みなさんこんにちは。

アクアライフWEB編集部です。

 

本日のお題は上部式フィルター。

メリット、デメリット……さらには歴史などなど、上部式フィルターについていろいろと雑談しましたのでどうぞご覧ください!

上部式フィルターって、いいですよね!

山口 正吾山口 正吾

セット水槽といえばコレだったなぁ。

板近 代板近 代

舞った汚れが水槽に入らないようマット交換時は電源をオフ、再稼働時は最初の出水をビニール袋で受けるなどしています。

アクアの雑談

アクアの雑談は、その名の通りアクアリウムに関する「雑談」をお届けする連載です。お題は回ごとにいろいろ! 雑談いたしますのは、株式会社エムピージェー出版部長で月刊アクアライフ前編集長の山口 正吾(やまぐち しょうご)と、アクアライフWEB編集部に社外からの協力スタッフとして参加している板近 代(いたちか しろ)。雑談ならではのお話を、どうぞお楽しみください。

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上部式フィルターについて喋りたい!

板近:今日のお題は上部式フィルターなんてどうでしょう。

山口:おお、いいですね。上部式フィルターといえばスタンダードではあるし…………うーん、スタンダードで“ある”というより“あった”かな?

上部式フィルター
上部式フィルター Photo by N.Hashimoto

板近:今の時代、フィルターは多種多様ですもんね。

山口:ええ。でもまあ、板近さんがお題に選んだということは、いろいろとお伝えしたいことがあるのだと思いますが。

板近:そうですね! 少し前に一台追加購入して、改めて「上部式っていいなぁ」と思っていたところでもありまして。

山口:なるほど(笑)。

上部式フィルターの歴史。実は日本のオリジナル!?

板近:さきほど山口さんの言っていた通り、今は昔ほど上部式フィルターを使う人はいないのですかね。

山口:今は、上部式はなかなかファーストチョイスになりにくいかもしれませんね。90年代中頃までは60cmの水槽セットといえば、普通は上部式であったと記憶していますが。

板近:90年代はまだ子どもでしたが、水槽セットと言えば上部式がスタンダードであったイメージが残っていますね。プラ枠の水槽で。

山口:そうそう、プラ枠の水槽。その後、大手のメーカーや商社が外掛け式を押した時期が続いて、その頃から様相が変わりましたね。

板近:枠なしのオールガラス水槽が多く見られるようになった頃には、上部式を見る機会が確実に減っていましたね。

山口:ええ。

板近:他になにか上部式の歴史のような話はありますか?

山口:2000年前後かな、月刊アクアライフでフィルターの記事を連続でお伝えしたことがあって。その時ちょっと調べた話なのですが……。

板近:はい。

山口:上部式は日本オリジナルなんだと、そういう話を取材でお聞きしました。

板近:そうなんですね!

山口:まあ、世界中のアクアリウムの歴史を調べられるわけではないですし、原理的にはシンプルなものだから、誰かがどこかで同じようなフィルターを使っていた可能性はありますが。

板近:初期はどのような感じであったのでしょう。

山口:なんでも、水槽のサイドに台を置いて、その上に大きなポリバケツを置いて。中にろ材を入れて水を循環させていたようです。ろ過の種類でいうと開放落下型になるのかな。

板近:上部式フィルターのご先祖様はバケツだったのですね。

山口:当時の記事では、たしかそのようにお伝えしましたね。海水魚屋さんが始めたらしいんだけれど。あと、私が入社する前なんかは、上部式フィルターの自作の記事なんかもありましたよ。

板近:材料はなにを使うんですか?

山口:その時紹介されていたろ過槽は園芸用のプランターでしたね。ただまあ自作はリスクもあるし、水槽との一体感みたいなものは得られないから、私は基本的にメーカー品を推していますけれど。

板近:あの一体感いいですよね。

山口:水槽と同じ幅のろ過槽が載っている。あれは見ていて気持ちがいいものがあります。

上部式フィルター
デルへジィのコレクション水槽。上部式は魚中心の飼育に向いている Photo by T.Ishiwata

上部式フィルターのメリット&デメリット

板近:次は、上部式フィルターのメリット、デメリットなんてどうでしょう。

山口:おお、フィルターの記事あるあるですね。

板近:やはり定番な話題も大事かなと。

山口:では、まずはデメリットからいきますか。お互いに挙げていって、探っていきましょう。

上部式フィルターのデメリット

板近:私が挙げさせていただきたいデメリットは、上部式は、合う水槽とそうでない水槽があるということですね。これはもちろん他のフィルターにも言えることではありますが。

山口:たしかにそれは、他のフィルターと比べて生じやすいかもしれない。同じメーカーのものは、ピッタリと載られるようにできているけれど、他メーカーだと合わないこともあって、工夫が必要であったり。

板近:枠なしのオールガラス水槽だと不安定で危なかったり。

山口:そもそも上部式は製品ごとに使える水槽の幅が限定されていますよね。ある程度幅を調整できるものもあるけれど、60cm水槽用、90cm水槽用、120cm水槽用と規格水槽の幅に合わせた製品が主流であるし。

板近:外部式のようにホースをうまいこと使って調整などもできないですもんね。

山口:板近さんは、そんな上部式がうまくはまらず困ったエピソードなどありますか?

