グッピー
グッピーは長い改良の歴史を持ち、さまざまな色彩やスタイルで飼育者の目を楽しませてくれる。写真は2019年3月号より Photo by N.Hashimoto

グッピーを飼ってみたい!

グッピーを繁殖させてみたい!

 

みなさんこんにちは、アクアライフWEB編集部です。

この記事では「グッピーの飼育繁殖」について解説していきます。

 

初めてグッピーを飼育する方も……。

なぜかうまく飼育できない方も……。

グッピーについて一から解説しましたので、どうぞご覧ください!

 

今回は、飼育繁殖方法だけでなく「グッピーの面白さ」などについても語らせていただきましたので……ちょーっと長い記事になっていますが、それもこれも、グッピーを楽しんでいただくために用意したものですので、じっくり読んでいただけると嬉しいです!

グッピーって、本当にすごい魚なんですよ!

それでは、よろしくお願いいたします!

グッピーってどんな魚?

「グッピーは初心者向けの熱帯魚」

そんな印象を抱いている方は、意外と多いかもしれません。

グッピーはとても飼育しやすい魚ですから、その考え方もあながち間違いではないのですが……グッピーは“それだけじゃない”魚なんですよ!

一歩踏み込むだけで、ぐっと面白くなる魚。

それがグッピーなのですね!

どんなふうに面白くなるのか――――それは、当記事でゆっくり解説させていただくとして――――まずは、グッピーの基本的な情報を見ていきましょう!

 

グッピーは、南米に暮らすメダカの仲間です。

多くの人に知られている、あの大きなヒレを持つ姿は実は「改良」された姿で、元は以下のような“もっとヒレが小さな”魚でした。

ワイルドグッピー
コロンビア産の“野生種”グッピー。野生種も産地などにより見た目が異なるから面白い Photo by MPJ

そして、のちほど「グッピーギャラリー」でも紹介するように、改良品種としてのグッピーのバリエーションはとても豊富です。

野生種のグッピーからはじまり、おどろくほどの品種が生み出されてきたわけですね。

しかも、改良グッピーは、未だに追求され続け、進化し続けているんですよ!

 

数ある改良グッピーの中には、マニアックで、簡単には入手できない品種もたくさん。それはそれは、ディープな世界となっています。

その一方で、「流通量が多く価格的にも入手しやすい品種」も多いため、初心者さんでも「自分好みのグッピーを探せる、選べる」という魅力があります。

ビギナーからマニアまで楽しめる魚。それがグッピーなのですね!

 

また、グッピーは、卵ではなく子どもを産むという不思議な生態も持ち合わせている、とても興味深い魚でもあります。

詳しくは、本文後半の繁殖の項目にて解説しますが、その性質のおかげで、繁殖自体のハードルが低く、初心者さんでも十分に世代をつないでいくことができるんですよ!

可愛い稚魚の姿や、成長していく過程で大人の特徴が現れていく様子は、何度見ても飽きません。

 

選んでよし、育ててよし、殖やしてよし。

そんな、様々な楽しみを“初心者さんでも体験できる”という素晴らしさが、グッピーにはあります。

 

入り口から素晴らしく輝いている、グッピーの世界……本日は、その楽しみ方を徹底的に紹介いたします!

グッピーさん(ドイツイエロータキシード)グッピーさん(ドイツイエロータキシード)

グッピーはアクアリウムでは有名な“メダカ”の仲間。でも日本のメダカとはいろんな違いがあるんです!

グッピーデータ

モザイクグッピー
写真の個体は「モザイク」と呼ばれる表現を持つ改良品種(雨峰海里氏作出、2018年誌上グッピーコンテスト 所沢熱帯魚賞受賞魚)Photo by N.Hashimoto
学名
Poecilia reticulata
英名
Guppy
和名
ニジメダカ
分布
南米
※一般的に流通するのは改良品種がほとんど
大きさ
約4cm
※メスはもう少し大きくなる
DATA
初心者向けの熱帯魚として古くから親しまれる卵胎生(稚魚の形で子どもを産む)メダカの仲間です。その子どもの育成も難しくないことなどから繁殖入門種としても知られています。またオスとメスの姿が大きく違う魚としても有名です。

種類いろいろ!グッピーギャラリー

飼育法を学ぶ前に、まず、様々なグッピーを見てみましょう。

 

色彩、模様、ヒレの形…………。

改良の歴史の長い魚であるグッピーは、驚くほど多彩な姿を私たちに見せてくれます。

ここから紹介する魚のどれもが「グッピー」だと考えると、本当にすごいことだと思いませんか?

