みなさんこんにちは。
アクアライフWEB編集部です。
みなさんは「水づくり」という言葉をご存じでしょうか?
魚が暮らすために適した水を飼育者自らつくっていくというこの考え方は、熱帯魚を飼育する上でとても大切なものなのです。
熱帯魚飼育のキホン 第3回は(ちょっと難しいろ過バクテリアのお話なども交えつつ)水づくりのはじめ方から解説していきます!
熱帯魚飼育のキホン 熱帯魚飼育のキホンは、熱帯魚飼育の基本をゼロから解説したシリーズ記事になります。水槽の準備から魚の導入、日常管理まで。熱帯魚を飼うということについて一緒に学んでいきましょう! |
水づくりは一日にしてならず
前回もお話ししたとおり、準備したばかりの水は魚にとって適しているとはいえません。
なぜなら水道から出してすぐの水と、魚の好む水とでは大きな違いがあるからですね。
つまり、熱帯魚が安全に暮らすためには、水の状態が人間ではなく魚に合ったものである必要があるというわけです。
そんな、魚の住みやすい水を作ること。
それを、アクアリウムの世界では水づくりといいます。
水槽のセッティングの際にカルキ抜きを使用したことも、水づくりの一環ですね。
そして、セットしたフィルターを「魚がいないのに動かしたまま」にしているのも、水をつくるためだったりします。
本日お話しするのはその先、水づくりの肝と言える段階、水の浄化を助けてくれる心強い味方である「バクテリア」の増やし方を学んでいきます。
バクテリアと聞くとちょっとややこしく感じてしまうかもしれませんが…………ここをクリアできれば熱帯魚の迎え入れがかなり楽になるので、がんばってみましょう!
注意:この記事では解説のために魚(パイロットフィッシュ)の導入後までお話しています。魚の導入方法は「熱帯魚飼育のキホン」第4回、第5回で詳しくお話いたしますので、そちらも合わせて読み安全な迎え入れを実践してください。
水は魚にとって生活の場だから、ちゃんとつくらないといけないゼル!
STEP1 水槽セット直後、バクテリア発生を促す
セットしたばかりの水槽の水は、いうなればカルキを抜いただけの水道水です。
確かにカルキは無害化されてはいますが、残念ながら魚にとってはまだまだよい水とはいえません。
それはなぜかというと……この水では魚の排泄物や食べ残しなどから発生する、有害な物質を浄化できないからです。
その浄化を担当する存在が、いわゆるバクテリアとよばれているもの。
このバクテリアが現時点ではかなり少ないので、魚が安全に暮らせるレベルまで増やしてやる必要があるのです。
では、どうやってバクテリアを増やせばよいのでしょうか?
基本的な方法は「待つ」か、「有機物を適量水槽に導入し、それをバクテリアの餌として増殖を促す(+待つ)」というやり方になります。
以下にバクテリアを増やす具体的な方法をまとめてみましたので、まずは目を通してみてください。
バクテリアの増加を促す方法の例(水槽セット直後) |
ただ待つ |
水槽を立ち上げてから1週間から2週間ほど、水槽内で自然にバクテリアが増えるのを待つ方法です。待つことはとても重要ですので、以下、有機物の投入などを行なう場合も必ず並行して実践するようにしましょう。 |
餌を少量入れる |
市販の魚の餌は、魚に有害な物質を含まない有機物の一つです。それを少量水槽に入れることで、バクテリアの発生を促します。ただこの方法は餌が水中でカビてしまったり、腐敗により有害な物質を排出するリスクがありますので、こまめに取り除くなどの配慮が必要となります。 |
立ち上がった水槽から水やろ材をもらう |
お店や友達の水槽など、すでに立ち上がっている水槽から水やろ材を分けてもらうことで、有機物とバクテリアを水槽に導入します。この際、病気の発生している水槽などから水をもらわないように注意しましょう。 |
市販のバクテリア剤を入れる |
市販されているバクテリア剤を投入する方法です。バクテリア導入を目的として開発された製品ですので、水を腐敗させてしまう失敗などが少なく、扱いやすいのが特徴です。また、投入する量は製品ごとで異なりますので、解説をよく読み使用しましょう。 |
要するに、水が落ち着くのを待ちながら、必要に応じてバクテリアが増えるきっかけを外部から人為的に持ち込むわけです。
ただ、こうして持ち込んだとしても、魚のいない水槽は有機物が継続的に発生しづらいので、バクテリアを爆発的に増やすことはできません。
むしろ、過剰に有機物を投入してしまうと水を腐敗させて、悪い水にしてしまうことも。
だからこそ水槽立ち上げ直後は焦らず、バクテリアを少しだけ増やすイメージで作業をしてください。この段階は「発生を待つ」もしくは「発生を促す」程度でよいのです。
STEP2 水槽セット1~2週間後、パイロットフィッシュを導入する
水槽をセットしてから1~2週間ほどすると、何もしなくとも水中のバクテリアは徐々に増えていきます。有機物の投入を行なっていれば、もう少し多く増えているかもしれません。
先ほどもお話ししたとおり、魚のいない水槽ではバクテリアの餌となる魚の排泄物などが継続的に発生しないので、バクテリアの数はそう多くは増えません。
ではその数を増やすためには、何をしたらよいのでしょうか。
それは魚を「少数」導入すること。
