みなさんこんにちは、はじめまして。

アクアライフWEB編集部です。

 

この記事は、熱帯魚をまだ一度も飼育したことがない方に向けて「飼育器具の準備から魚の導入、基本的な日常管理まで」を解説するシリーズ「熱帯魚飼育のキホン」の第1回となります。

第1回は、水槽や飼育器具の準備編。

適切な器具の選び方を覚え、熱帯魚飼育の第一歩を踏み出しましょう!

熱帯魚飼育のキホン

熱帯魚飼育のキホンは、熱帯魚飼育の基本をゼロから解説したシリーズ記事になります。水槽の準備から魚の導入、日常管理まで。熱帯魚を飼うということについて一緒に学んでいきましょう!

熱帯魚飼育のキホン記事一覧

アロワナとネオンテトラは同じ設備で飼育できない

シルバーアロワナ
全長1mを超える、迫力の大型魚・シルバーアロワナ Photo by T.Ishiwata
ネオンテトラ
美しい熱帯魚といえば多くの人が思い浮かべる、“小型美魚”ネオンテトラ Photo by N.Hashimoto

いきなりこんなことをお話ししてしまうのも申し訳ないのですが、熱帯魚は種類が多すぎて……「これさえあれば大丈夫!」と単純に解説することができません。

 

例えば1mのアロワナと、大人になっても数cmほどのネオンテトラでは必要な飼育設備が大きく異なるからです。

また同じようなサイズの魚でも、泳ぐ勢いが違ったり、好む水質が違ったり…………と、熱帯魚と一口に言っても、そこには多様な種が含まれています。

 

そもそも「熱帯魚」という言葉で、ひとくくりにされている魚の種類が多いのですよね。

流れの速い川に住む巨大魚も熱帯魚、水たまりに暮らす小さな魚も熱帯魚。湖に住んでいても池に住んでいても沼に住んでいても、熱帯の魚なら熱帯魚。

その全てを一つにまとめて理解しようということ自体が、不可能というものです。

 

では、何もわからない初心者さんは、何からはじめたらよいのでしょうか?

それは飼育したい魚の特徴を理解すること。

そして飼育設備それぞれに対する基礎的な知識をつけていくことです。

その二つの知識を組み合わせていけば、おのずと自分の飼いたい魚にあった飼育設備が見えてくるというわけです。

 

魚それぞれの特徴は、それこそ魚の種類の数だけありますから……こちらも簡単には説明しきれません。(いきなりそんな話ばかりですいません。)

というわけで、魚各種の特徴、そして飼育方法は今後アクアライフブログにて、各種個別で解説していく予定をたてています。

記事は完成しだい随時公開していきますので、アクアライフブログトップページをたまにチェックしていだだけると嬉しいです。

 

また毎月11日発売の月刊アクアライフでも、様々な魚の飼育について解説していますので、こちらもどうぞご覧ください。

月刊アクアライフの最新号、バックナンバー一覧は以下のリンクよりご覧いただけます。

 

さて前置きが長くなりましたが、本日の課題いってみましょう!

「一般的な熱帯魚の飼育設備について学ぶ(基礎編)」

熱帯魚の飼育イメージ
水槽やフィルターは、熱帯魚の飼育に不可欠なアイテム。必要な器具を揃えて、魚たちが遊ぶ楽しい水槽を作ろう! Photo by N.Hashimoto

水槽、フィルター、ヒーターなど。多くの熱帯魚飼育で用いられる設備についての基礎知識をつけ、飼育の第一歩を踏み出します。

目標は「選べる」初心者!

完璧とはいかなくともある程度選べるようになれば、失敗も減るし、より理想に近づけますから……気合い入れていきましょう!

アナカリスちゃんアナカリスちゃん

水槽や器具は後々の飼育に影響するからじっくり選ぼうね

水槽

60cm水槽
60cm水槽(ハイタイプ)の例。水槽には手のひらに乗るような小さいものから、大型魚用の巨大なものまで多様なサイズの製品がある Photo by N.Hashimoto

初心者さんが水槽を選ぶ際に、まず意識したいことは余裕をみること

一般的に水量が少ない水槽は、気温の変化に水温が影響されやすかったり、餌の食べ残しなどですぐに水質が悪化してしまうものです。そして、そうした不安定さにより魚たちは調子を崩していきます。