ここはブログということで、写真での紹介になりますが、生で見るとまた違った発見もあると思いますので、アクアリウムショップに行った際は、ぜひ、いろんなグッピーたちを見てみてくださいね!

ドイツイエロータキシード

ドイツイエロータキシード
背ビレの付け根から下半身あたりにかけて、黒や濃紺色が差す「タキシード」表現を持つ、コンテストでも存在感が大きい品種。写真の個体は「ドイツイエロータキシードリボン」で、「リボン」の表現によりさらに各ヒレが優雅に伸びている(三澤 健氏作出、2018年誌上グッピーコンテスト 金賞受賞魚)Photo by N.Hashimoto

ブルーグラス

ブルーグラス
尾ビレ全体に模様が入る「グラス」表現を持つ。さわやかな青と、体の側面に入る三角形の模様が印象的だ(内田雄巳氏作出、2018年誌上グッピーコンテスト ジェックス賞受賞魚)Photo by N.Hashimoto

RRE.A フルレッド

RRE.A フルレッド
RRE.Aというのは「リアルレッドアイ・アルビノ」の略で、眼が真紅になる。写真は全身に美しい赤をまとった個体。(山辺久美子氏作出、2018年誌上グッピーコンテスト 銀賞受賞魚)Photo by N.Hashimoto

 

外国産? 国産? 初めて飼うならどちらがいい?

グッピーについて調べていると「外国産グッピー」「国産グッピー」という言葉に出会うことがあります。

 

これは見てそのまま、海外で殖やされたグッピーか、日本国内で殖やされたグッピーかということを示しています。

 

このうち、国産グッピーは「初心者向け」としてよく紹介されていたりするのですが、それには大きな理由があるのです。

「日本生まれ日本育ちだから、日本の水に慣れている」

こうした理由から、海外で育ったグッピーよりも扱いやすいと言われているのですね。また国産グッピーは、外国産に比べ、病気の持ち込みが少ないとも言われています。

 

この話は確かに一理あるのですが、必ずしも「外国産は飼いづらい」というわけではありません。

状態のよい外国産グッピーが輸入されたりもしますし、輸入後に日本の水に慣らされてから販売される場合もあるからです。

 

確かに、全体的に見れば、国産が扱いやすいというのは間違いないのですが、外国産の中にも、扱いやすいグッピーはいるということは覚えておきましょう。

 

外国産グッピーを購入する際に、不安な場合は、ショップで「どの程度の期間ストックされている個体なのか」を、尋ねてみるのもよいでしょう。

当然、長く管理されていればいるほど、日本の水にも慣れていることになります。

 

少し専門的な話になりますが、国産グッピーは、掛け合わせなどの情報(遺伝子の構成)がしっかり管理されているものが多いので、将来的に「改良」にチャレンジしたい方におすすめしやすいというポイントもあります。

国産、外国産。どちらにも長所があるということですね。

国産/外国産それぞれの長所
国産グッピーの長所
日本の水に慣れている、病気が少ない、改良しやすい など
外国産グッピーの長所
サイズが大きい、安価、よりカラフルな色彩をもつものが多い  など

 

グッピーの選び方

グッピーを選ぶときは、状態のよい個体を入手するようにしましょう。

あたりまえのように聞こえるかもしれませんが、これがとても重要で、そしてちょっと知識のいる作業だったりします。

 

まず第一にグッピーは、購入する個体だけでなく、水槽全体を見るようにします。水槽内に病気や不調の個体がいないかを、確認するのです。

 

