みなさんこんにちは。

アクアライフWEB編集部です。

 

今回のアクアの雑談のお題は「アクアプランツ」です。

ご存じの方も多いと思いますが、アクアプランツは月刊アクアライフなどを発行、またこのブログを運営しているエムピージェーから年一回発売される水草専門誌です。

本日はそのアクアプランツの創刊秘話、そして最新号の情報などなどがっつり語りましたので、水草ファンの方もそうでない方もどうぞご覧ください!

「アクアプランツを初心者さんが読んでも大丈夫なのか……どのくらいマニアックなのか…………」なんて話も飛び出しますよ!

山口 正吾山口 正吾

気がつけば創刊から20年近く経っているんですね。

板近 代板近 代

今回の私は質問役。みなさんの気になること……ちゃんと質問できたでしょうか?

※当雑談はアクアプランツNo.18 発売前に行なったものです。

アクアの雑談

アクアの雑談は、その名の通りアクアリウムに関する「雑談」をお届けする連載です。お題は回ごとにいろいろ! 雑談いたしますのは、月刊アクアライフ前編集長の山口 正吾(やまぐち しょうご)と、アクアライフWEB編集部の板近 代(いたちか しろ)。雑談ならではのお話を、どうぞお楽しみください。

アクアの雑談全記事一覧はこちら

今日のお題は水草専門誌アクアプランツ

板近:最近山口さんは、近々発売(2021年7月28日 ※発売済み)となるアクアプランツの編集をずっとされていたんですよね。

山口:そうなんですよ。いつもは違う人間が一人で編集を担当しているのですが。今回はいろいろあって私ほか複数の人間で編集を担当することになって。それの取り仕切りみたいなことをしていました。

板近:なかなかお忙しそうでした。

山口:実はパソコンもだいぶ末期にきていて、だいぶ苦労しましたが、なんとか仕上がりました。

板近:つい先日パソコンを入れ替えたんでしたっけ。

山口:ええ。ちょうど今日出社したら新しいPCへのデータの移行が終わっており……と、これはあんまりアクアとは関係ないですね(笑)。

板近:アクアのパソコンということで(笑)。ともあれ、山口さん、編集部のみなさん、そしてパソコンさんもお疲れさまでした。

山口:ありがとうございます。

板近:それで、編集も終わったことですし……本日のお題はアクアプランツでもよいでしょうか。

山口:うちの雑誌の解説ということで、我田引水という気もしますが、せっかくの機会ですし存分に語らせてもらいます(笑)。そうだな、せっかくなので創刊の話なども。

板近:それは楽しみです! あ、そうだ。いつもの補足いいですか。

山口:あ、あれですね。では今日は私から。

板近:お願いします。

山口:板近さんはWEB編集部なので、雑誌の編集には基本的にノータッチです。雑誌に板近さんの関わった記事がある場合は事前チェックなどしていただきますが、アクアプランツでは創刊号から最新号まで含めそうした記事はないので…………かなり、読者さんに近い目線で質問していただけるのではと思っていますよ。

板近:責任重大ですね。いい質問できるようがんばります。

アクアプランツは雑誌である

山口:それで、なにからお話したらいいですかね。

板近:この雑談をご覧になられる方の中には、もしかすると「まだアクアプランツを読んだことない」という方もいるかもしれませんので、基本的なことから質問させていただけたらと思います。

山口:わかりました。

板近:ではまず、アクアプランツは単行本ではなく雑誌ということでいいんですよね。

山口:そうですね。出版物にはいろいろな区分があって、書籍とか雑誌とかムックとか……その中の一つで雑誌という分類になります。ただ、アクアプランツは独立した雑誌ではなく月刊アクアライフの増刊という形になります。

板近:その増刊とはどういう意味になるのでしょう。

山口:別冊といったほうがイメージしやすいかな。他には姉妹誌といってもいいかもしれない。ちょっと専門的な話になりますが、月刊アクアライフの雑誌コードで出版している形です。

板近:アクアプランツが年に1回なのはなぜですか?

山口:いろいろあるのですが、人員の問題が大きい(笑)。年2回くらいは出せる分野だと思うのですが、スタッフが足りないんです。

板近:月刊アクアライフには他にも、アロワナ、シュリンプ、怪魚飼育、金魚などの専門的な増刊がありますよね。

山口:ええ。月刊アクアライフもマニアックな面がありますが、増刊はさらにカテゴリを絞ったものが多いので、よりマニアックになる傾向がありますね。

板近:その水草版がアクアプランツと。

山口:そういうことになります。

板近:まだ知らない人に向けて……アクアプランツ含む各増刊の詳細は、エムピージェーのサイトのトップページを見てもらうのがいいですかね。

山口:そうですね。それぞれの簡単な紹介も掲載していますし。

初心者がいきなりアクアプランツを読んでも大丈夫?

