みなさんこんにちは。

アクアライフWEB編集部です。

 

本日は、ビーシュリンプやチェリーシュリンプ、ヤマトヌマエビなどの、アクアリウムで育成する小型のエビの混泳についてお話していきます。

「エビと魚の混泳を考える際の注意点」

「ビーシュリンプとチェリーシュリンプは交雑するのか」

「ビーシュリンプとヤマトヌマエビの“体格差”混泳の例」

などなど! いろいろと掘り下げていきますので、どうぞよろしくお願いいたします!

山口 正吾山口 正吾

飼う目的による、といえば身も蓋もありませんが、そういうことです。

板近 代板近 代

エビの動きは楽しいです。

アクアの雑談

アクアの雑談は、その名の通りアクアリウムに関する「雑談」をお届けする連載です。お題は回ごとにいろいろ! 雑談いたしますのは、月刊アクアライフ前編集長の山口 正吾(やまぐち しょうご)と、アクアライフWEB編集部の板近 代(いたちか しろ)。雑談ならではのお話を、どうぞお楽しみください。

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シュリンプ専門誌編集に聞く、エビの混泳話

板近:今回は、前回に引き続き、混泳シリーズでいきたいのですがよいでしょうか。

山口:いいですよ。本日はどんなお題で。

板近:アクアリウムで飼育される小型のエビの混泳について……なんてどうでしょう。ビーシュリンプ、ミナミヌマエビ、ヤマトヌマエビなどなどの。

山口:わかりました。エビは人気ですし、魚と違って掴みづらいところもあるから、何かしらの提示ができればいいと思います。

板近:よろしくお願いします。エビ飼育情報誌(シュリンプクラブ)を長年作ってきた山口さんに、ぜひいろいろお聞きしたいなと。

山口:それは光栄です。実際、シュリンプクラブの取材などでわりとガチな愛好家、またはプロと接することが多かったのですが、この問題については立場によって答えが違いましたね。

板近:いろいろな意見があったということですね。

山口:10年くらいシュリンプクラブを作ってきて、いちばんズドンときた言葉は「どんな魚でもエビを食べる可能性がある」ですね。

板近:どんな魚も。

山口:続けてこう言われていたんです。「2cmほどの小型魚であっても、親エビは食べないまでも稚エビは食べてしまう可能性がある。エビは殖やすのが楽しい趣味だから私は魚との混泳はすすめないんです」という言葉ですね。

板近:それはズドンときますね。

山口:レッドビーなどを殖やすプロブリーダーのコメントですが、シンプルでわかりやすかった。

板近:稚エビは本当に小さいですもんね。

山口:ケシ粒みたいな大きさですから。だから、殖やしたい人には魚との混泳はおすすめできないし、観賞メインの場合はエビが口に入らないサイズの魚とであればうまくいくことが多いと。いきなり結論めいてて恐縮ですが(笑)。

板近:いえ(笑)。でもそういうところなのだと思います、大事なのは。エビの混泳の悩みの多くは「食べられてしまう」ということにあると思いますし。

山口:エビは美味しいじゃないですか。エビというか甲殻類全般。人が食べても美味しいし、釣りやアクアリウムなどで魚の餌にもよく使われている。つまりこれは多くの魚が好んで食べるということでもあり。

板近:エビは「食べられやすい生き物」であるということですね。だから「エビが口に入らないサイズであればうまくいくことが多い」と。

山口:もちろん例外もあるので絶対大丈夫とは言えませんが、一つの基準として覚えておくとよいと思います。

混泳が普通だった? レッドビー昔話

山口:そもそも大昔はレッドビー(クリスタルレッド)ですら「水槽のコケ取りに!」という売られ方をしていたのを記憶しています。

板近:コケ取りというと、魚との混泳も普通にあるということですよね。

山口:そうなりますね。その頃は今ほど殖やすことを念頭に置いていなかったのだと思います。

板近:なるほどです。今はビーシュリンプを殖やすという楽しみ方は、普及していますよね。

山口:ビーの色が綺麗になり観賞的な価値が高まって値段も上がっていった。ビーシュリンプ主体で飼育する方も増えていって、そういう方はあまり混泳を考えなくなった。そんな流れがあったと思います。

板近:そうやって、ビーシュリンプというジャンルが確立されていったわけですね。

山口:はい。ただし、皆が皆がそうかといえばそうでもなくて。プロショップの中にも魚との混泳を熱心に研究されている方がいて。そのような方から「オトシンを入れておいてもエビは増える」と聞いたこともあります。

レッドビーシュリンプ
レッドビーシュリンプ。この美しさには歴史がある Photo by MPJ

ネオンテトラにメダカ……エビの大きさから考える魚との混泳

板近:魚とエビの混泳について、山口さんはどう考えられていますか?