要するに水量に余裕がない水槽は、扱い難易度がちょっと高くなってしまうというわけですね。だからこそ初心者さんは水量に余裕をみるようにと、よく言われるわけです。

他にも水槽に求めたい余裕は、たくさんあります。

例えば、よく泳ぎ回る魚の飼育。

泳ぐ力の強い魚は驚いたときに壁面に激突し、怪我をしてしまうリスクが高いため「広さ」という余裕がほしくなります。

初心者の方は、小さい魚なら小さな水槽でも問題ないと考えてしまうかもしれません。でも実際は、同じ大きさの魚でもよく泳ぐ魚とあまり泳がない魚では、必要とする広さが異なってくるのです。

他にも、水深が苦手な魚に対しては「浅さ」という余裕をみてあげないといけないですし、体高のある魚には「深さ」という余裕がいるものです。

魚それぞれで必要な余裕は違うという考えをもとに、適切な水槽を考えてみましょう。

(参考)水槽ごとの水量のめやす
水槽サイズ(幅×高×奥行cm) 水量(満水時)
S水槽(31.5×18.5×24.5) 約14リットル
M水槽(35.8×22×26.2) 約20リットル
20キューブ(20×20×20) 約8リットル
30キューブ(30×30×30) 約27リットル
45cm規格水槽(45×24×30) 約32リットル
60cm規格水槽(60×36×30) 約64リットル
90cm規格水槽(90×45×45) 約182リットル
120cm規格水槽(120×45×45) 約243リットル

フィルター(ろ過器)

外掛け式フィルター
手軽に導入できる外掛け式のフィルター Photo by N.Hashimoto

フィルター(ろ過器)は水を循環させ、さらに浄化するための大切な水質維持装置です。

一般的にフィルターは物理ろ過、生物ろ過の二つの機能を持ち、製品により特化している分野が異なります。

物理ろ過
マットやスポンジで目に見えるゴミをとったりする、物理的なろ過
生物ろ過
水質浄化作用を持つバクテリアを繁殖させて有害な物質を分解してもらう、生物的なろ過

つまり、製品それぞれの特徴をよく見て、作りたい環境に適したフィルターを選んでいくことが大切なのですが……意外とそれが難しく、初心者さんはかなり悩んでしまうかと思います。

正直な話、このフィルター選びが熱帯魚の飼育設備選びの中で最も難しいことではないでしょうか?

 

というわけで、フィルターに関してはアクアライフブログにて別途特集させていただくことにしました!

記事は現在準備中ですので、今しばらくお待ちください。(記事ができましたら、以下にリンクを貼らせていただきます。)

ヒーター/サーモスタット

観賞魚用ヒーター
温度調節が可能なタイプの観賞魚用ヒーター Photo by N.Hashimoto

熱帯魚は熱帯魚というだけあり、ある程度の水温が必要な生き物です。

熱帯は年間を通して温暖なので、低い水温に対応できない魚がほとんどなのですね。

低水温は病気や消化障害など、様々な負担を魚にかけてしまいますので絶対に避けねばなりません。

そんな「低水温ダメージ」を魚に与えないために、水を温める装置がアクアリウム用の水中ヒーターというわけです。

 

ヒーターの選び方の基本は、まず水槽の水量を知ること。ヒーターは製品ごとでパワー(ワット数)が異なり、温めることができる水量の限界が決まっているものなんですね。

つまり、水量に対してパワー不足のヒーターをつけてしまうと、水は温めきれず、稼働時間が長くなり電気代も上がる……と、悪いことだらけになってしまうんです。

だからこそヒーターは、水槽の水量にあったものを。

水槽の水の量は「幅×奥行×高さ(cm)÷1000」で何リットル入るか計算できますので、ヒーターを買う前に必ず把握しておきましょう。

 

次に、温度制御をどうするか。

実はヒーターは温めるだけの器具で、温度を制御する機能がありません。そこにサーモスタットというものが付属することで、温度を制御してくれるのです。

 

サーモスタットのタイプは大まかに分けて二つ。

温度固定式のものと、温度を変えることができるものです。

温度固定式のものは基本的にヒーターとサーモスタットが一体化している内蔵型で、器具自体がすっきりしているという利点があります。水温の変更は不可能、製品自体に設定された温度まで水を温めてくれます。

温度を変えられるタイプのものは、ヒーターとサーモスタットがケーブルでつながったタイプか、ヒーター部分を取り替えることができるものがあります。こちらはダイヤルなどで、細かく温度を設定できるものがほとんどですね。

温度固定式、温度を変えられるタイプどちらにも利点はあるのですが、初心者さんにおすすめしたいのは……温度を変えられるタイプです!

