みなさんこんにちは。
アクアライフWEB編集部です。
今回のお題は、雑誌タイトルの付け方。
アクアプランツやシュリンプクラブなど、複数の雑誌名を考案した編集者山口 正吾(やまぐち しょうご)がいろいろと語ります。
専門誌ならではのタイトル作り。初公開の話もたくさんあるのでどうぞご覧ください!
けっこう楽しい仕事です。
アクアリストだけでなく、文を書く方などが読んでも面白い回だと思います。
アクアの雑談 アクアの雑談は、その名の通りアクアリウムに関する「雑談」をお届けする連載です。お題は回ごとにいろいろ! 雑談いたしますのは、株式会社エムピージェー出版部長で月刊アクアライフ前編集長の山口 正吾(やまぐち しょうご)と、アクアライフWEB編集部に社外からの協力スタッフとして参加している板近 代(いたちか しろ)。雑談ならではのお話を、どうぞお楽しみください。 |
今日のお題は……タイトルの付け方!?
山口:久しぶりのアクアの雑談ですが、何かお題はありますか?
板近:実は、山口さんにお聞きしたいことがあるんです。
山口:なんでしょう。
板近:エムピージェー(月刊アクアライフなどを発行している出版社)の雑誌のタイトルについてです。
山口:タイトルですか。板近さんらしい着眼点だとは思いますが、それはまた、どこから来た発想でしょう。
板近:私は、エムピージェー発のブログや雑誌で、記事のタイトルを担当させてもらったことがあるじゃないですか。
山口:ええ。特にこのブログでは、多くの記事タイトルを決めてもらっていますね。
板近:そういう経験や、猫と鯰舎(板近所属の創作ユニット)で小説のタイトルを考えたりしていく中で「エムピージェーの雑誌のタイトルってすごくいい響きだなぁ」など、思う場面がありまして。
山口:ありがとうございます。
板近:それで、そうした雑誌タイトルはどうやって生み出されているのかなぁと気になりまして。実際に、いくつかの雑誌タイトルを考案してきた山口さんにお聞きできたらなと。
山口:たしかに考案はしてきましたが…………うーん……そのお題だと、なんだか私の自分語りになってしまいそうで心配です。
板近:むしろ今日は、その自分語りを聞かせていただきたいのですが!
山口:……では、やってみましょうか。他であまり語ったことがない話という点では、アクアの雑談らしいお題であるとは思いますし、板近さんからも熱を感じますし(笑)。
板近:ありがとうございます(笑)。
編集者と振り返る、雑誌タイトル作り
山口:今回は、実際に私が考案に携わったタイトルについてでよいですかね。
板近:お願いします!
山口:まずは「雑誌タイトル」を整理しましょうか。ここでいうタイトルは雑誌の名前のことで、特集ほか記事のタイトルとは異なるということ。
板近:はい。
山口:ではいきましょうか。まずは「月刊アクアライフ」。当社の看板雑誌ですが、これは私が入社する前から決まっていたタイトルなので多くを語れないんです。
板近:承知いたしました。今日は、山口さんのタイトルづくりをお聞きできたら嬉しいです。
山口:わかりました。私が入社してから、いくつか雑誌のタイトルをつけたので、その辺りのお話をさせていただきますか。
板近:よろしくお願いいたします。
山口:それと、これは「あくまで私個人の考えですよ」と前置きした上で、話を進めさせていただきますね。御存知の通り世の中にはいろいろな雑誌があり、人それぞれタイトルについて考え方の違いなどもあると思いますので。
板近:今日はエクスキューズ多めですね。
山口:本当だ。なんでかな(笑)。
タイトル考案秘話 アクアプランツ編
山口:まずはアクアプランツからお話しますね。
板近:水草専門誌ですね。
山口:ええ。年刊誌、つまりは一年に一冊出る雑誌です。
板近:7月末に最新号が出ていますね。
山口:アクアプランツはもう20年ほど前の創刊であり、正直なところ誰がどう決めたかぼんやりしているのですが……。そもそもは営業会議で「新しい増刊を」という話が出たことからはじまったんですね。