山口:魚との混泳であればエビの大きさで考えていいんじゃないですかね。

板近:それは、ヤマトヌマエビはミナミヌマエビよりも大きいから……とか、そういうことでしょうか。

山口:そういうことです。ヤマトヌマエビであれば5〜6cmの魚との混泳もできるし、ミナミヌマエビだと2〜3cm。そういう具合で。

ミナミヌマエビ
ミナミヌマエビはヤマトヌマエビに比べると小さなエビである Photo by MPJ

板近:たしかに、さっきの「口に入らないサイズ」という話でも、エビの体長は重要ですよね。

山口:はい。だいたいエビの体長と同じ大きさの魚であれば口に入らない場合が多いですし、トラブルは少ないと思いますよ。だからメダカやグッピー、ネオンテトラあたりはたいていのエビと混泳できる。

板近:エビを好んで食べる魚は避けたほうがいいですよね。

山口:問題はシクリッドかなぁ。特にテリトリーを主張していると食べるつもりはなくても追っかけ回したりして。エビが水槽からダイブという事故は多いと思います

板近:ああ、外に出ちゃうケースですね。

山口:ええ。追いかけられて外に飛び出しちゃう。隠れ家もあるから安心……でもないんですよね。

板近:シクリッド、ベタ、フグあたりはエビを食べたという話を目にするような気がします。

山口:ああ、フグも気をつけたほうがいいかもですね。

板近:貝をバリバリ食べれちゃうような魚は、エビも余裕で噛み砕いてしまいますよね。

山口:そうそう。でもアベニーパファーとチェリーシュリンプは長い間一緒に飼っていたことがあったな。アベニーくらい小さいと、わりといけちゃうのかもしれない。

板近:私は逆パターンとして、繁殖させたベタがまだ小さい頃、そう体長が変わらないエビにちょっかいを出すのを見て。その個体は特に積極的だったので、個体差もあるのだとは思いますが。

山口:そうしたケースもあるでしょうね。

板近:混泳相手によっては、個体差を加味することも必要かもしれませんね。特に「食べるかな? 食べないかな?」という不安のある種は。

山口:念のため注意しておくというのは、よいことだと思います。

混泳水槽でエビは隠れる? 隠れない?

板近:混泳水槽でも、エビが危険を感じていないとけっこう出てきたりしますよね。

山口:レッドビーでよく思いますね。普通、小型のエビは食べられる側だから隠れがちですが、レッドビーは大胆というか。これがなかなか不思議なところで。

板近:個体ごとに観賞しやすいですね。

山口:ええ。とても観賞に向いたエビだと思います。品種改良の歴史の中で性質も変わっていったのかな。

板近:ミナミヌマエビを生息地に見に行った時は、多くの個体が隠れていましたね。出ている個体もいましたが、隠れやすい場所のほうが圧倒的に数が多い。

山口:ガサガサでは水草やアシの根なんかをガサガサすると小さなエビは取れますね。美味しいので狙われやすいから、隠れがちになるんだと思いますよ。

板近:自然下だと捕食者も多そうです。

山口:自然下で食べられにくい魚は、水槽でもけっこう堂々としていますよね。

板近:そうですね。どのような場所に生息しているかを考えると、その生物の立ち位置が見えてきますね。

山口:しかし、今回の雑談はなかなか脱線しませんが……かえって不安になってきました。大丈夫ですかね(笑)。

板近:大丈夫だと思います(笑)。では、脱線せずに話を続けると、混泳水槽ではエビは落ち着かないケースが多いということになりますかね。ああ、でもレッドビーの話を含めるとそうでもないということになるのかな。山口さんから見て、そのあたりの温度感どうでしょう?