魚の病気というものは、目に見える症状がなくとも、感染している可能性があるものです。

特に、グッピーのような同じ水槽にたくさんいるような魚は、一匹でも感染していると同種間で感染する確率が高いので、全体的な注意が必要なのですね。

特に、以下の点などに注意しながら、“不健康な魚のいない水槽”を選ぶとよいでしょう。

  • 泳ぎ方がおかしくないか
  • ヒレが破れたり溶けたりしていないか
  • ヒレを不自然に閉じていないか
  • 水底でじっとしていないか
  • 体を水底などにこすりつけていないか
  • 白い点など“模様ではない点”がついていないか
  • 体やエラが充血していないか

グッピーを選ぶ際に気にしておきたいのは、その状態だけではありません。

品種豊富なグッピーは「自分が入手するグッピーは、どんなグッピーなのか」ということを知れば、さらに楽しむことができるからです。

 

例えば、様々な見た目のグッピーがひとつの水槽に泳いでいる場合。

これは「ミックスグッピー」と呼ばれたりする、品種ごとに分けられていないグッピーです。

こうした水槽では、いろいろな品種の血が混ざり合いますので、様々な見た目の子どもが生まれる可能性があるという面白さがあります。

 

次に、品種ごとに分けられている場合。

ブルーグラス、キングコブラ、ドイツイエロータキシード……などなど。

品種ごとに販売されているグッピーを購入する場合は、その品種名をしっかり覚えておくとよいでしょう。

入手したグッピーについて調べる際や、改良に挑戦したくなったときに、品種名の情報はとても重要だからです。

シンガーブルーブルーテール
例えばこの「シンガーブルーブルーテール」は、「シンガーブルー」という体の大部分が青く染まる表現を持っている。グッピーの品種名はどんな遺伝子を持っているかを表しているので、把握しておくとよい(鈴木秀和氏作出、2018年誌上グッピーコンテスト 銅賞受賞魚)Photo by N.Hashimoto

 

若い個体だと、まだ完全にはその品種本来の特徴が出ていない場合もありますので、品種ごとの特徴を調べてみるのもよいかもしれません。

また、同じ品種でも、見た目に差が出ることがあるのが、グッピーの面白いところでもあり、難しいところでもあります。

 

そんな感じで、こだわりがいのあるグッピー選び。

じっくりと向き合い、納得できるグッピーを探してみましょう。

いろいろと知識をつけて選ぶのも楽しいですが、自分の直感を信じて選ぶのもよいものですよ!

グッピーを飼育してみよう

グッピーは熱帯魚の飼育の基礎を押さえていれば、それなりに「飼育できる」魚です。

そういう理由からも、初心者向けと言われているわけですね。

熱帯魚飼育の基礎については、当ブログにて「熱帯魚飼育のキホンシリーズ」として解説しておりますので、あまりよく知らないという方は、どうぞ参考にしてください。

 

ただ、贅沢を言えばグッピーは熱帯魚飼育の基礎どおりに飼うだけでなく、少し「グッピーに寄せた飼育」をしてほしい魚だったりします。

そうすることで、グッピーの飼育はさらに楽しくなり、より確実なものになるからです。

 

というわけでここから、グッピーに配慮した飼育のコツを覚えていきましょう!

グッピーの水槽は小さくてもいいの?

グッピーは小型の魚ということもあり、小さな水槽でも飼育できます。

1ペアから2ペア程度であれば、30cmくらいのかなり小さな水槽でも飼育できてしまうでしょう。

 

ただ、初心者さんは、できるだけ水量にゆとりのある水槽を選んでほしいのです。

なぜならグッピーは、簡単に殖えるから。

 

グッピーはただ飼育しているだけで殖えてしまうこともあるので、小さな水槽だと、すぐに手狭になってしまう可能性があるのですね。

そして、飼育密度が高くなればなるほど、水は汚れやすくなり管理が難しくなってしまいます。

だからこそ、グッピーの水槽は「将来を考えて」ちょっと大きくしておくと、なにかと安心なのです。

30リットル~60リットルくらい入る水槽を用いると、だいぶ水質管理がしやすくなるかと思います。

グッピー水槽
ベテラン愛好家宅のグッピー飼育水槽の例。シンプルな構成で、小型水槽ながらしっかり管理されている。コツをつかむまではより大きな水槽を用いると安心かもしれない。写真は2014年8月号『ハローアクアリスト』より Photo by N.Hashimoto

ただ、大きな水槽は稚魚の発見などが難しくなったりもしますので、採用する繁殖方法(繁殖方法については後述)によっては、そこまで大きくない水槽のほうが扱いやすいかもしれません。

 

水槽のサイズごとの水量や、選び方については以下記事にまとめてありますので、当記事と合わせてご覧ください。

グッピーは低い水温が苦手なの?