板近:ええ。
山口:私の記憶であると、増刊立ち上げの話が進む中で私が「こういうタイトルはどう?」と例のカメラマンに伝えて「いいんじゃない」みたいな流れで決まったんだと思います。
板近:例のカメラマンさんは、以前アクアの雑談でも話していただいたアクアプランツの中心となっている方ですね。
山口:そうですね。まあ、タイトル決めのやり取りは今話したような感じであったのですが……アクアプランツという言葉自体がどこからきたか、何をヒントにしているか、どんなメッセージがあるかなど、あまり覚えていないんだよなぁ。
板近:私は、アクアプランツというタイトルを見て「アクア」はアクアライフからの流れであるのかなと思っていました。
山口:それは根っこにあると思う。他にもアクアリストにとってはアクアという言葉には馴染みがあるだろうし、アクアプランツと書けば水草を趣味にしている人にはどんな雑誌か連想しやすいだろうから。
板近:アクアプランツという名前は「アクアライフと同じ出版社が出している水草の雑誌」と連想しやすい名前ですよね。
山口:そうそう。あとは、名付けのヒントになるような洋書があった気がするんですが……それがどうにも思い出せない。すみません、出だしからぼんやりとして。
板近:いえいえ。
山口:なんにせよ、アクアプランツはアクアリウムの中のさらに水草という絞った分野を取り扱う雑誌なので、わかりづらいタイトルは良くないと思ってはいました。かと言って説明的すぎるのも野暮かなと。そこらへんは塩梅と言うかセンスというか。
板近:エムピージェーから出ている雑誌のタイトルはシンプルでありながら、内容が想像しやすいですよね。スッと伝わるというか。
山口:狭い分野の雑誌が多いので、できるだけわかりやすい方が良いというのは根っこにありますね。あとは発音がしやすい、ということも気にするかな。
板近:たしかに発音しやすいです。
山口:発音のしやすさの他には、愛好家が口にしやすい、つまり気恥ずかしい思いをしなくて済むような名前にすることを意識しています。
板近:今の話、もう少し掘り下げていただいてよいでしょうか。
山口:年齢とか性別によらず、違和感なく口にできるような雑誌タイトルがいい、ということです。例えば、高齢者、あるいは若者を中心に使われる言葉、ネットスラングなどはタイトルに使いにくい。
板近:アクアもプランツも広く使われる言葉ですね。
山口:ええ。実は、アクアプランツはそこまで深く考え込んだタイトルではないんですね。「これでいい」とすんなり、私的にも社内的にも収まった。そういう記憶があります。
板近:アクアプランツ、本当にしっくりくる響きです。
補足① 小説の長文タイトルから考える、雑誌タイトル
山口:ちょっとだけ脱線しますが、とても長い小説タイトルってあるじゃないですか。タイトルで内容を説明するような。
板近:ええ。
山口:今では長いタイトルはだいぶ普及していますが、出た当初は極端な例であったと思うんです。尖っている、変わっているとも言えるのかな。それで、そういうタイトルの中には、ターゲットとなる読者を限定するからこそ力を発揮するものもあるじゃないですか。
板近:タイトルで「こういう作品ですよ!」と示すことで、その内容を読みたい人にダイレクトに届けようという思いを感じるものがありますよね。
山口:一つの手法ですよね。ただ、雑誌の場合は長い短いに関わらず、ターゲットをあまりにも限定してしまうタイトルは良くないと思うことがあるんですね。老若男女、全てが口にしやすいというか、発音だけでなく気持ち的に違和感なく口にしやすいという意味でも。
板近:先程のアクアプランツの話でも、そうおっしゃっていましたね。
山口:もちろん、尖ったタイトルをつけることを否定しているわけではありませんが、媒体のスタイルにより、適したタイトルの形のようなものがあるのかなと。そういう話ですね。
タイトル考案秘話 シュリンプクラブ編
山口:次は、シュリンプクラブというタイトルについてお話していきますね。
板近:お願いします!
