や石だけでなくミネラルウォーターにまで触れている

その他、藻類(コケ)に対してもページを割いていますね。

轟:藻類は多くの人が悩んでいるでしょうし、私も悩んできました。それで、今回は藻類をいくつかのグループに分けて対策を解説しています。

グループごとに違うんですね。

轟:そこがポイントです。

水草QA
藻類の対策は種類ごとに解説

例えば、ある回答では水槽の遮光をすすめたりしていますが、これはメリットもあればデメリットもありますね。

轟:そこですよね。藻類も光合成をする植物だから、その対策は水草にも影響することがある。でも、メリットとデメリットを天秤にかけて、メリットが多かったら、試してみる価値がある。

リスクを負わないやり方があればいいのでしょうけれど。

轟:そうした方法もあるし、提示していますが、ある種の藻類にはリスク覚悟で対応に臨むことも必要で。そのリスクを説明した上で、採用するか否かの判断は読者さんに委ねた部分もありますね。あいまいにぼかして説明してしまうのが、一番いけないと思って。

もっと水草にのめり込むきっかけになれば

改めてお話を聞いてみると「初心者向けのベーシックな内容」という紹介では片付けられないくらい、「轟さんのこれまで」が詰まった本に仕上がったと思います。

轟:書籍での執筆は私の目標でもあったので、できるだけのことをしたつもりです。

執筆した中でテーマまたは核となる思いみたいなものがあれば。

轟:極端にいうと、どこの地域の人であっても、この本に載っているやり方であればある一定の成果を得られる、それは常に意識していたつもりです。

そのこともあり、先にも触れたような切り込んだ話もあると。

轟:そうなんですよね。たとえば、お店に立ってお客さんと話をすると、水換えをしたがる人が多いことに気付かされます。

はい。

轟:でも、水換えをすることにこだわって結果が出ないのであれば、それは間違いであって。

魚がメインのアクアリウムをやってきた人からすると、「水換えは万能薬」みたいな思い込みはあると思います。

轟:ただ、そうした常識も、場合によっては通用しないことがある。常識を覆すのは大変だけれど、実践を重ねてきた中で確信となった部分はお伝えしたつもりです。

この本を手に取った方にはどんなふうに利用してほしいと思いますか。

轟:読んでみて、違和感を感じる部分もあるかもしれない。

一人の著者が書いているのだから、それはあっても不思議ではありません。

轟:そのときは、「ではどうすればいい?」と自分で考えてもらえれば、より水草に対しての理解が深まるのではないかと思います。私もそうして勉強してきましたから。

本を起点とするわけですね。

轟:この本を手に取ったことで、もっと水草にのめり込む、そういうきっかけとなれば嬉しいですね。

 

聞き手:編集部(山口正吾)

水草QA