グッピーは暖かい地方に住む魚なので、低い水温は得意ではありません。

低水温は不調や病気の原因になり、最悪の場合死亡してしまいますので、観賞魚用のヒーターを用いるなどして、水温を25℃前後に保ってあげましょう。

ヒーターに関しては、以下記事にて特集しておりますので、使ったことのない方はどうぞ参考にしてください。

グッピーの好きな水質の作り方

グッピーは、中性付近の新しい水を好む魚です。

水換えは、週に1度、全体の3分の1程度を交換することを目安に、さぼらずしっかり続けていきましょう。

 

また、水質が酸性に傾きすぎると、グッピーは調子を崩しやすくなります…………というお話をすると「酸性になっているかどうかなんて、どうやったらわかるの?」と疑問に感じる方も多いかと思います。

実は、水槽の「酸性、中性、アルカリ性」といった水質を知るのはそう難しくありません。

観賞魚用の「pH検査紙」などを用いると、簡単に把握できますので、ぜひ試してみてください。

水質試験紙
水質検査紙(試験紙)。pHなどの項目も確認することができる

水質の酸性化は、水換えやフィルター掃除である程度防止することができます。ただ、それだけで追いつかない場合は、アルカリ性の物質である「サンゴ砂」などを適量投入するなどして、対策するとよいでしょう。

この時用いるサンゴ砂などは、余計な物質を水槽に持ち込まないよう、必ず観賞魚用のものを利用してください。

サンゴ砂
観賞魚飼育用のサンゴ砂は、アクアショップなどで手に入る Photo by N.Hashimoto

外国産のグッピーは、中性ではなく弱アルカリ性の水に慣れている場合もありますので、注意が必要です。

弱アルカリ性の水を作る場合は、水槽内のサンゴ砂の量を多くするなどで対応できますので覚えておきましょう。そうした調整をする際にも、pH検査ができるとよいのですね。

 

グッピーは、水質変化に対してある程度の耐性を持っている魚として知られています。その分、ざっくりとした水質管理でも飼育できてしまったりするのですが、どんな水質でも大丈夫な魚というわけではないので、ちゃんと気にしてあげましょう。

水質の悪化は、病気の蔓延の原因になることもあります。

 

また、水槽内の水質が急激に変化すると、ダメージとなる可能性もあります。

外国産グッピーを「弱アルカリ性から中性に慣らす」場合などは、日数をかけて徐々にサンゴ砂を減らすなど、できるだけ緩やかに変化していくようにしてあげましょう。

砂利? 砂? グッピー向けの底床は?

先ほどお話したとおり、グッピーは中性付近の水を好みますので、水質を酸性化させてしまうような底床は避けておくほうが無難です(底床……水槽の底に敷く砂利や砂、ソイルなど)。

以下記事などを参考にし、水質に影響の少ない底床を選ぶとよいでしょう。

淡水域でとれた砂利などは、水質に影響の少ないものが多く、また管理もしやすいのでおすすめです。

グッピーの餌選び、あげ方のコツは?

グッピーは、餌の選り好みが少なく、餌選びの選択肢がとても多い魚です。

専用の餌も多数販売されていますので、そうした中から選んでみてもよいでしょう。

また大きな個体は、冷凍アカムシも好んで食べてくれますので、与えてみるのもよいかもしれません。

 

逆に、まだ若い小さな個体は、大人と同じサイズの餌だと食べられない可能性がありますので、フレークフードを砕いたり、元から細かいものを用いるとよいでしょう。

 

繁殖させやすい魚であるグッピーは、同じ水槽内に様々なサイズの個体が泳ぐこともあります。

それら全てが餌をとれるように考えることが、グッピーの餌やりのコツと言えるでしょう。

また餌やりは明るいうちに行ないます。

回数は朝夕2回など、食べ残しがでないように様子を見ながら与えていきましょう。

グッピーは混泳水槽で飼育できる?