板近:では次の質問です。今「増刊はよりマニアックに」というお話がありましたが、そんなアクアプランツを初心者さんが読んでも大丈夫でしょうか? 

山口:たとえば、難しくてついてこれなかったり……というようなことでしょうか。

板近:そうですね。

山口:それは、絶対ないとは言い切れないところですが……。板近さんは、その点どう思われますか。

板近:アクアプランツは専門誌ですし、趣味の世界はマニアックでもありますので、難しい話はあたりまえのように出てくるものだと思っています。ただ、出てくるというだけで、全てが難しいわけではないとも思います。

山口:アクアプランツに限らず、どんな雑誌、またはウェブサイトでも、その人が初めて触れる分野であれば、わからないことがあるのが普通ですよね。例えば、私が料理の本を読んでもよくわからないだろうし。

板近:あと、誤解がないように補足させていただくと、難しい話は、話が濃かったりディープであったりして難しいだけで、わかりにくいというわけではないんですよね。

山口:それは気をつけているところで。難しい話でもなるべく多くの人に理解してもらおうと編集しています。

板近:具体的にはどのような感じでしょうか。

山口:わからないことがあったとしても、それで嫌になってしまわないように。写真や原稿、またはデザインに惹きつけるものがあるように、できる限りの時間を使って編集していますね。

板近:わからなくても楽しめるように。

山口:よく言われることですが、難しい内容でも話の筋が通ってさえいれば、伝わるじゃないですか。知らない単語があっても、それを調べたらわかったりもする。記事をそうした状態まで仕上げるのは編集の仕事であって。

板近:はい。

山口:難しい内容が、支離滅裂な文章で書かれていたら、もうアウトですよね。そうならないように気をつけているわけです。

板近:私も編集をする人間として肝に銘じておきます。

山口:いえいえ。いつも板近さんの編集には助けてもらっていますし。

板近:ありがとうございます。

山口:それで質問の答えに話を戻すと、初心者さんであっても気軽に手に取っていただきたいですね。

板近:初心者さんでも入りやすい記事などもありますよね。

山口:はい。「注目のレイアウター紹介」や「タナカカツキさんによる漫画」、「化粧砂の使い方」など、水草に興味を持ってから間もない人でも楽しめる企画がたくさんあります。

板近:とりあえず難しいことは考えず、写真を眺めて楽しむということもできますよね。

山口:ええ。いろいろな水草やレイアウトを誌面で観賞していただけるようにもなっています。

板近:まず写真が気になって、そこからその写真に写っているものについて知りたくて文を読むという流れもありますよね。見て、惹かれて、気になって、学ぶみたいな。そういう時に、「難しい話」があると深く知ることができてありがたいんですよね。

山口:簡単な情報だけでは雑誌として体をなさないですし、その辺は塩梅が必要なところで。

板近:たしかに。

山口:育成やレイアウトに役立つ技術的な話だけでなく、知識欲が満たされる、つまり、知っていると面白い類の話などもありますし。

板近:アクアプランツには、そんないろいろな要素が幅広く含まれていますよね。

山口:水草のオールジャンルをお届けできる雑誌ですから、ビギナーでもハイアマチュアでも水草が好きな人であれば、どこかしら引っかかるところはあると思います。

月刊アクアライフとはカラーが違う?

板近:アクアプランツは月刊アクアライフの増刊ですが、その、月刊アクアライフを読んでいる人とそうでない人ではなにか違いが出たりしますでしょうか。

山口:……うーん、どうなんだろう。

板近:たとえば、月刊アクアライフと一緒に読んでいるとこんなところが面白くなる! とか、アクアプランツ単体で見ても大丈夫! とか。

山口:カウントの仕方にもよるけれど、アクアプランツはいま100ページかな。それがほとんど水草の情報だから、水草が好きな人にはとてもよい雑誌だと思いますよ。単体で見ても。

板近:パルダリウムとアクアテラリウムの回でも似たようなことを言いましたが、ある特定のジャンルの情報がまとまっているというのは、資料として使いやすさもありますよね。