山口:たとえば、メダカの水槽にレッドビーを入れても普通にしていますからね。でも、それでエビが殖えるかと言うと、別の話にはなりますが。あと、ヤマトヌマエビなどもわりと堂々としていますよね。

板近:ヤマトはうちでも、魚の餌を平気な顔して確保しています。その水槽にミナミもいますが、そっちも我が物顔で歩き回ってるなぁ……。

山口:襲われなければ出てきますよね。先程の「混泳水槽でエビが落ち着くか、落ち着かないか」という質問に答えを出すなら「たいていは大丈夫だけど、一部の例外もある」と、それくらいだと思います。

板近:うちの水槽でエビがよく出てくるのは、先に挙げたようなエビを襲う可能性が高い魚がいないというのも大きいのでしょうね。

山口:ええ。そうした魚を避ければ、同じくらいの大きさの魚とは飼うことができる。ただし、先に述べたように、繁殖をメインに考えるなら魚との混泳はやめたほうがいい。

板近:親と同じサイズでも、稚エビとは全然大きさが違いますもんね。

山口:そうそう。一方で、意外と混泳水槽でも殖えちゃうこともありますね。

板近:それもありますね。

山口:チェリーシュリンプはいろいろな魚の水槽に入れていたことがあって、それでも小さなエビ(稚エビ)を見かけることはありました。でも、いずれいなくなっちゃうことが多いんですけどね、そういう飼育をしていると。

板近:うちは、さっきお話したヤマトもいる混泳水槽で、ミナミヌマエビが順調に増えてくれていて本当に嬉しいですね。

山口:それはよかったですね。

板近:その水槽は、水草や流木で魚が干渉しにくい場所が作ってあったり、混泳魚の種類も数も少なくて広さにも余裕があったりと、棲み分けしやすい条件も揃っていたので、無事繁殖に至ったのだと思います。ただ、これはもう、狙ってますよね。

山口:水草があると違いますよね。期せずして殖える。水槽に限りもあるし、調子のいい時は無理しなくてもいいですよね。

板近:最初から絶好調な感じだったので、隔離するどうか悩みながら観察を続けていました。当時は、毎日点呼してましたね。

山口:エビの点呼は大変ですね(笑)。

板近:ええ(笑)。流木の裏に行っちゃったりするので待ち時間も長く。今はもういっぱいいるので、点呼は無理ですね。

エビ同士の混泳! ビーシュリンプとチェリーシュリンプは交雑する?

板近:ここまでは魚との混泳に注目してきましたが、エビ同士の混泳はどうでしょうか?

山口:エビ同士といいますと?

板近:ビーシュリンプとチェリーシュリンプといった、異なるエビ同士の混泳ですね。

山口:大体の観賞エビであれば大丈夫だと思いますよ。一部の肉食性が強いエビでなければ襲うこともないだろうし。スジエビあたりは小さいし見た目にきれいだけれど肉食性が強いから要注意かな。

板近:交雑についてはどうでしょうか。

山口:そこですね。たしかに、交雑、つまり、別の種や別の品種同士で繁殖する可能性は気にしたほうがいいかもしれない。

板近:同じ系統のエビだと交雑の可能性がありますよね。

山口:はい、「観賞用のエビには交雑するものと交雑しないものがいる」ということをまず頭に入れておくとよいと思います。それからビー系、タイガー系、チェリー系の3つの系統を意識しておくと、より区別しやすいかもしれない。

板近:その3つの系統の関係は覚えておくとよさそうですね。どれも観賞用のエビとして人気が高いですし。

ビー系
レッドビーシュリンプ
ブラックビーシュリンプ など
タイガー系
ブラックダイヤ
レッドサンダー など
チェリー系
レッドチェリーシュリンプ
イエローチェリーシュリンプ など

山口:チェリー系は、ビー系やタイガー系とは交雑しない。でもビー系とタイガー系は交雑するから、そこから新しい品種が生まれたりしますね。ただここは、ちょっと知識をつけないとわかりづらいかもしれません。