グッピーは性質の大人しい魚なので、グッピーを食べたり、グッピーに危害を加えたりするような魚が相手でなければ、一緒に飼育することができます。

ただ、改良グッピーの大きなヒレは、スマトラなどのヒレをかじるくせのある魚や、ベタなどの大きなヒレを威嚇に使うような魚のターゲットになりやすいので、そうした魚との混泳は避けたほうが安心です。

 

先ほど解説したとおり、グッピーは、「中性~弱アルカリ性」という水質で飼育することが多い魚です。

実はこれは、小型魚全体から見ると、ちょっと特殊な立ち位置であることを意識しておきましょう。

一般的に流通する小型魚は「弱酸性~中性」を好む種類が多いからです(もちろん、全てではないですが)。

グッピーを中性付近で管理している場合は、混泳相手の選択肢が増え、弱アルカリ性の場合は少し減ると覚えておきましょう。

 

また、混泳魚を増やしすぎると、グッピーが殖えた時にすぐに過密になってしまいますので、ご注意ください。

グッピーを繁殖させてみよう

観賞魚の世界では、繁殖は「飼育の次のステップ」であることが多いですが、グッピーは最初から“繁殖する前提”で飼育したほうがよい魚です。

それくらい、繁殖させやすく、また、よく殖える魚なのですね。

見方を変えれば「繁殖してしまう」と、言えなくもないくらいです。

 

繁殖はグッピーの魅力でもあり、また注意すべき点でもある。

彼らのことをより詳しく知るためにも、繁殖についてしっかりと覚えましょう!

オスメスの見分け方

グッピーはオスメスの姿がはっきりと違う「見分けやすい」魚です。

大人のグッピーであれば、そうそう間違うことはないでしょう。

基本的にメスのほうが大きくなり、ヒレも小さく色彩も地味になります。

 

成長したメスは、お腹に卵が透けて見えるようになります。

対して、オスは尻ビレが変化したゴノポディウムという生殖器を持っていますので、ぜひ観察してみてください。

オスメスの見分け方
オスにはゴノポディウムと呼ばれる交接器がある。メスは体が一回り大きく、一般的にオスより地味な色彩をしているが、メスも鮮やかな色を持つ品種もいる Photo by N.Hashimoto

 

グッピーは派手なオスに目が行きがちですが、メスはメスで渋い魅力を持っています。

しっかり育った「お母さん」は、小型魚ながらかなりの迫力です。

一部の品種では、メスでもヒレに色がついたりもしますので、「メスはどれも同じ」なんて思ってしまうと、ちょっともったいないですよ!

グッピーの繁殖はなぜ「簡単」と言われるのか

さて、今度は、なぜグッピーの繁殖が「簡単」と言われているかということに注目してみましょう。

 

最初にお話したとおり、グッピーは卵ではなく子どもを産む魚です。

厳密に言うとお腹の中で卵を孵し、子どもを産んでいるのですね。

とても不思議な生態なので、初めて見たときはすごく感動すると思いますよ! この特徴のことを「卵胎生」と呼ぶことも、合わせて覚えておきましょう。

 

そして、卵胎生ゆえに卵をグッピー任せにできるという点が、第一の「繁殖させやすいポイント」でもあります。

産まれた卵を飼い主が管理するのはけっこう大変なものです。他の魚に食べられてしまったり、人工ふ化させるにはコツが必要だったりと、なかなかデリケートなものですからね。

 

そして第二の「繁殖させやすいポイント」は、子どもの大きさにあります。

魚の繁殖では、稚魚を育て上げるために、手間のかかる極小サイズの生き餌を用意しなければならないことは、珍しくありません。

しかし、グッピーの稚魚は、最初からある程度の大きさの餌を食べられるサイズで生まれてくるので、餌で苦労することが少ないのです。

つまり、育てやすいということですね。

 

そして第三のポイントは、グッピーの繁殖力の高さにあります。

オスメス一緒に飼育していれば自然に殖えてしまうことも珍しくないくらい、グッピーは殖えやすい魚です。

特別な条件を揃えなくとも、ただ健康に飼育していれば産んでくれますので、ハードルがかなり低いのです。

 

このようなポイントから、グッピーは「初心者でも殖やしやすい」と言われているのですね。

そしてその繁殖形態がとても面白い!