山口:これは2011年創刊か。これも、アクアプランツと同じ年刊誌で10年くらい続いていました。最近はお休みしていますけれど。
板近:最新号は2020年の号ですね。
山口:ええ。これも営業会議がきっかけだったのかな。新しい増刊を作ろうということで、何かないかという話になったんですね。
板近:アクアプランツもそうした流れでしたね。
山口:そうそう。それで「シュリンプがいいよ」と私から提案したんです。
板近:提案された理由はなんでしょう。
山口:その会議の1年くらい前に月刊アクアライフでシュリンプの特集をやって、私が担当したんですね。
板近:はい。
山口:そのときシュリンプに大変な熱気を感じたので。これは新たな雑誌を作れそうだと思い提案したという流れでした。……10年くらい前の話だとわりと記憶がありますね(笑)。
板近:(笑)。アクアプランツ考案よりかは近い話になりますもんね。
山口:ですね。それからまあ、会議で新しいシュリンプの雑誌について話すことが多くて。タイトルも私から提案しました。
板近:シュリンプクラブもすんなり思いついた感じですか。
山口:いえ、シュリンプクラブはいろいろと考えました。まず、シュリンプという名詞は入れたかった。愛好家の間では鑑賞エビをシュリンプと呼ぶことが定着していたし、あえてそこを外すこともない。レッドビーシュリンプやシャドーシュリンプなどという名称が普通だったから。
板近:「クラブ」はどういう意図でしょう。
山口:クラブというのは、この雑誌は、愛好家により近い誌面づくりをしたいと思っていたこともあって。
板近:愛好家さんに。
山口:シュリンプの愛好家は、殖やした個体をネットオークションで販売したり、自分なりのシュリンプを作って発表したりと、その趣味の参加者というイメージがあったんです。シュリンプという趣味を一緒に作り上げているというか。
板近:ああ、それでクラブ!
山口:はい。そういう愛好家さんたちの力を借りて、発信を受け止めて発表したりして、皆で作り上げる雑誌ということをイメージしていました。
板近:雑誌の作り方への気持ちが込められたタイトルでもあったんですね。
山口:ちょっと観念的な話ではありますが、そういう話を会議でして「いいね」という感触を得てこのタイトルになりました。
板近:ふと思ったのですが、表紙などに掲載するタイトルロゴの表記はどう決まるのでしょう。というのは、英語でSHRIMP CLUBとも書けるし、カタカナでシュリンプクラブとも書けるわけじゃないですか。
山口:いい質問ですね。
板近:ありがとうございます。
山口:実際会議でも、そこは活発な論議がありました。クラブを倶楽部と漢字にしよう、などいろいろと。
板近:私も執筆活動の中でクラブか倶楽部どちらにするか、選んだ経験がありますね。
山口:カタカナと漢字でも、雰囲気が変わりますもんね。
板近:シュリンプクラブは英語を選択されていますよね。カタカナを小さく添えて。
山口:はい。英語だけでは読めない人もいるだろうし、そういうスタイルにしました。ダサい、かっこいいというシンプルな感覚も大切ですが、入り口を狭めないことも大切であり。わかりやすさを切り捨てるのは避けたかった。
板近:英語タイトルに小さなカタカナを添えるのは、一つのスタイルとして確立されていますよね。
補足② 有名雑誌のタイトルから考える、趣味の雑誌のタイトル
山口:ものすごい大きな雑誌って、名前が浸透して固有の名詞になるじゃないですか。ジャンプ、ノンノ、文春など、字面だけ見たらどんな雑誌かわからないけれど、雑誌の存在感が強いから多くの人がその雑誌の内容をイメージしやすい。
板近:それはありますね。
山口:でも、私どもがやっているのは趣味の雑誌ですから、比較すれば対象となる読者は限定的であるし、であれば関連性の高い言葉を盛り込みたいんですよね。
板近:アクア、プランツ、シュリンプ、など。
