みなさんこんにちは。アクアライフWEB編集部です。
本日のお題は、発売となったばかりの月刊アクアライフ図鑑特集号(2022年1月号)より、「水槽のサイズ」に注目していきます。
魚の水槽選びにの参考になるお話もありますので、どうぞご覧ください。
最終的には人合わせになるけれど魚ありきで考えたい。
昨年の図鑑特集号との違いについてもお聞きしました!
アクアの雑談 アクアの雑談は、その名の通りアクアリウムに関する「雑談」をお届けする連載です。お題は回ごとにいろいろ! 雑談いたしますのは、月刊アクアライフ前編集長の山口 正吾(やまぐち しょうご)と、アクアライフWEB編集部の板近 代(いたちか しろ)。雑談ならではのお話を、どうぞお楽しみください。 |
二年連続! 図鑑特集号発売!
板近:2022年1月号の月刊アクアライフは図鑑特集号になるんですよね。
山口:ええ。昨年の図鑑特集号(2021年1月号)がおかげさまで大好評でしたので、これは期待に応えなくてはと張り切って作りました。今回も、熱帯魚を始め、メダカ、シュリンプ、川魚なども掲載した800種図鑑となっています。
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板近:昨年の図鑑号についてこの雑談でお聞きしたのが、ついこないだのような気がしますが、あれからもう一年経ったのですね。
山口:早いものです。
板近:図鑑特集号が2021年1月号、2022年1月号と二年連続となるわけですが、どのような違いがあるのでしょうか。
山口:掲載する種類を、前年とかぶらないよう気をつけています。
板近:それは嬉しいですね!
山口:ただ2021年と2022年で全くかぶっていないかというと、そういうわけでもなく。ごく基本的な種、たとえばネオンテトラなどですね。そうした種は今年も掲載するようにしました。
板近:それは、2022年1月号だけを購入される方のことを考えて、ということですかね。
山口:そのとおりで。今回、月刊アクアライフの図鑑特集号を初めて買ってくださる方のことを考えると、ネオンテトラのような基本的な魚が掲載されていないのは、不親切であると思いましたので。
板近:つまりは、2022年版だけでも、2021年版と合わせて読んでも、どちらでも楽しめる仕上がりにしたというわけですね。
山口:そういうことです。熱帯魚はやたらと種類が多いから、まだまだこの調子で作っていくことができるかもしれない(笑)。
大型水槽が必要かどうか分かる図鑑
板近:今回の図鑑を作っていて、何か思ったことなどはありますか?
山口:はい。今回の図鑑でも、昨年に引き続き、その種が「大型水槽が必要な種かどうか」がわかるような項目を設けたんですね。
板近:はじめての読者さんもいると思いますし、今一度、その項目について具体的に紹介してもらってよいでしょうか。
山口:掲載している種類ごとに「90cm規格水槽(幅90×高さ45×奥行き45cm 約182L)まで」で飼育できるか、それ以上の水槽が必要であるかという案内があります。
板近:解説、ありがとうございます。そこから、何か思ったことがあったのですか?