タイガーシュリンプ
タイガーシュリンプ系の改良品種。斜めの模様が特徴的 Photo by MPJ

板近:たしかに、初心者さんは混乱するかもしれません。「このエビはどの系統に属するのかな?」とか。

山口:ええ。色や模様もいろいろありますし。

板近:それ以前に「同じ系統って何?」となってしまうかもしれませんね。

山口:それについては、金魚を思い浮かべてもらうとわかりやすいかもしれませんね。赤い金魚、黒い金魚、銀鱗の金魚……これらは色は違えど同じ金魚なので交雑します。

板近:チェリー系にも、赤、青、黒……といろいろなカラーがいて、交雑しますよね。まぁ、チェリー系も種類が多いので「これはチェリー系かな?」とか悩む時もありそうですが。

山口:本当にカラーバリエーションが多いですからね。オレンジチェリーシュリンプなどは名前からしてチェリー系であることがわかりやすいですが、名前に“チェリー”とつかないチェリー系もいますし。

オレンジチェリーシュリンプ
その名前からしてチェリー系であることがわかりやすい、オレンジチェリーシュリンプ Photo by MPJ

板近:極火蝦(ごっかえび)やルリーシュリンプなどですね。

山口:ええ。そんなときには、月刊アクアライフのシュリンプ特集(2021年3月号)なんかも役立ててもらえると嬉しいですね。

板近:あの号はチェリー系がたくさん載ってますもんね。チェリーに関する解説もありますし。

山口:そうですね。一度ここで話をまとめると、同じ系統であれば交雑する可能性は「ある」と見るのが普通なので、交雑させたくない場合は混泳させない、もしくは絶対に交雑がありえないエビ同士にするということですね。

板近:心配なら混泳させない、という考え方もいいかもしれませんね。

山口:この辺りの話は次号のアクアライフ(2021年5月号)「エビレピ!」で簡潔にわかりやすく解説しているので気になる方はそちらもご覧ください。新連載なんです。

板近:ちょうど連載が始まったんですね。

山口:ええ、タイミングがよすぎて宣伝のようですが。まあ、宣伝してはいけないわけでもないですし(笑)。

板近:(笑)。そうそう、コケ取りの代表種でもある、ヤマトヌマエビはこれらのエビと交雑しないですよね。

山口:そうですね。ヤマトヌマエビは今あげた3つの系統のどれとも交雑しません。

板近:ヤマトはまた別の系統ですもんね。ビーやチェリーは淡水で繁殖しますが、ヤマトの繁殖には汽水が必要ですし。

山口:ええ。ヤマトの飼育自体は、淡水で大丈夫なのですが。

板近:あと、ヤマトヌマエビとビーシュリンプでは体格差がありますよね。そうした組み合わせはどうでしょう? うちでは、ヤマトとミナミという体格差混泳で特に問題はおきていませんが。

山口:エビ水槽の立ち上げでヤマトヌマエビを使う方もいて、そういう方の水槽にはいつまでもヤマトヌマエビがいたりするんですね。ビーの中にヤマトヌマエビってけっこう存在感ありますが、特段問題ないようですよ。

交雑を狙うスタイルと、混泳しないスタイル

板近:少し話は戻りますが、交雑の世界は以前公開したシュリンプの名前の回も参照してもらうといいかもしれませんね。

山口:ええ。あの回では素晴らしい“ハイブリッドシュリンプ”を紹介しました。

板近:こちらは、交雑を避けるのではなく、交雑することで生み出されたエビですね。

山口:そうですね。交雑のための混泳も、エビ同士の混泳を語る上では避けて通れません。そこがまたエビの面白いところですから。

板近:ですね。エビにはいろいろな楽しみ方がある。今日のお話には、そんな要素が詰まっていた気がします。

山口:ええ。混泳しないという選択肢を含め、いろいろなスタイルがありますね。

板近:せっかくなので、“混泳しないスタイル”についても山口さんの意見をお聞かせいただいてもいいですか。水槽にエビ1種類のみという飼育をしている人も、とても多いと思うのですよね。

山口:もちろん、それもいいと思いますよ。むしろ、それがいいんじゃないですかね。増えて群れるレッドビーやチェリーシュリンプ、この光景を見たくてみんなエビを飼っているんじゃないですか。

板近:大小入り交じる様子は、本当に素敵ですもんね。

レッドビーシュリンプ
親子で集まるレッドビーシュリンプ Photo by MPJ

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