オスがメスを追いかける繁殖行動や、メスのお腹の大きさの変化など、いろいろ見どころがあるんですよ。

3種の繁殖スタイル

それではそろそろ、具体的なグッピーの繁殖方法を覚えていきましょう!

 

グッピーはとても繁殖させやすい魚だからこそ、様々な殖やし方があります。

本日はその中から、初心者さんが取り入れやすい3つのスタイルを紹介いたしますので、どうぞ参考にしてください。

 

もちろん、そのまま真似るだけでなく、アレンジしてもらっても構いません。

自分ならではの繁殖法を追求できるのも、グッピーの楽しいところですからね!

 

解説を読んでいただく前に、ひとつ知っておいてほしいアイテムがあります。

隔離箱(産卵箱)

産卵箱(隔離箱)
隔離箱はグッピーの繁殖においてとても便利なアイテムだ Photo by N.Hashimoto

これはその名の通り、魚を隔離したり、中で産卵(グッピーの場合は産仔)させたりするのに用いるもので、グッピー飼育では定番となっているアイテムです。

本日紹介する3つの繁殖スタイルのうち、2つは隔離箱を使用します。

 

隔離箱は様々なメーカーから出ていますので、いろいろ見て、使いやすそうなものを選んでみましょう。隔離箱の中で、「親と生まれた子どもをセパレート」する機能をもつものなどもありますよ。

また、水流をつけられるタイプの隔離箱を使用する際は、水流を強くしすぎないように注意してください。グッピーは元々強い水流を好む魚ではなく、また稚魚はさらに水流に弱いからです。

 

それでは、3つの繁殖スタイルどうぞご覧ください! 

グッピーの繁殖スタイル① 隔離せずに育成

水槽の中で産まれ、自然に殖えていく流れに任せるスタイルです。

飼育者の仕事は、餌やりや水換えなどの世話を続けるだけです。

 

この方法は手間がかからないというメリットがあるのですが、問題もあります。

子どもの生存率が下がってしまう可能性が高いのですね。なぜなら大人のグッピーは子どもを食べてしまうことがあるからです。

 

その生存率を上げるための隠れ家として用いるのが、水草です。

ウォータースプライト
ウォータースプライトはグッピー飼育の定番になっている水草の一つ。稚魚のよい隠れ家にもなる Photo by T.Ishiwata

以下にグッピーの繁殖水槽で使いやすい水草の例をまとめておきますので、参考にしてください。

グッピーの繁殖に利用できる水草の例
ウォータースプライト
グッピー飼育の定番の水草ですが、最近は水中に適応する前の「水上葉」での販売が多くなりました。水中化には時間がかかりますので、すぐに使いたい場合は水中葉を入手すると良いでしょう。
マツモ
浮かべておくだけで育つ初心者向け定番の水草です。屋外でも管理でき、よく増えるので水草の入門種としても人気が高いです。
ナヤス
増殖させやすい水草で、環境さえ合えば切れ端からもどんどん殖えていきます。ただとても千切れやすいので、扱いには注意が必要です。
ニテラ
細かな茂みを作ることで知られている水草です。非常に細い水草なので、トリミング(水草を切って整えること)の後は、千切れた水草がフィルターの吸込口などに詰まらないようしっかり回収してください。
ウィローモス
流木などに糸でまきつけることで活着(流木などに水草がくっつく事)させることができます。稚魚の餌となる微生物の発生場としても優秀です。

水草の育成については、以下連載にて解説しておりますので、どうぞ参考にしてください。

グッピーの繁殖スタイル② 子どもの隔離

水槽を観察していて、子どもの姿を見かけたら、子どものみを隔離箱に移動するという方法です。

そうすることで大人に食べられることを防ぎ、稚魚に効率よく餌を与えることができるというメリットがあります。

 

この方法の注意点は、隔離箱が狭いせいで汚れが溜まりやすいこと。スリットで通水しているからとサボらず、底の糞などをスポイトでこまめに取り出すなどのメンテナンスをしてください。