板近:困ったというより悩んだというエピソードなのですが、アクリル水槽に載せる上部式を選ぶのにはちょっと時間がかかりましたね。

山口:アクリル水槽は真ん中にバーがあるから。

板近:ええ。さらに枠(リブ)も太いので上部式の形状、主に底の形によってはいい感じに載らない可能性があるかもなぁと思って。いろいろ調べてみたけど「これで確実!」というところまでなかなか至れず。

山口:どうやって解決したんですか?

板近:メーカーさんに問い合わせて細かい寸法を教えてもらったのが一台、お店で相談のってもらったのが一台ですね。

山口:プロに聞くのが早くて確実なことってありますよね。

板近:ばっちり使えるやつを提示してもらって、とても助かりましたよ。

上部式フィルター
アクリル水槽に適合する製品を探す際は水槽の幅だけでなく、センターバー、リブ、アクリル板の厚みなどを測っておくとスムーズだ Photo by S.Itachika

山口:上部式は形状的に融通が効かないから、「事前に、使いたい水槽にちゃんと載るかどうかをチェック」というのは重要なポイントですね。まあ、箱ですから。

板近:ですね。

山口:私が思うデメリットは、たとえば60cm規格水槽だと、水槽の上部の半分くらいを覆ってしまうから、ライトの制限がありますよね。水槽の後ろが暗くなりがちで。

板近:全体の光量を強くしたり、まんべんなく明るくしたい場合には邪魔になる場合もあるでしょうね。

山口:ええ。あとは曝気(ばっき。水を空気にさらす)するから、炭酸ガスが逃げやすいんですよね。

板近:それもよく聞く話ですね。

山口:ただ、炭酸ガスの添加効率が下がるだけで、意外とうまく水草を育てられることもあるし、そういう水槽を見たこともある。

板近:効率が下がるだけで、無効というわけではないということですね。

山口:はい。先の光の件にしても、全くダメというわけでもないし。ただ、水草育成により向いたフィルターがあるから、無理をして上部式を使うことはないという話ですよね。適材適所というか。

板近:上部式で水草を育てたいときは、「水草の求める炭酸ガスの量や光量など」に注目しながら、育てられそうな水草をセレクトするといいかもですね。

山口:かもしれませんね。アヌビアスやミクロソルムあたりは、上部式でもけっこういけると思いますよ。

上部式フィルターのメリット

板近:次はメリットですね。

山口:そうですね。

板近:上部式のメリットといえば、シンプルでパワフルなところがありますよね。と……これはちょっとまとめすぎですね。もう少し細かくいかないと(笑)。

山口:(笑)

板近:山口さん何かありますか。

山口:さっき「曝気されるから炭酸ガスが抜ける」と話したけれど、これはメリットでもありますよね。

板近:そうですね!

山口:魚にもろ過にも曝気は大事だから。

板近:空気をよく巻き込むというのは、飼育する上で心強いポイントになりうることが多いですよね。私も、そういう意味で上部式は(多くの種類の)魚が飼いやすいフィルターだと思っています。

山口:私の知り合いのブリーダーさんは上部式を愛用していて。「上部式は水の持ちがいいんだ」と言われていましたね。

板近:ブリーダーさんが言うと説得力ありますね。

山口:私も説得力を感じましたね。プロにとってメンテナンス性は重要だとも思いますし。1週間に一度か、1ヶ月に一度か。メンテナンスの周期が伸びればそれだけで仕事が減りますから。

板近:ええ。

山口:メンテナンスといえば、メンテナンス性の高さ。これも大きなメリットですよね。

板近:フタをぱかっとあけるだけで、ろ過槽の中が見れるし。しかもポンプを動かしたまま。

フタを開ければマットの汚れがよく見える。この例ではマットの下にセラミック製のリングろ材を敷き詰めてある Photo by S.Itachika

山口:汚れたら一番上のマットを交換したらいいし。

板近:ある程度までは、マット交換で対応できますもんね。

山口:そうなんです。その下のメインのろ材を洗うときにはちょっと億劫ですが、あれくらいの量のろ材が入るフィルターとして考えれば、そんなに大掛かりなことにもならないし。

板近:メンテナンスにも構造のシンプルさが効いてますよね。

山口:私は外部式の方が、メンテナンスは億劫かな。パイプ類を再接続した時に、水漏れがないか確認しなければならないし。上部式は水を揚げて落とすだけだから、比較すれば再設置後の確認も楽ちんではある。

板近:こうして見てみると、上部式のメリットはシンプルでわかりやすいですね。

山口:ええ。

板近:あと、上部式のメリットとして、安い製品が多いというのもある気がしますね。

山口:投げ込み式の類と比べれば高いけれど、揚水ポンプを使ったフィルターとしては安い。

板近:たくさんろ材が入って安い。これはなかなかありがたいですよね。

山口:そうですね。しかし、改めて振り返ると上部式フィルターはいいフィルターですね。

板近:いいですよねぇ。

山口:もちろん、他のフィルターにもそれぞれ良いところはあるんだけど、それを言い出すと今日のお題から逸れてしまうから(笑)。

板近:(笑)。こんな感じでまた、他のフィルターについても話をしたいですね。

山口:そうですね。外掛け式とか外部式とかも、今日は比較対象として名前を出しただけだから、メリットの説明ができていないし。

板近:どちらもいいフィルターなんですよね。

山口:そうそう。本当にフィルターは適材適所で。好みもあるし、いろいろ考えながら選んでいくと面白いですよ。

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