山口:趣味の雑誌は先に挙げた有名雑誌のような存在になるのは大変であるし、読者と雑誌が出会う機会もそう多くないと考えれば、どんな内容であるか、雑誌タイトルで理解してもらうのは大切であると思うんですね。
板近:なるほどです。
山口:これは私の考えではありますが、いろいろな雑誌を見ても、そうした傾向は強いのではないですかね。
板近:アクアリストではない人に「エビの飼育の雑誌でシュリンプクラブってのがあって~」と話したとしたら、言われた人は雑誌名を覚えやすい気がしますね。
山口:そうそう。そういうことです。
板近:これが「シュリンプ」みたいな、エビを連想できる言葉が含まれないタイトルであったら、すぐに忘れてしまうかもしれない。
山口:たとえば、ダンゴムシのための月刊誌があったとして、それが漢詩由来のタイトルだったらわかりづらいですよね。月刊「春望」とか(笑)。
板近:たしかに(笑)。対して「月刊ダンゴムシ○○」だったらとても覚えやすいですね。本屋さんで並んでいるときにも、ロゴか背表紙が見えたら「ダンゴムシの雑誌だ!」とすぐわかりそうですし。
山口:そういう考えもあってなるべく直接的な言葉は入れたいという話ですね。
タイトル考案秘話 アロワナライブ編
板近:まだまだ山口さんが考案した雑誌名はありますよね。
山口:ええ。次はアロワナライブはどうでしょう。
板近:いいですね!
山口:これもまあ、前話したように営業会議案件だったな。
板近:このタイトルはどんなところを考えたりしたのでしょう。
山口:龍やドラゴンなどアロワナを連想させる言葉はいくつかあるじゃないですか。そういう言葉を使うのはどうだろうと悩んだ記憶がありますね。
板近:龍魚と呼んだりしますもんね。
山口:ですね。ただ趣味の雑誌だし、最終的にわかりやすいものにしようと思ったんです。
板近:それでシンプルに「アロワナ」という言葉を選択されたのですね。
山口:はい。ただ、大型魚の力強さも出したかった。それで、アクアライフの姉妹誌であるからアロワナライフという案も考えていたのだけれど、この雑誌はライブにしようと。
板近:ライブはライフから来てたんですね!
山口:濁音が入ることでちょっと力強くなるじゃないですか。
板近:そういう理由であったのですね。実は「ライフとライブは字面が似てるなぁ」と思ったことがあるので、謎が解けたみたいで嬉しいです。
山口:(笑)。あとこれは後付ですが、ライブという言葉はアロワナにとても合っているとも思いました。
板近:ライブ感的な。
山口:そうそう。アロワナライブは一年に一回の雑誌だけれど、その時その時のアロワナの世界の今を切り取ってお伝えしていると。そういうメッセージも込められた。
板近:なるほどですね。
山口:実際アロワナは取材をしていると動きが激しくて。アロワナライブで取り扱うアジアアロワナは養殖されている魚ということもあり「今はあの養魚場のアロワナがいいぞ」などという話も多い。
板近:養魚場の取材記事なども掲載されていますもんね。
山口:マーケットが熱いですから。これがワイルドの魚であると、またちょっと違う雰囲気になりますよね。
板近:たしかにそうかもしれません。
山口:対してアジアアロワナは人が作る魚であり、業者さんはそのプロモーションに熱心でアロワナを中心にした世界がある。
板近:そうしたところも「ライブ」にこめられているのですね。そういえば私もアロワナライブには、ライブ感を感じたことがありますね。
山口:どういうところでしょう。
板近:とても個人的な話で恐縮ですが、私は仕事で「アロワナライブ」とタイピングすることがあるじゃないですか。たとえば、アクアの雑談アロワナライブ回。
山口:アクアの雑談は、対談を文字起こししてますもんね。
板近:あの回はアロワナライブって50回くらい打ったのかな? 今、検索機能で数えたらそのくらいでしたが。
山口:(笑)。そのタイピングがライブ感につながるんですか?