山口:ええ。月刊アクアライフはアクアリウムの総合雑誌ですから当然水草のコーナーもあるし、また水草特集も時折組んだりもします。

板近:そうですね。

山口:ただ、なんというのかなアクアプランツと月刊アクアライフではカラーがだいぶ違いますね。スタッフの体制が異なるので。

板近:つまり、月刊アクアライフとアクアプランツを合わせて読むと、違う角度から水草を知れるということですか。

山口:そうだと思います。

板近:月刊アクアライフの記事以外にも、水草の本をいくつか出していますよね。

山口:はい。客観的に見ても、水草についての発刊物であれば、うち(エムピージェー)はかなり充実していると思います。多くの水草ファンに楽しんでもらえるように幅広くラインナップしていて、その中の一つとしてアクアプランツがある。

板近:自分に合わせて選ぶこともできるということですね。

山口:ええ。どの本を買っていいか悩まれたときは、エムピージェーのサイトでそれぞれの詳細を見ていただけるとよいと思います。書籍とアクアプランツ、それぞれ一覧でまとめてありますのでよかったらどうぞ。何度もサイトを紹介して恐縮ですが。

板近:そんな中アクアプランツのよさというのはなんでしょう。

山口:そうですね、いろいろな特徴がありますが、一つ挙げるのであれば、一部には難しいと感じるページはあるかもしれませんが、パラパラとめくって楽しめる雑誌のよさはあると思います。

板近:パラパラめくる。私もよくやりますね。真剣に読むのもいいけど、気軽に流すのもいい。先日もアクアプランツのNo.14だったかな、それを寝る前にパラパラとただ眺めて……写真が多いから、そうした時間が楽しいのかもしれませんね。

山口:それはあると思います。No.14、あれも綺麗な写真がたくさんでしたから。

板近:ええ。アクアプランツにしろ月刊アクアライフにしろ、写真がとてもいいですよね。また、写真で、自分が育てたことのない種類を鑑賞したりできるのも好きなんです。

山口:それも楽しいですよね。

板近:あと、私の印象であると、アクアプランツにしろ月刊アクアライフにしろ「一冊」でもかなり楽しめると思っているのですね。連載などありますし、毎号続けて買う面白さもありますが一冊で独立して楽しめる要素も多いので。

山口:ありがとうございます。ちなみに板近さんはどんな風にうちの書籍や雑誌を購入されていましたか。一緒にお仕事させてもらう前のことですね。

板近:そうですね、最初はバラバラでの購入でした。必要なもの、または興味が出たものを買うというか。例えば、コリドラスに興味を持った時に、コリドラス大図鑑を買ったり。雑誌のコリドラス特集を買ったり。

山口:その時その時で。

板近:ええ。ああ、そうそう。子どものころなんかはお小遣いが限られていましたから、かなり悩んで(笑)。

山口:(笑)

板近:でもある時期から月刊アクアライフは毎号購入すると決めました。これは、できるだけ手元に魚などの情報をそろえておきたい、そんな風に思ったところがあります。

山口:今お話しいただいた通り、雑誌や書籍との付き合い方はその時々で変わりますよね。なのでアクアプランツも、ご自身の都合に合わせて手に取っていただければ。

板近:あと、これは雑誌あるあるかもですが、最新号から入って集めたくなり、バックナンバーが欲しくなる人もいるかもしれませんね。

山口:あるあるですね。うちの雑誌類はけっこうバックナンバーの人気があるみたいですね。アマゾンなどで見ると絶版の号に高値がついていたりしますし。

アクアプランツ創刊秘話

板近:アクアプランツは次でNo.18ですか。創刊されてからだいぶ経つのですね。

山口:ええ、18号目とはいえ年に1回なのでけっこう経っていますね。あ、そろそろ冒頭でも述べている創刊の話をしましょうか?

板近:催促したみたいになっちゃってすいません(笑)。

山口:いえ(笑)。それでアクアプランツは、編集発というか、営業発な面もあるんですね。

板近:営業発といいますと。

山口:当時の営業会議で社長から「新しい増刊を!」と言われていて。

板近:なるほどです。

山口:うちからは、マリンアクアリストビバリウムガイドと、1990年代にはかなり強力な増刊が生まれたこともあり、それに続く増刊の企画を迫られていたんです。

板近:その2つは1990年代からなんですね。

山口:そうですね。まあ、「迫られていた」というのも大袈裟かな。普通の仕事だから。それでストレスを感じていたわけでもないし、「なんかあるかなー」くらいの気持ちで、しばらく考えていたんです。

板近:はい。

山口:それで、今もアクアプランツの中心でやっている当社のカメラマンがいて、アクアリウム全般にいろいろ詳しい人なのですが、水草にもかなり入れ込んでいて。

板近:そのカメラマンさんの存在が大きいのですね。

山口:ええ。そのカメラマンを中心にした体制で創刊してはどうかと会議で提案したんです。

板近:水草を選んだのもカメラマンさんありきで。

山口:そういう面もあるし、私もアクアライフでは水草の企画を担当していたから馴染みはあった。編集は私ができるだろうと思ったんですね。それに定期で発刊できるジャンルとなるとわりと限られているから。