なぜなら熱帯魚飼育でよく出会う病気である白点病の治療時には、水温を上げることが効果的だと言われているからです。魚の種類によっては、やや低めの水温を好んだりもありますし。

そうした様々な状況に対応ができるように、最初は温度が変えられるタイプが安心なのです。

安全なヒーター利用のために

ヒーターは正しく使わないと危険の多い器具なので、もう少し補足させていただきます。ヒーターの項目が当記事の中で一番解説が長くなってしまいましたが、本当に重要なことなのでどうぞおつき合いください。

 

それではヒーターを安全に使うための4つの約束を見てみましょう。

約束1 空気中での作動禁止

まず、その1。

絶対に空気中で作動させないこと。

アクアリウム用のヒーターは水中での稼働を前提としており、空気中で作動させてしまうと故障や火災の原因となりますので、水中にセットするまでは絶対にコンセントに繋がないでください。

 

また水中で稼働させたヒーターは、電源を抜いてもしばらくは水から出さないようにしましょう。

さらに製品によっては縦向き設置に対応していないなどの使用上の制約がありますので、説明書を必ず確認してください。

約束2 サーモスタットのないヒーターの稼働禁止

その2。

別途サーモスタットの取りつけが必要なヒーターの、単体での使用は絶対にやめてください。

サーモスタットがない状態で稼働させると電源が落ちることなく、水温が上がりすぎてしまうからです。

 

サーモスタットにも対応できるヒーターのワット数が決められていますので、必ず適合した商品同士を組み合わせましょう。

約束3 SPマークの確認

その3。

現在、ヒーターに関しては厳しく規格が決められており(日本ペット用品工業会 安全統一規格)、その規格の審査を通過した製品にはSPマークという印がつけられているので購入前に確認をしてください。

SPマーク
観賞魚用ヒーターのSPマーク

その4 ヒーターは消耗品であることを知る

その4。

ヒーターは寿命のある消耗品であり魚にとっては生命線のひとつなので、予備を一つ余分にもっておくのがおすすめです。

また、基本的にはサーモスタットのほうが寿命が長い器具ですので、長い目で見るとヒーターを交換できるタイプが経済的だったりします。

ファン、クーラーなど

熱帯魚は高水温に強いと思われがちですが、意外と高水温が苦手な種も多いものです。

27℃では元気でも30℃をこしてしまうと調子を崩す……というような熱帯魚は案外と多いということを、頭に入れておきましょう。初心者向けと言われる多くの種も、この中に含まれていますよ!

熱帯魚とは熱さが平気な魚ではなく、25℃や27℃などのそこそこ高めの水温が「適温」な生き物だと覚えておきましょう。

つまりその適温をこえてしまうと……調子を崩すというわけです。

 

夏場でも高水温にならずキープできるようなら問題ありませんが、もし水温が高くなりすぎてしまう場合は水槽用の冷却ファン、水槽用クーラーなど、水温を下げる器具の導入も検討していきましょう。

その他にも、水槽のある室温を上げないためにレースのカーテンで遮光する、エアコンをつけるなど、器具の利用以外の対策も覚えておくとよいでしょう。

水温計

観賞魚飼育用の水温計。飼育に適した温度(25℃)がわかりやすく表示されている Photo by N.Hashimoto

熱帯魚は温度管理が重要な生き物なので、水温計の設置は必須だといえます。

水槽に常設するための一本、そして水換え用にもう一本持っておくと使い勝手が良いかと思います。水換えで足す水もちゃんと、魚に適した温度にしなければなりませんからね。

また水温計は微妙な誤差がある場合がありますので、複数併用する際は一度は同じ水を計測し、どの程度の誤差があるか把握しておきましょう。

底床(砂利やソイルなど)

熱帯魚を飼育する際、砂利や砂、ソイルなどを敷くのはただ見た目のためだけではありません。

水草を植えやすくしたり、水質の浄化作用(底床が水質浄化をしてくれるバクテリアの住処になる)を狙ったり……底床には様々な役割があるのです。

注意したいことは、底床は何でもよいというわけではないということ。

砂利、砂、ソイル……そして製品ごとに環境にもたらす効果が違うので、飼育したい魚、作りたい環境に合わせて適切なものを選択する必要があるのです。

ここも、初心者さんが頭を悩ませるポイントの一つですね。

 