板近:ええ! アロワナライブってタイピングしていて気持ちが良い言葉なんですよ。歯切れがよくて「アロワナライブ!」って一気に打てる感じ。
山口:なるほど。たしかにタイピングすると気持ちいいというか、打ちやすいかもしれないですね。
板近:この記事を読んでくれている方もアロワナライブと打ってみてほしいですね。言葉って口に出したり読んだりするだけでなく、打つことで感じられることもあると思うんです。
山口:それはありますね。そうそう、アロワナライブはアジアアロワナの本場であるインドネシアやマレーシアでも手に取ってもらいたいという気持ちもあったから、タイトル表記は英語を選んだんですよ。
板近:なるほどです。
山口:取材班がうちの雑誌を現地で説明するときに、まあ、中身の日本語はわからないにせよ、雑誌タイトルで内容を理解してもらえればいいなと思いまして。
板近:タイトルが読めればアロワナ専門誌であることが表紙で伝わりますもんね。アロワナは専門誌以外、つまりは熱帯魚全般を扱う雑誌の表紙になることもある魚ですし。
山口:ええ。結果的に海外の取材も多くなっていますし、英語のタイトルにしたことはプラスに働いているんじゃないですかね。
タイトル考案秘話 ギガス編
板近:アクアプランツ、シュリンプクラブ、アロワナライブときましたが、お次はなんでしょう。
山口:ギガスはどうでしょう。
板近:ギガスはちょっと今まで挙げたタイトルとは雰囲気が違いますよね。
山口:はい。これは相当悩んだ記憶があります。悩みすぎて販売の人に怒られました。
板近:そんなにですか!
山口:「もう出版まで1ヶ月しかないのに雑誌タイトルが決まっていないからプロモーションができない」と。
板近:山口さんはどちらかいうと決断が早いイメージがありますが。このブログに関する案でも、私が悩んで山口さんに相談するとすぐ決まりますし(笑)。
山口:(笑)。たしかに、私はなんでもぱっぱと片付ける方であるとは思います。
板近:ですよね。
山口:社内のフローを乱したくないので、タイトル決定などの締め切りもなるべく守るようにしているのですが、この時はダメでしたね……。
板近:それほどまでに悩んだ理由はなんでしょう。
山口:今まではアクアプランツ、シュリンプクラブ、アロワナライブと直接的な、その趣味と関連性の高い言葉を盛り込んでいましたが、大型魚全般が対象となると、なかなか適した言葉が思い浮かばなかったんです。
板近:横文字でなんかあったかな……みたいになりますね。
山口:そうそう。以前、他社さんの同じコンセプトの雑誌でモンスターフィッシュというタイトルの雑誌があったんです。これは良いタイトルだけれど私の感性とは違うし、同じような雑誌タイトルをつけるわけにもいかない。
板近:ええ。
山口:それで、相当悩んでラテン語から持ってくることを思いついたんです。
板近:学名の回でもラテン語の辞書をめくるのが好きとおっしゃっていましたね。
山口:まさに学名から探してました。学名には入社以来接してきましたし。
板近:それでギガスと。
山口:巨人という意味でいくつかの巨大魚の学名にこの言葉が使われている。有名なところではピラルクとメコンオオナマズの種名に使われていますね。それで「あ、これだ」と。これで行こうと思いました。
板近:あ!
山口:どうしました?
