みなさんこんにちは。
アクアライフWEB編集部です。
熱帯魚飼育のキホン 第7回は、フィルター(ろ過器)のお手入れについてのお話です。
「いろんなフィルターがあるけど、どうしたらいいの?」
そんな悩みを解決するためにも、フィルター掃除の「基本的な考え方」を、身につけていきましょう!
熱帯魚飼育のキホン 熱帯魚飼育のキホンは、熱帯魚飼育の基本をゼロから解説したシリーズ記事になります。水槽の準備から魚の導入、日常管理まで。熱帯魚を飼うということについて一緒に学んでいきましょう! |
フィルター掃除の基本はふたつのろ過を知ることから
フィルターの種類は本当に多く、手入れの仕方もその数だけ存在します。
ただ、多くのフィルターは物理ろ過と生物ろ過のハイブリッドです。(物理ろ過、生物ろ過それぞれに特化したフィルターも存在します。)
つまり、その二つのろ過の性質を理解すれば、難しそうに見えるフィルター掃除も、意外と簡単にできてしまうというわけです。
本日は、物理ろ過と生物ろ過のおさらいからはじめていきます。
その後に物理ろ過、生物ろ過それぞれのお手入れ方法を覚えて、フィルター掃除を円滑に進められるようになりましょう!
物理ろ過と生物ろ過の関係にも注目だ!
物理ろ過って何?
物理ろ過はその名の通り、物理的にゴミを濾し取るろ過のことです。
物理ろ過と生物ろ過の組み合わさったフィルターでは、通常、物理ろ過が水の流れに対して手前に位置しています。
つまり、物理ろ過は、生物ろ過部が汚れすぎないように守る役目も兼ねているのです。
生物ろ過って何?
生物ろ過は、熱帯魚飼育のキホン 第3回でも解説した「水質の浄化を助けてくれるバクテリア」に住みやすい環境を提供し、有害な物質を分解してもらうという、生物的な力を用いたろ過のことです。
物理ろ過で守っていてもある程度生物ろ過層に汚れがたまりますが、その全てが悪いわけではなく、一部はバクテリアの餌として消費(分解)される「必要なもの」であることも覚えておきましょう。
ろ過タイプ別、フィルターのお手入れ方法
それではここから、物理ろ過、生物ろ過それぞれのお手入れ方法を学んでいきましょう。
当然、フィルターやろ材のタイプによりお手入れ方法は異なりますので、ここでは様々な製品に「共通する考え方」をお話していきます。
物理ろ過のお手入れ
物理ろ過は、ゴミを濾し取る、ゴミを集めるというシンプルなろ過なので、水洗いによる洗浄や、ろ材を新品に交換するなどが基本的な手入れとなります。
要するに、溜まったゴミを除去する、うまく除去できない場合は新品に交換するという、シンプルな考え方ですね。
通常物理ろ過部には、バクテリアの定着を意識することはありませんので、まるごと交換しても問題がない場合が多いです。
物理ろ過部に詰まりが起きると、生物ろ過部に悪影響を与えてしまう可能性があるので、定期的なメンテナンスを心がけましょう。
生物ろ過のお手入れ
生物ろ過の手入れ方法は、物理ろ過とは大きく異なります。
まず生物ろ過部はバクテリアのすみかであり、ゴミを回収する場所ではないこと。
つまり強く洗浄してしまったり、新品に交換してしまうとバクテリアを多数失ってしまうということです。
だからこそ、生物ろ過部の手入れは、物理ろ過のように徹底的なものではなく、軽いすすぎ程度(目立つ汚れを落とす程度)にとどめる手法がよく使われています。
そして、すすぐ水も水道水ではなく水槽の水を利用することで、極力バクテリアにダメージを与えないよう配慮するのです。
その際、水槽内で作業してしまうと水質悪化の原因になりますので、水道の水をバケツに取り出しその中ですすぐなど、水槽とは別の場所で作業してください。
ただ、長期使用で生物ろ過用のろ材が劣化したり、目詰まりしてきてしまうと、ろ材内部に住み着いたバクテリアに酸素が行き渡らなくなり、ろ過能力を落としてしまいますので、定期的にろ材を新品に入れ替えるなどの対策も行なうとよいでしょう。
ろ材交換の際は全てではなく、全体の3分の1程度にとどめておくなどするとバクテリアの減少を抑えることができます。
また、フィルターを停止した状態、つまり流れのない状態で長時間放置してしまうとバクテリアにダメージを与えますので、生物ろ過部の手入れは速やかに行ないましょう。
一体型ろ材の場合の対処法
外掛けフィルターや投げ込み式フィルターは、部分的な交換が不可能な一体型のろ材を使用している場合があります。また、スポンジフィルターも、ろ材部分が一つになっていることが多いですね。
当然、このろ材をまるごと新品に交換してしまうと、フィルター内のバクテリアを全て破棄してしまうことになります。
水中にもバクテリアがいますので、まるごと交換で問題ない場合もありますが、状況によってはろ過力が不足してしまうことがあります。
まるごと交換が心配な場合は、古いろ材を残したまま、新しいろ材を水槽に数日~1週間ほど浮かべておく方法がおすすめです。
そうすることで、交換前に新しいろ材にバクテリアが住み着く期間を設けるのです。
水流がよくあたる場所に、新品のろ材を設置することも大切です。水質の浄化に用いられるバクテリアの多くは、酸素を好みますので、水のよどんだ場所では繁殖のペースが遅くなってしまうのです。
また、ろ材に耐久性がある場合は交換ではなく、水槽の水をバケツにとり、その中ですすいで戻すなど、通水性を確保して再使用するという手法もあります。
物理ろ過、生物ろ過が一体型になったろ材は、中に含まれている物質により使用期限なども変わりますので、解説をよく読み使用するようにしましょう。