と……いうことで、各種底床については、別途記事にて「種類別」に解説いたしました。以下リンクからお読みいただけますので、どうぞご覧ください。

カルキ抜き

カルキ抜きは、水道水の塩素を無害化してくれる Photo by N.Hashimoto

水換えに利用する水道水は、魚にとって有害な成分も含まれています。特にカルキ(塩素)は、多くの生物にダメージを与えるので絶対に水槽に入れてはいけません。

そのために用いるものが、カルキ抜きと呼ばれる水質調整剤です。カルキ抜きには顆粒タイプと液状のものがありますが、初心者さんは適量を計測しやすい液状タイプのほうが扱いやすいかと思います。

また、カルキ抜きには、魚の粘膜を保護する成分が含まれている製品などもありますので、いろいろと調べて選んでみましょう。

水換え用品など

水換えに利用するバケツなどは、水槽と一緒に準備しておきましょう。

水槽から水を抜くためのホースには、水換えと同時に底床掃除ができる製品などもありますので、飼育環境に合わせて選ぶことができます。

 

また、魚をすくうためのネットやプラケースなども用意しておくと、魚の移動が必要な際に負担を減らすことができますのでおすすめです。

照明

アクアリウム用照明
近年は明るくコンパクトなLED照明が主流 Photo by N.Hashimoto

アクアリウム用の照明は、多数発売されています。

これらは単純に明るさが違うだけでなく光の波長なども異なりますので、作りたい環境に合わせて選んで……はい、照明もそういう「選ぶ」ものなのです。

「合わせて選べ」と何度も言われてちょっとうんざりしてしまうかもしれませんが、ここで真剣に照明を選んでおくことは、アクアリウムを理想に近づけるための重要なステップです。

照明は特に水草の育成に大きく影響するもので、パワー不足など合わないものを購入すると買い直すはめになりかねません。

だからこそ、選べるようになりたいところなんです!

 

とはいえ、最近の照明は優れた商品が多く、アクアリウムメーカーの製品で、水槽のサイズに合ったものを買ってしまえば、特別強い光を求めない水草などは普通に育成できることがほとんどですので、そう心配はいりません。

ただ、水槽用照明には、水草の育成に適したものだけでなく、魚の観賞用、サンゴの育成用など、いろいろなタイプがありますので、購入前に用途や適性をしっかりチェックし、目的に合わせて選んでいきましょう。

照明にこだわれば、水面や水底に映る波紋を楽しんだり、水草の種類ごとに適した育成環境をつくりあげることができますよ!

照明そのものの形状やサイズだけでなく、設置方法、光の広がり方などにも注目してみるとより面白いかと思います。

もっと熱帯魚を安全に飼うための用品

今まで紹介してきたアクアリウム用品はいわば土台、基礎の部分です。ここに様々な用品を追加することで、より安全に熱帯魚を飼育することができます。

 

例えば魚病薬。

魚の病気の治療でよく用いられるメチレンブルーや、オキソリン酸を含む基本的な薬を常備しておくだけで、いざという時に即対応できます。合わせて塩浴のための天然塩や、計量のためのカップやはかりを用意しておくとなおよいでしょう。

 

また飛び出しのリスクがある魚を飼育する場合は水槽にフタをしたり、フィルターを二つ取り付けることでろ過力を向上させたりと、アクアリウムの「補強」方法は本当に多数あります。

 

そして求める環境によっては、逆に合わない製品もあったりもします。

例えば水流が苦手な魚の水槽に、パワフルな水流を生み出すポンプをつけたら弱らせてしまいますからね……。

だからこそ私たち飼育者は、器具について常に学び模索して「選べるように」ならないといけないのです。

 

そしてこの選ぶという行為は、アクアリウムの楽しみの一つでもあります。

器具一つ一つに込められた思い、考え抜かれた使い勝手……自分の相棒となるべくアクアリウム用品を見つけた時は、本当に嬉しいものですよ!

 

それでは、熱帯魚飼育のキホンその1、水槽や飼育器具の準備編お読みいただきありがとうございました。

次回は「水槽のセッティング編」どうぞよろしくお願いいたします。

熱帯魚飼育のキホン飼育に
はじめての熱帯魚飼育
書籍:はじめての熱帯魚飼育アクアリウムという趣味の可能性は無限大。アマゾン河の光景を水槽の中に再現することも、お気に入りの魚たちを集めた水槽を作ることもできます。本書ではアクアリストとしての第一歩を踏み出し、自然の恵みである大切な魚たちを上手に飼育するためのポイントをまとめました。