板近:そのジャンルの持つ力も大切になりますよね。

山口:そうそう。いくらスタッフが好きでも、貝の飼育専門誌、みたいな限定的なジャンルであると……1回の発刊は可能かもしれないけれど、なかなか続かないでしょうし。

板近:貝もかわいいですけれどね。

山口:かわいいですよね(笑)。

水草単体を楽しむ

板近:アクアプランツ創刊時に、なにかコンセプトを決めたりしたのでしょうか。

山口:「水草を扱う」だけがコンセプトであって、水草にまつわるいろいろな企画を組んでみようと思っていたわけですが。

板近:はい。

山口:ただ、それではあまりにも芯がないので、一応は「水草単体」にフォーカスしたいと思っていました。

板近:水草単体ですか。

山口:はい。水草単体の美しさを伝えたいと思った。つまりは、レイアウトについてはADAさんでも以前から雑誌を出しているし、月刊アクアライフでもレイアウトを軸にした特集を組むことがある。

板近:月刊アクアライフ内にも、ADAさんの連載がありますよね。

山口:ありますね。

板近:そんななか打ち出した水草単体というコンセプト。具体的にはどのような感じだったのでしょう。

山口:アクアプランツの「水草単体」を象徴的に表しているのは、「一本の美」というコーナーで。

板近:どんなコーナーでしょうか。

山口:そのものズバリ、1本の水草の魅力を写真で表現したコーナーで。1本の水草を写した写真1枚で1ページを使っていました。ああ、実際のページを見ていただくのがいいですかね。

アクアプランツ
アクアプランツNo.1より「一本の美」

板近:創刊号ですね。このページはリアルタイムで体験したかった、そんな気がします。

山口:古い雑誌なので誌面のスキャニングですから、ちょっと画像がよくないですが。

板近:いえいえ、それでも伝わります。

山口:大きな写真には独特な文章を添えて。文章は私の担当ではなくて、そういう文章が得意な方に依頼していました。けっこう力が入っていたし好評でしたよ。

板近:その文章とともに水草を楽しむと。

山口:そうそう。水草ってどこかファンタジーというかファンシーというか。

板近:その感覚わかります。

山口:ほら、昔、水中花のシフトノブとかあったじゃないですか。知りませんか?

板近:うーん……。

山口:板近さんの世代じゃないか。私が小さい頃流行ったんですよ。「シフトノブ 水中花」って検索すると出てくると思いますが……どうでしょう?

板近:あ、見たことありますねこれ。どこで見たんだろう。多分見たとしても1、2回だと思うので…………流行はもう終わっちゃってたのかな。でもなんかいいですねこれ、いい意味での独立感というか、別世界な感じがある。

山口:水中花でピンとこなければ、スノードームでもよいのですが。なんにせよ、水草にはこういう異世界感というのかな、それを見ただけでグッと違う世界に入り込んでしまうような、そういう力があると思っていて。

板近:ええ、ええ。ありますよね!

山口:あるんですよね。「一本の美」はそれをうまく表現できたと思いますよ。

マニア向けとしてのアクアプランツ

板近:先ほど初心者さんに向けての話をさせていただきましたが、今度はマニアさんに向けてのアクアプランツについて教えていただけますか。

山口:はい。

板近:ストレートに言うと、山口さんが「マニアック」とおっしゃっていた部分がどのくらいマニアックであるのかということを。

山口:うーん、そうだな。例を出すのは難しいですが、折々でマニアさんが気になるような情報をキャッチして、それに応えたいとは思っています。たとえばですけれど、No.18(次の号)ではエキノドルス属の最新分類についても書かれているなど……。

板近:おお。マニアック。

山口:マニアックというか専門的というか。それとレイアウトについては国内だけではなくて海外、主にオランダですが、そのコンテストを載せることが基本です。

板近:ダッチアクアリウムですか。

山口:ええ、そう呼ばれるスタイルのレイアウトです。ただ、No.18ではコロナの都合でコンテストが開かれず掲載できませんでしたが。

板近:コロナ、早く終わって欲しいですね。

山口:まったくです。それで、多くの方が情報を欲している、その点だけを考えると、レイアウトで言えばネイチャーアクアリウム、またはコンテスト向けのレイアウトに照準を絞ってもいいと思うのですが。

板近:ですが?