 

稚魚がある程度大きくなり、親に食べられないサイズになったら水槽に戻します。

小さな個体は追いかけられた時に弱いので、水草を浮かべるなどして逃げ場を用意してあげましょう。

グッピーの繁殖スタイル③ メス親の隔離

メス親の隔離
子どもを産みそうなメスをあらかじめ隔離箱に入れておく。産みおとされた仔魚を自然にメス親と隔離してくれるタイプの隔離箱もある Photo by N.Hashimoto

子どもを産む日が近くなってきたメスのお腹は大きくなり、角ばって見えます。

そうしたメスを見つけたら、隔離箱の中へ。

その中で子どもを産ませ、産み終えたら「メスだけ水槽に戻す」ことで子どもの生存率を高めます。

親を「産む前」から隔離するこの方法には、子どもを発見しやすいというメリットもあります。

 

ただこの方法は、長時間メスを隔離するとストレスになるなどのリスクが存在します。

グッピーは一度にまとめて子どもを産むのではなく、ある程度時間をかけて数を産みますので、水槽に戻すタイミングが決めづらいかもしれません。

また、隔離箱の中で親が子どもを食べてしまうこともありますので、注意が必要です。

 

この方法に慣れていないうちは、メスの隔離は短めに。最大でも3日ほどに抑え、期間内に子どもをとれなかったら別の方法にきりかえるという意識を持っていると、失敗しにくいかと思います。

似たような方法で、メスを隔離箱ではなく別の水槽に移動させ、そこで産ませるという方法もあります。

隔離せず育成
メス親と稚魚たちを一緒に飼育している水槽(この例では、オス親は分けて飼育している)。水草は稚魚の隠れ場所になる Photo by N.Hashimoto

その場合は水質差によるショックを出さないよう、水合わせをしっかりしたり、元いた水槽から水ごと移したりと、いろいろと気を使ってあげましょう。

稚魚育成のコツは餌にあり!

稚魚の育成においてとても重要となるのは餌です。

成長期にしっかりと餌を与えることは、健康な親に育てるためには必須と言えるでしょう。

 

先ほどお話したとおり、グッピーは最初からある程度の大きさの餌を食べられるサイズで生まれてきます。

そのおかげで、生まれて早々に親と同じ餌をすり潰したものなどを与えることができます。

 

他にも、稚魚用の人工飼料やブラインシュリンプの幼生など、口に入るものであればわりとなんでもよく食べてくれますので、よい結果の出る餌を模索してみましょう。

稚魚用フードは栄養価も高く、そのまま与えられる大きさなので、初心者さんは一つ持っておくと育成がかなり楽になるのではないでしょうか。

ブラインシュリンプ
ブラインシュリンプの幼生。乾燥した卵を購入し、飼育者がふ化させて稚魚に与える。少し手間はかかるものの、稚魚から成魚まで好んで食べる餌だ

餌の与え方は親よりもこまめに。日に3回、4回など、複数回与えることが望ましいと言われています。

餌をあげるタイミングは基本的に、親同様明るい時間。朝、昼、夕など、時間をあけて与えていくのがおすすめです。

餌を与えた際は、必ず食べ終わるのを確認し、食べ残しなどが水槽内で腐敗しないようにしてください。

 

グッピーの稚魚の良いところは、日に2回ほどの餌でもそれなりに育ってくれることです。

成長に差は出てしまいますが、生活リズムの都合で3回、4回と与えられない人でも育てることができるというのは、嬉しいポイントですね。

また稚魚が小さいうちの補助的な餌として、水草などに付着する微生物の存在があります。ただこれはあくまで補助。よく食べる魚ですので、必ず餌は与えるようにしましょう。

水換えは稚魚の吸い出し注意!

グッピーは知らぬ間に、水槽内で殖えていることもある魚です。

そして稚魚は親ほど泳ぐ力がなく、また、小さいため見落しもしやすくなります。

 

だからこそグッピー水槽の水換えをする際は、稚魚を水と一緒に吸い出さないよう注意せねばなりません。

ホースの吸込口にスポンジをつけたり、吸い出した水を一度バケツで受けて稚魚が混ざっていないかチェックしたりと、しっかり確認しましょう。

グッピーは殖え過ぎ注意!