魚を少数迎え入れることで有機物を発生させ、バクテリアの増加と安定を狙うのです。
こうした最初の魚を、アクアリウム用語でパイロットフィッシュと呼びます。
ただ、この時点での水はバクテリア以外の面でもまだ不安定であり、繊細な魚だと死なせてしまったり調子を崩してしまったりするので注意しましょう。
当然、パイロットフィッシュは水槽が安定しても飼育し続けるものなので、以下の「パイロットフィッシュとして飼育されることの多い魚の例」などを参考にしながら、考えてみてください。
パイロットフィッシュとしてよく導入される魚 |
カージナルテトラ |
小型のカラシンの仲間です。入手もしやすく、性質も強い小型魚です。性格は大人しいので、後々混泳相手にも困ることが少ないという利点もあります。安くまとめ売りされていることもありますが、パイロットフィッシュとして導入する場合は少数にとどめてください。 |
グッピー |
小型のメダカの仲間です。グッピーは水質変化に強いのでパイロットフィッシュにも向いています。ただ、中性~弱アルカリ性という水質を好むこと(多くの小型魚は弱酸性を好む)、また繁殖が容易でオスメス飼育しているとすぐ殖えてしまうことから、おすすめしにくい一面もあります。 |
アカヒレ |
小型のコイの仲間です。アカヒレは熱帯魚ではなく温帯魚ですが、熱帯魚と一緒に飼育でき非常に強健なため、熱帯魚水槽のパイロットフィッシュとしてよく選ばれます。ただ、成長すると縄張り意識が少し出てきますので、大人しすぎる魚との混泳は注意が必要です。 |
パイロットフィッシュの導入で注意したいことは、数だけではありません。
まずしっかり健康な個体を選ぶこと。病気などを持ち込んでしまっては、パイロットフィッシュの意味がありませんからね。
また「パイロットフィッシュとして有名な魚によく似た魚は全て、パイロットフィッシュに適している」と考えないこと。
例えばテトラ。
丈夫で有名なカージナルテトラに近い仲間には、水質にデリケートな種が多数います。当然そうした種は、パイロットフィッシュとしては適していないといえます。
また、強健種でも攻撃性があったりと、後々混泳で困ることもあります。
つまり、パイロットフィッシュは何でもよいわけではなく「不安定な水槽でも生きられるくらい丈夫で、後々の飼育に問題が出ない魚」を選択する必要があるわけです。
パイロットフィッシュを選ぶ際は、その魚の性質についてしっかり調べてから決定しましょう。
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STEP3 パイロットフィッシュ導入3~4週間後
パイロットフィッシュを導入したら、その後3~4週間は魚を追加せず飼育したいものです。
ある程度の期間パイロットフィッシュだけで飼育することで、環境を急変させないようにしていくわけです。
3~4週間経過後に新たに魚を追加する場合も、魚の大量追加は飼育数増加に対するバクテリアの増加が追いつかない場合がありますので、できるだけ避けるようにしましょう。
魚を増やすのは少しずつ。そう思っておけば、失敗してしまう確率はかなり低くなります。
水づくりはまだまだ続くものだと思って、しっかり観察しながら水槽とつき合っていきましょう。
ここをクリアしていったん水が安定すれば、魚たちの生き生きとした姿が見られますよ!
もっと安全に水を管理するために
水づくりのやり方には、多くの意見があり、方法もひとつではありません。
例えば、飼育したい魚の種類や数が限定されている場合、パイロットフィッシュを使わず、いきなりお目当ての魚を導入することもあります。(その場合は魚の性質を考慮し、慎重に導入してください。)
また、人それぞれ“待つ”期間が違ったりもします。
本日紹介させていただいた方法は、そんな様々なパターンのある水づくりの中の「初心者さんでも失敗しにくい方法のひとつ」として、覚えておいてください。
水づくりは本当に深く、そして大切なものですので、アクアリウムに慣れてきたら、自分のやり方を研究していくのもよいかと思います。
水づくりを開始したら、pH検査薬や試験紙を用いた水質検査などにチャレンジしてみるのもよいでしょう。
水質への理解を深めることで、水づくりをより具体的に考えられるようになっていくのです。
アクアリウムの世界では、水質試験紙のような「水の状態を知るための用品」がいろいろと発売されています。
熱帯魚の飼育は数字だけで全てを決めることはできませんが、数値は一つの目安にはなりますので、ぜひ挑戦してみてください。
単純に、今pHが高い(弱アルカリ性)のか、pHが低い(弱酸性)のかを知るだけでも、その後に学ぶ情報への理解が変わってくるはずですよ。
次回、熱帯魚飼育のキホン 第4回は「魚の持ち帰り編」です。
パイロットフィッシュを持ち帰る際にも重要なお話ですので、しっかりチェックしてくださいね!
それでは今回も、アクアライフブログをお読みいただきありがとうございました。
熱帯魚飼育のキホン飼育に |
書籍:はじめての熱帯魚飼育アクアリウムという趣味の可能性は無限大。アマゾン河の光景を水槽の中に再現することも、お気に入りの魚たちを集めた水槽を作ることもできます。本書ではアクアリストとしての第一歩を踏み出し、自然の恵みである大切な魚たちを上手に飼育するためのポイントをまとめました。 |