山口:やはり、それとは違う流れが気になる水草ファンもいると思うんですよね。海外のコンテストはそういう点も考慮して掲載しています。

板近:レイアウト水槽にもいろいろなスタイルがありますし、海外のスタイルに惹かれる人もいると思います。

山口:これはマニアックとは違うのかもしれませんが、あえて本流ではないところを取り上げる、それもアクアプランツのよいところなのかなとは思います。

板近:いろいろ見ることができるのは、いいですね。

山口:熱帯魚だってメジャーな魚からマニアックな魚までファンがいますからね。

板近:そうですね、それぞれ飼育のコツが違ったりもしますし…………と、今日は水草のお話なのでお魚のことはこのくらいにして……他にアクアプランツでのマニアック話はありますでしょうか。

山口:マニアックか否かは受け取り側の感性もあるし、歴史も長い雑誌なので、どれを話したらよいのかと(笑)。

板近:すいません、毎度毎度の悩ませる質問で(笑)。

山口:あ! これはどうかと思いますが、以前の号では陸上植物もガッツリと特集しましたね。

板近:「どうかと思う」んですね(笑)。

山口:水草専門誌なのにビカクシダの特集をやったりして。レイアウト基準であれば、パルダリウムに使えるランやコケなどの陸上植物を取り上げるのは自然な気はしますが……。ビカク特集はけっこう思い切ったなと(笑)。

板近:たしかにきてますね。でもビカクって、こう、アクアリスト的にくるものがある気がしますね。好きな人多いんじゃないかな。

山口:おっしゃる通りで。制作スタッフのアンテナにひっかかって「あ、よさそう」と思ったらわりと躊躇なく企画を通してしまうんです。

板近:実際ビカクシダいいですよね。めちゃくちゃかっこいいし、興味深いですよ。

山口:かっこいいです。水槽の近くに飾るのもいいと思いますよ。アクアテラリウムとかパルダリウムには……そうとう大きい水槽にしないときついかな。

板近:ビカクは大きくなりますもんね。

山口:だから普通は単体で飾ることが多い、というか単体で飾ることが前提となる植物だと思います。

板近:ええ。水草ファンの方の中には「陸上の植物には興味ないんだよなぁ」なんていう人もいると思うんです。趣味にこだわりや偏りが生まれるのは当然のことですし。

山口:そうですね。

板近:でもそこで「お、これはいいな」なんて、陸上植物と出会うこともあると思うんですね。アクアリストに一定の人気のある、アグラオネマやジュエルオーキッドなどはエムピージェーの雑誌で知ったという人も多いのではないでしょうか。

山口:かもしれません。いつも言うことですが、ガチガチなルールを作って自ら縛られてしまう、それをなるべく回避したいんです。いつも新しい提案、面白い提案をしたいと思って制作していますから。

趣味の雑誌は警戒対象!?

板近:今のビカクの話で思い出しましたが、私なんかは趣味の雑誌は警戒したりしていますよ。月刊アクアライフや、アクアプランツみたいな濃いのは特に。

山口:警戒ですか?

板近:こう、趣味って物理的な限界があるじゃないですか。スペース、時間、資金、などなど。

山口:ああ、そういうことですね。

板近:でも雑誌を見ていると「また面白いこと教えられてしまった!」みたいな。でも「そんなに水槽増やせないよ!」と。いや、情報を知るだけでも楽しいのですが、悶えることは多くなりますよね(笑)。

山口:(笑)。そういう雑誌を作っていきたいというのが、根っこにあるとは思います我々も。

アクアプランツ最新号の見どころなど!

板近:それではここからは、アクアプランツ最新号(No.18)についてお聞きしたいと思います。

山口:よろしくお願いいたします。

アクアプランツ
アクアプランツ最新号(No.18)

アクアプランツ最新号で編集者が注目した水草

板近:アクアプランツを作るということは、たくさんの水草を見ることでもありますよね。

山口:そうですね。

板近:こう、最新号を編集していて「お、これは……!」となった水草など教えていただきたいのですが。

山口:まだ、本号に関しては頭の整理が追いついておらず客観的に見られないのですが、それでもよければ。

板近:お願いします!

山口:18号目となるアクアプランツの特集は「映える水草レイアウト」だったんですね。プロショップのレイアウトをたくさん掲載したのですが。

アクアプランツ
特集のトビラページ。美しい写真を見てもらいたいという思いを表現した。アクアプランツNo.18より

板近:それは見ごたえありそうですね。

山口:ありますよ。それで、その中でロタラのバリエーション、その使い方の多彩さには注目しました。

板近:ロタラですか!