本日何度もお話したとおり、簡単に「殖えすぎてしまう」魚であるグッピー。

だからこそ、手に負えなくなり捨てられたグッピーが、暖かい地方や温泉地で野生化し問題となっている事をみなさんはご存知でしょうか?

 

そうした問題を起こさないためには、飼育者一人一人がグッピーを捨てず、繁殖を計画的に行なう必要があります。

 

一般的には「子どもの隔離をやめれば、親に食べられ生存率が下がるので殖えすぎない」と言われていますが、環境によってはそれでも殖えすぎてしまうほどの生命力を持っているのがグッピーです。

また「一度オスの精子を体内に貯蔵したメスは、メス単体で飼育しても何度か子どもを産む」という特徴もありますので、グッピーの繁殖力を甘く見るのはやめましょう。

 

グッピーは小さな魚ですから、野生化しても他の魚に害を与えないように見えるかもしれませんが、本来グッピーが生存しないエリアで定着してしまうと、他の魚の餌や生息場所を奪ってしまったりと大きな問題になるほどの力があります。

強い繁殖力が、日本に元々いる生き物たちへの脅威になってしまわないよう、充分気をつけて楽しみましょう。

グッピーをもっと楽しむ

グッピーは本当に奥深い魚で、追求していくと終わりがありません。

知識をつけ経験を積んでいけば、異なる品種同士を掛け合わせて、新しいグッピーを生み出すという挑戦もできます。

また、お店や愛好家の間で「グッピーコンテスト」も開催されていますので、情報交換や交流を楽しむこともできます。

月刊アクアライフでも例年「誌上グッピーコンテスト」を開催しており、全国の愛好家が腕によりをかけて育て上げたグッピーたちが、その美しさを競っています。2020年11月号でもコンテストの結果発表が行なわれる予定ですので、楽しみにしていてくださいね!

誌上グッピーコンテストの応募は例年9月に受け付けている

そういう意味ではグッピーは、ひとつの文化と言えるのではないでしょうか。

また、そうやって「追求する道」がある反面、気軽に楽しみやすいというのもグッピーのよさだと思います。

 

寿命の長い魚ではありませんが、繁殖して命をつないでいけば、本当に長い時間をともにすごすことができる魚です。

きっとあなたの「小さな友だち」になってくれると思いますよ。

 

グッピーについては、以下の月刊アクアライフ 2019年03月号でも特集しております。

アクアライフ2019年3月号「グッピー、始まる!」
グッピー特集内容
アクアライフ2019年・グッピー2.0
・グピコレ
・グッピーの基本的なヒレの形と体色、模様
・東南アジアのグッピー事情
・Guppy Breeder’s Room
・数字でわかるグッピー飼育の基本
・はじめてのグッピー飼育を成功させるために必要なこと
・一歩先を行くためのグッピー飼育のヒント集
・動物のお医者さんが診るグッピーのビョーキ
・グッピーに与えてみたい餌カタログ

愛好家さんへのインタビューや、親と稚魚それぞれの餌カタログ、様々なコラムなどなど……グッピー情報満載です!

飼育繁殖方法について、当記事とは違った情報なども掲載されていますので、もっとグッピーを知りたい方の強い味方になるかと思います。

月刊アクアライフには、「新しいグッピー飼育の教科書」という連載(2020年10月号時点で第39回)もありますので、こちらも合わせてご覧ください。

 

それでは、本日もアクアライフブログをお読みいただき、ありがとうございました。

もっと知りたい!グッピー参考資料

雑誌:月刊アクアライフ 2020年11月号
アクアライフ2020年11月号
第8回誌上グッピーコンテストの結果発表記事を掲載!今回もたくさんの愛好家にご参加いただき、手塩にかけて育てられたグッピーたちが集まりました!
雑誌:月刊アクアライフ 2019年03月号
アクアライフのグッピー特集号です。
単行本:グッピー完全飼育ガイド
グッピーの飼育、繁殖、カタログなど。グッピーの魅力を一冊にまとめた単行本です。

初心者から始める生き物飼育記事一覧