板近:そういえばギガスの創刊号(2ページ)に、そのこと記載されていましたね。あのメッセージは山口さんが書かれたのですか。
山口:そうですよ。私が書きました。
板近:今はっきり思い出しました。なんかこの話知ってる気がするなぁ……と思ってたんですよね。
山口:(笑)。そんな感じで決めたギガスですが、先に挙げた3つの雑誌のような直接的な言葉がないから不安もありました。しかし、もう時間がないし「後は野となれ山となれ」というか(笑)。
板近:私はギガスの創刊号は発売当時(2018年12月)に購入したんですが、「いつもとタイトルの雰囲気が違うなぁ」と感じた記憶がありますね。
山口:もう少し詳しくお聞かせいただけますか。
板近:いつもと違う感じが、逆にインパクトあって。直接的な言葉はないけれど、怪魚、大型魚専門という印象を一撃で残すというか、そんな強さを感じました。
山口:ありがとうございます。ギガスは3つの文字に2つも濁音が入っていて、かなり力強い。発音的にも雑誌のイメージにピッタリだと私も思ってましたね。
板近:濁点の効果ってありますよね
山口:ええ。ギガスのタイトルは、社内のスタッフからの評判も良くて。「いいタイトルだよね」と言われて、それも嬉しかったですね。
板近:ギガスもまた口に出しやすいですよね。
山口:社内でスタッフが「ギガス担当の〇〇です」などと電話口で話しているその様子を見ても違和感がなく。それで「ああ、良かったのかもな」と。これは、大型魚が好きな方が違和感なく口にできる雑誌名ではないかなと。
板近:ギガスは本棚に並べていても、背表紙が目立つんですよね。これはきっと、ギガスという言葉に威力というか、迫力があるからですよね。
山口:ゴジラも力強いけれどギガスも力強い。
板近:ああ! ゴジラ! そういう強さですねギガスは。また、学名由来というのもいいですよね。専門誌らしい。
山口:そこは私も気に入っています。この雑誌を誰かに説明する機会があったとして、少しそういった由来をお話しできる。蘊蓄というのかな。そういうことも自然とできそうだし、そうすることで人の記憶に残りやすいだろうし、わりといい名前だと思いますよ。
補足③ 書籍タイトルと雑誌タイトルの違い
板近:エムピージェーからは雑誌だけでなく書籍、つまりは図鑑や飼い方指南書が出ていますが、そうした書籍は今日解説してもらった雑誌とはタイトルの雰囲気が大きく違ったりすることがありますよね。
山口:そのとおりです。うちの書籍は実用書であったり図鑑であることが多いので、説明的なものが多いですね。
板近:はじめての熱帯魚飼育とか。
山口:そうそう。その本はまさにはじめて熱帯魚を飼育するための本で。他にも、プレコという魚の種類がたくさん載っている図鑑から「プレコ大図鑑」とか。
板近:たしかに、説明的なタイトルですね。
山口:雑誌は扱う内容が多岐にわたることが多いじゃないですか。また、続けていく場合には、徐々に内容が変化していくから。
板近:だから限定的ではない名前を付けるわけですね。
山口:雑誌にあまりにも限定的な名前をつけてしまうと、内容と乖離してしまう可能性がある。だから、ちょっと抽象的にしています。
板近:シュリンプクラブであれば、シュリンプにまつわることであれば、どんな企画でも違和感がないですね。
山口:はい。そういう意味で雑誌より書籍の方が説明的なタイトルであることが多くなっているというわけです。
タイトルを考える楽しさ
板近:今日もいろいろお話聞かせてくださりありがとうございました。
山口:いえいえ。どうでしたか。なるべく自分語りは抑えたつもりですが(笑)。
板近:とても楽しかったですし、同時に、タイトルというものの重要性を改めて認識することができました。
山口:タイトルは一度決めたらずっとそれでいきますからね。
板近:責任重大ですよね。タイトルは表紙など、とても目立つところに配置されるというか、まず目に入るものですし。
山口:ですね。責任を負うことで感じられる楽しさや喜びもあると思うんです。
板近:ありますね。これだ! と決まったあの感覚は素晴らしいです。
山口:そうそう。
板近:また、考えたタイトルを認めてもらえた時って嬉しいんですよね。
山口:やはり何かを真剣に考えるというのは良いものですね。