山口:いろいろな水草が流通する中で、レイアウトにおいてはロタラは一大勢力であるのだなと。改めて実感したといいますか。

板近:たしかにロタラは、水草レイアウトと聞いて思い浮かぶ存在ですよね。

山口:いわゆる陰生のコケやシダはわりとトーンが似ていますが、一方の陽生、とくに有茎草はかなりバリエーションも多くてカラフルであって。中でもロタラはかなりの充実ぶりで。

板近:水草コーナーを見ても、ロタラがいろいろあったりしますよね。

山口:たくさんのレイアウトに使われているロタラ、これを中心に特集を読んでいくだけでもいろいろと発見はあると思いますよ。

ツイッター、インスタで見れる! アクアプランツ最新号のSNS連動企画

板近:アクアプランツNo.18では、SNS連動企画もありますよね。

山口:はい。まずこれは板近さんもご覧になっていると思いますが、ツイッターで読者さんの投稿を募集しました。

板近:ええ。#アクアプランツの水景写真コンテストですよね。

山口:これは当ブログの写真コンテストがあまりにも好評であったので、アクアプランツの企画会議で私から提案したものです。

板近:そうだったんですか! 写真コンテストを発案させていただいた身としてとても嬉しいです。なんかこう、つながっていく感じがして嬉しいですね。

山口:当社の編集は少人数なので自然と共有してしまうんですね(笑)。それで、アクアプランツの水景写真コンテストも、とてもよい写真がたくさん集まって。

板近:ええ、素敵な投稿が多かったです。

山口:こうしたツイッターでの投稿企画は月刊アクアライフでは普通にやっていたことですが、アクアプランツでは初じゃないかな。

板近:記念すべき! そういえばさっき「まずこれは」と言われていましたが、他にもあるんですか?

山口:ええ。インスタのほうでも。

板近:インスタですか!

山口:はい。ハッシュタグ「#アクアプランツ18_映える水草レイアウト」で見られる企画です。

板近:いったいどんな投稿が……。

山口:先程お話しした、今回の特集「映えるレイアウト」には、うちのカメラマンの撮影した写真の他に、レイアウター(作者)自身による写真もそれぞれのコーナーで掲載していて。

板近:その写真をインスタで公開するのですか?

山口:はい。その写真を、雑誌発刊と近いタイミングでインスタグラムに上げてもらうという企画です。

板近:それも初の試みということですね。

山口:プロショップに伺ってたくさんのレイアウトを撮影して掲載した。それはこれまでの特集でも行なっていたことなんですが、その後インスタにアップして楽しんでもらう、その試みは初ですね。

板近:インスタのアカウント作らないと。

山口:インスタグラムではレイアウターお気に入りのシーンをアルバム的に閲覧することができるし、また、関連写真もアップしてもらう予定なので雑誌に載っていないカットも見ることができる。

板近:雑誌でしか見れないものと、インスタでしか見れないものがあるわけですね。

山口:そういうことです。連動というとちょっと大袈裟ですが、まあ、インスタという場で私たちも楽しませてもらっている、という形です。

トニナ登場! 最新号には南米水草の特集も掲載

板近:本日最初のほうに最新号には「エキノドルス属の最新分類」が掲載されているとお聞きしましたが、こう、個人的に南米の水草ってテンションあがるんですよね。もちろん南米以外の水草でもテンションあがりますが。

山口:たしかにアクアリストにとって、南米はひとつのキーワードではありますよね。そうそう、最新号ではエキノドルス属の話以外にも南米水草特集を久しぶりにやったんです。

板近:南米水草特集ですか!

山口:こちらはトニナなどのホシクサを中心としたカタログで。

アクアプランツ
南米水草入門。アクアプランツNo.18より

板近:トニナ! いいですよね。トニナの繁った水槽にアピストなんて。

山口:美しい水草が多いのですが、管理にクセがあるためか、知名度のわりには今一つ流通が少ない水草たちで。今の読者には知らない方も多いだろうし、「入門」と題して代表的な種を中心としたカタログを組んでいます。

板近:いいですね。

山口:私にとっても、トニナは今でも心ときめく水草で。物凄く綺麗だと思う。名前先行ではなくて、実があるというか。記事を作っていて、もう一回トニナやろうかな……などと思いましたよ。

板近:思ってしまいましたか!