以下に、ろ材が一つにまとまっているタイプの例をまとめましたので、合わせて参考にしてください。
一体型ろ材の例 |
スポンジフィルターのスポンジなど |
一つの素材のみで構成されたタイプは、生物ろ過、物理ろ過双方を兼ねている場合があります。時折バケツにとった水槽の水でもみ洗いするだけで、長期使用できる製品が多いのも特徴です。 |
外掛け式フィルターの複合ろ材など |
ウールマットや活性炭など様々なろ材を一つにまとめ、複合的な効果を狙った製品も多数あります。その中には、効果の続く期限が限られているろ材が含まれている場合がありますので、事前に確認しておきましょう。 |
フィルターの掃除の頻度を決めるのは難しい
フィルターの掃除の頻度は、フィルターのタイプ、飼育数、餌の量、ろ材の使用期間など……様々な要因により変化していきます。
例えば、同じフィルターを使用していたとしても、魚が多数泳いでいる水槽と、魚がごく少数しかいない水槽では、汚れ方に大きな差が出ますよね。
また、生物ろ過はバクテリアを育てるために、ある程度放置することも大切なので、掃除のし過ぎもよくありません。
だからこそ、フィルターは「最低○週間に一度は掃除しよう」と、断定できないのです。
フィルターは生き物だと考えて、水槽全体、そして魚の状態を見ながらしっかり考えていきましょう。
以下に、フィルターの状態を判断する基準の例をまとめておきましたので、参考にしてください。
水流、エアーが弱くなった |
フィルターから排出される水流やエアーが弱くなった場合は、物理的な汚れがたまりすぎている場合があります。 |
魚の餌食いが悪くなった |
魚が餌を残すようになったなどの異常が見られた場合は、フィルター内部の状態が悪くなっている危険性があります。 |
水の匂いがきつくなった |
熱帯魚の飼育水は無臭ではありませんが、そうきつい匂いがするものでもありません。飼育している最中、明らかに匂いが強くなった場合は、フィルターの状態悪化も疑ってみましょう。 |
ただし、できる限り上記のような状態にはならないよう、事前にメンテナンスをしておきたいところです。
そのためには、フィルターの掃除をした際に、それまで放置した期間と汚れ具合をしっかり観察しておくことも大切です。
そうすることで、手持ちのフィルターがどのような変化をしていくかを経験として学び、頻度を自ら決められるようになっていくのです。
長期間放置のリスク
稀にある事故で、長期間放置しすぎたフィルターから、内部に溜まった有害な物質が水槽に流入してしまうというケースがあります。
これは、通水性が極端に悪くなったフィルターを持ち上げたりした際に起きがちで、場合によっては深刻なダメージを魚に与えかねません。
例えば、長期間放置した投げ込み式フィルターを掃除しようとして、水中で持ち上げた場合などです。
防止策は、フィルター内部に物理的なゴミをためすぎないようにすること。フィルター内部の水がうまく循環できない状態を、作らないようにすることです。
ある程度のゴミはバクテリアの餌として必要なので、神経質になりすぎてもいけませんが、何事にも限度はあると覚えておきましょう。
もし長期間放置しすぎてしまい動かすのが怖いフィルターがあるなら、ろ過槽が水槽の外にあるタイプならホースなどの接続部を外してから作業する、水中にろ過槽があるタイプならビニール袋で囲って水槽から取り出すなど、汚れの流出防止をしっかりしてください。
またフィルターの種類によっては、あえて長期間メンテナンスをしないことで環境の安定を狙うものもあります。
そうしたタイプは、よく言われるフィルターの手入れとは異なる方法で手入れする場合がありますので、説明書などをよく読み把握した上で導入しましょう。
フィルターのチェックは全体的に
フィルターに問題がないように思えるのに、なぜか水槽の調子が悪い。
フィルターを掃除したばっかりなのに、なぜか水流が弱い。
そんな時は、フィルターのメイン部であるろ過槽ではなく吸排水のパイプが詰まっていたり、パーツの劣化や破損による機能低下も考えられます。
また、ろ材の入れすぎなどのセッティングのミスにより、フィルター本来の力が発揮できない場合もあります。
そのような問題を発見するためにも、フィルターのチェックはろ過槽だけでなく全体的に行なうようにしましょう。
もっと安全にフィルターを手入れするために
フィルターやろ材の種類によっては、驚くほど長期間放置しても、問題なく水質を維持してくれたりすることもあります。
ですが、そうした場合も「長期間の放置が適した条件」がたまたまそろっていただけであり、それが別の水槽で通用するかどうかはわかりません。
フィルターの手入れは手間もかかりますので、メンテナンスフリーを求める人は非常に多いかと思います。
ただ、一時的ならまだしも、永遠のメンテナンスフリーの実現は簡単なものではないということだけは、頭に入れておいてください。
安定させるために触りすぎず、でも触らなすぎず。フィルターとは「放置して育てる」「手入れして維持する」という二つの視点を持ち、つき合っていきましょう。
それでは本日もアクアライフブログをお読みいただき、ありがとうございました。
今回で、全7回に渡ってお届けいたしました「熱帯魚飼育のキホン」は終了となります。
今後もアクアライフブログでは、熱帯魚の飼育に役立つお話などをどんどん発信していきます! 最新記事はトップページよりチェックしていただけますので、どうぞよろしくお願いいたします。
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