山口:以前もお話ししましたが、そういう記事はよい記事ですよね(笑)。編集が思わずやってみたくなるのは。

アクアプランツ過去話

板近:それではここで、もう一度、振り返るというか、アクアプランツの過去話をお聞かせいただけますか。

山口:過去話ですね。いいですよ、いろいろ聞いてください。

深緑のオパクス

板近:では、創刊号のお話でなにか。

山口:はい。「一本の美」に通づる話かもしれませんが、創刊号では深緑系のエキノドルスを特集しました。

板近:深緑系というとオパクスなどですね。

アクアプランツ
深緑のエキノドルスが表紙を飾るアクアプランツ創刊号

山口:その通りで。これは当時、だいぶマニアさんのあいだで盛り上がっていたもので、葉が硬くて透明感があって成長が遅くて…………大体がそんな特徴を持っているのですが。

板近:ええ。ええ。

山口:どこか上品で高級感があって。

板近:ありますね!

山口:地域名がついた株が流通して。

板近:ついてますね!

山口:そんな感じで、当時はかなり盛り上がっていたし、今でも好きな人は好きですよね。

板近:深緑系いいですよね……。私が興味を持ったのは、多分そのブームの随分と後になるのですが、初めて生で見た時の感動は忘れられないですね。独特の美があるというか。

山口:創刊号のエキノドルス特集はインパクトがあって、それでアクアプランツという雑誌の認知も高まったと思います。その次はホシクサ特集をやったのかな。

アクアプランツ
創刊号に続くアクアプランツNo.2でも水草単体が表紙を飾った

板近:水草単体へのフォーカスが続いたのですね。

山口:ええ。それで水草単体という価値観を押し出していった、そんな歴史です。

板近:水草単体がアクアプランツの軸である……というエピソードですね。

オランダ取材

山口:それともう一つ、当初の軸として海外取材がありましたね。

板近:海外取材ですか。

山口:アクアプランツの取材班がオランダに行ったんです。

板近:前回の雑談でもオランダの写真が掲載されていましたね。

山口:アクアプランツNo.2掲載の写真ですね。それ以前から国内にもオランダの情報はあるにはあったのですが、関連する資料が少ないし謎の部分も多くて「だったら行ってみよう」と。私以外のスタッフでオランダに行って。

オランダアクアリウム
アクアプランツNo.2オランダ取材より。雑誌のスキャニングのため、真ん中の線はご容赦ください

板近:すごいことですね。

山口:あれは財産ですよね。貴重な経験だったと思います。

板近:あれ、山口さんはお留守番だったのですね。

山口:私は当時からもう、わりと取り仕切りの方が主な仕事であって、長期間会社を空けての取材ができなかったんです。

板近:立場的に。

山口:そうなるのかな。それは良い面も悪い面もあるのは重々承知ですが、現実がそうなのであるから受け入れるしかない。

板近:いろいろな役割の人が必要ですもんね。

山口:何にせよ、スタッフをオランダに派遣したことは、英断だったと思いますよ。

板近:生々しい話ですが、けっこう費用かかったんじゃないですか。

山口:はい、お金がかかり過ぎていろいろと言われたりしました(笑)。当時のオランダはめちゃくちゃ物価が高かったみたいで……今はどうなのかわかりませんが、マクドナルドのセットが日本の倍くらいしていたみたいですね。いくら節約しても、そこはもうどうしようもない。

板近:お腹はすきますもんね。

山口:しかし、媒体として使った予算を上回る体験ができた。それは言い切ることができますね。その後につながるネットワークのとっかかりともなったし。

板近:そういう取材があってアクアプランツの認知が高まっていたんでしょうし。

山口:それはあると思います。オランダの後にはドイツやベルギーにも行ったりして、2000年台前半のアクアプランツはヨーロッパに傾倒していた、そういう時期でしたね。

板近:ドイツといえばいくつかのアクアリウム用品のメーカーさんが思い浮んだり、オランダではダッチアクアリウムなどなど……アクアリウムという文化にとってヨーロッパは非常に重要な存在ですよね。

山口:そうですね。

板近:私がその感覚を得たのは、子どものころに読んだ月刊アクアライフの影響であると思います。

山口:それは嬉しいですね。なんにせよ、現地の状況がよくわからない、それでもよい誌面を作りたいと海外に出向いた。それはアクアプランツの強烈な個性として誌面に現れたと思います。

アクアプランツの移り変わり

板近:今、アクアプランツの初期のお話をしていただきましたが、その後はどのような感じであったのでしょうか。

山口:つまり移り変わりですか。

板近:ええ。

山口:私がアクアプランツの担当を外れました。

板近:それには何か理由があったんですか。

山口:まあ、先は「派遣した」なんてカッコよく言いましたが、アクアプランツはカメラマンが中心になって動く体制ができあがりつつあったので、もう私が担当しなくてよいだろうと思ったんですね。

板近:創刊の時にも中心となったカメラマンさんですね。

山口:はい。それで、No.3かNo.4のころだったかな、部下に担当を譲ったんです。部下もやりたいと言っていたし。

板近:その部下の方はカメラマンさんとは別の方ですかね。

山口:はい、編集の人間です。

板近:山口さんのお仕事を引き継いだわけですね。

山口:それから、私はちょっと外から見ている感じになって。ただ、毎号きちんとチェックしていて、会議にも参加したりしました。

板近:山口さんは、少し距離のある立ち位置になったわけですね。

山口:そういうことになります。

板近:それは寂しくはありませんか?

山口:いえ全然。アクアプランツの他にいくつかの増刊を立ち上げましたが、立ち上がった仕事は人にお願いしてもいいかなと思うんです。編集にもいろいろスタイルがあるだろうけれど、適材適所というか。

板近:適材適所ですか。

山口:立ち上げにエネルギーを注げる人、引き継いで発展させる人、そういう適性が多分ある。部下に任せてからはけっこう面白い変化もありまして。

板近:そこ、ぜひ聞きたいですね。

山口:簡単に言うと、だんだんとレイアウト寄りになっていったんですね。今のアクアプランツはもうレイアウト雑誌と言っていいくらいの内容であるし。

板近:創刊号と最新号の表紙を見比べても、その変化を感じられる気がします。

アクアプランツ
アクアプランツ
創刊号と最新号(どちらも本日二度目の掲載ですが……ぜひ見比べてその変化を感じてみてください!)

山口:中心であるカメラマンはレイアウトコンテストの撮影にも注力していて、そういった人脈から、自然とレイアウトにシフトしていったんだと思います。

板近:なるほどです。カメラマンさんが、レイアウトの最前線でお仕事をされているからこその流れでもあったのですね。

レイアウターという言葉と存在

山口:それで、今お話ししたようなレイアウト寄りになっていく流れがある中で「レイアウター」という言葉が誌面では目立つようになって。水草レイアウトの作者のことですけれど、ああ、これはいい流れだなと思った記憶があります。

板近:レイアウター。たしかに、よく見かける言葉です。

アクアプランツ
アクアプランツNo.5表紙。このころから、レイアウターという言葉が目立つようになった記憶があります(山口談)

山口:YouTuberではないけれど、ゼロのところに現れた新しい肩書きというか。

板近:趣味の世界がどんどん進んでいった結果というか。

山口:はい。そもそも私は人にフォーカスした記事が好きなので、レイアウターという言葉の認知が広まれば、そこから新たな展開もあるだろうと期待していました。

板近:今、実際にそうした展開がありますよね。

山口:水草レイアウト、それを楽しむ人をレイアウターと呼ぶのはとてもわかりやすい。また、雑誌を読む人にとってもレイアウターという言葉があって、初めて伝わる部分もあるのだと思います。

レイアウター
アクアプランツ最新号(No.18)でもレイアウターにフォーカスした企画を掲載

久しぶりの担当

板近:アクアプランツの最新号では山口さんは編集に関わられていましたが、今日のお話をお聞きした限り、それは、なかなかに久しぶりのことであるということですね。

山口:そうですね。とはいえ、水草500種図鑑の担当など、ずっと水草関連の仕事はしていたので浦島太郎ではなかったですが。

板近:実際にやってみてどうでしたか。

山口:久しぶりだし、勝手知ったる媒体でもあるので、新鮮さもあり、または慣れ親しんだ空気感もありと、楽しく仕事をすることができました。もちろん最前線で動いているのはカメラマンなので、彼が引っ張っていって、私がそれをまとめるという感じかな。

板近:改めまして、お疲れさまでした。

山口:ありがとうございます。ここで少しまとめると……水草の世界は、アクアリウム全般とはまた違った分野というか「アクアリウムの中の水草」でもあるし「アクアリウムといえば水草」くらいのイメージがある人もいるだろうし、だいぶ突出しているんだと思います。

板近:水草がひとつの文化を形成している。

山口:そうですね。たとえば、この9月にはネイチャーアクアリウム展が東京ドームシティで開かれる予定ですが、そういうイベントのあるアクアリウムの分野って限られていますよね。

板近:たしかに。アクアプランツは、そんな分野をより楽しむための増刊でもあるわけですね。

山口:綺麗にまとめていただきましたね、ありがとうございます(笑)。

板近:前回は山口さんに綺麗にまとめていただきましたし(笑)。冗談はさておき、アクアプランツNo.18楽しみですね。最後に、読者さんに向けて一言お願いできますか。

山口:水草が好きな人であれば楽しめる、そんな誌面作りを心がけて18号となりました。水草にどっぷりハマっている人も、ちょっと興味のある人も、手に取ってご覧いたければ幸いです。

アクアの雑談