山口:ええ、水槽の大きさと魚ってけっこう大きなテーマだと思ったんです。
板近:たしかに。
山口:まず「熱帯魚」という魚はいないじゃないですか。
板近:そうですね。熱帯魚という枠の中に多種多様な魚がいます。
山口:(日本の)メダカならメダカで大きさはだいたい同じですし、金魚や錦鯉のサイズもある程度の範囲内に収まる。でも熱帯魚は大きさの幅がかなり広いですよね。
板近:2cmの魚もいれば1mの魚もいます。
山口:それだけで50倍も長さが違う。重さだったらもっと差が開く。つまりは、熱帯魚を扱う図鑑となるとそういう魚たち全てが対象なわけで。
板近:当然、魚によって水槽の大きさが異なってきますよね。
山口:そうなんです。さらに、人間側の都合もありますよね。ワンルームのマンションで暮らしている学生さんが、180cm幅の水槽なんていうのはけっこう無理がある。
板近:そのクラスになると、床の強度の話もありますもんね。
山口:魚ありきと人ありき。これが複雑に絡み合って、適合水槽が決まってくると思うんです。
人により変わる水槽選び
板近:同じ魚を飼うのでも、人によって選ぶ水槽が変わりますよね。
山口:ええ。たとえば、3cmのカラシンならS水槽(幅31.5×高さ18.5×奥行き24.5 約14L)くらいの水槽でもいいかもしれない。でもそれを60cm規格水槽(幅60×高さ36×奥行き30cm 約64L)で飼育すると、全然振る舞いが違ったりすることがある。
板近:単純に考えても、泳ぐスペースが広くなっているわけですもんね。
山口:小さい水槽の方がいい場合というのは、実際にかなり少ないはずで。だいたいは大きいほうがいい。
板近:水量が多いことのメリットは多いですよね。
山口:多いですね。ただ、そこには先ほど述べたように人の感性や生活も関わってくるし、小さい水槽には小さい水槽のよさがあったりもする。だから一概に「魚のためには大きな水槽を」と述べるのも味気ないというか……。
板近:たしかに。
山口:そんなわけで、2021年と2022年の図鑑特集号では水槽の大きさを二つに分けたんです。もっと細かく分けてもいいけれど二つにした。
板近:先ほどお話いただいた「90cm規格まで」と「90cm規格水槽以上」ですね。90cm規格水槽は180Lくらい入りますから「90cm水槽まで」と聞くと「かなり幅があるな」と感じる人もいると思うのですが、その点はどうなのでしょう。
山口:おっしゃるとおり「90cm規格水槽まで」には、60cm規格水槽も含みますしS水槽のような小型水槽も含みますし、けっこうな幅があります。
板近:ええ。
山口:この図鑑では、3cmのカラシンも20cmのカラシンも「90cm規格水槽まで」という枠に振り分けていたりするけれど、それは「(90cm規格をこえるような)巨大な水槽がなくとも飼育可能ですよ」という案内なんですね。
板近:あくまで一つの目安であり、最終的に何cmの水槽を選択するかは、自分で考えて選んでくださいということですね。
山口:平たく言えばそうですね。私たちが提示したことは「3cmのテトラだから90cm以下、つまりは60cm規格水槽を選んでもいいですよ」というところで。その先は読み手の感性や生活によって判断してくださいと、そんな案内なんです。
板近:あ、もしかしてそれ……図鑑だからこそですか。
山口:勘が鋭いですね(笑)。図鑑は一種類徹底飼育講座(月刊アクアライフ連載)みたいに、細かく情報を伝えられない。一種ごとの解説が短いですから。
板近:注書きなども、そんなに書けないと。
山口:ええ。この図鑑号では1種類につき70文字くらいですからね。たとえば「S水槽でも飼えるけど、60cm規格水槽で飼育する場合に比べると注意が必要」というような場合だってある。
板近:水量が少ないから魚の数を多くしすぎない、水質が悪化しやすいから水換えをマメに、などですね。
山口:はい。
板近:たしかに、狭い方を基準にするより広い方を基準にしたほうが、安全である場合は多いと思います。
山口:小さな魚は小さな水槽で飼えるけれど「小さな魚は小さな水槽でいい」というメッセージになる可能性がある。それは、水槽の大きさを示す上でどうかと思った。
板近:だからこそ「必要な水槽のサイズが分かる」ではなく「大型水槽が必要な種かどうかがわかる」という仕様にしたというわけですね。
「想像より大きくなった」と困らないように
山口:大型水槽が必要かどうかに重きを置いたのは、もう一つ理由があって。だいたい、水槽サイズで困るときって「想像よりも魚が大きくなりすぎた」ときじゃないですか。
板近:たしかに、「90cm規格水槽まで」と示されているネオンテトラを180cm幅の水槽で群泳させることは出来ても、逆は成立しないですもんね。1mの魚を90cm規格水槽で飼育することはできませんし。
山口:ですね。なので「え、この魚こんなに大きくなるの?」みたいなことで困らないよう、このような基準にしたというのもあります。180cm幅の水槽とかになると、物理的に置けない人もぐっと増えるから。
板近:幅、重量、維持費など、いろいろな理由がありますね。
山口:90cm規格水槽も部屋に置くものとしてみたらそこそこサイズありますから、誰でも置けるわけではないとは思います。ただ、ギリギリ一人で設置できる大きさだし、床の強度的に置ける物件も多いですから、基準としてはいいラインではないかと。
板近:また、90cm規格水槽は普及もしているから、水槽本体や関連器具が手に入りやすいのもいいですね。
一種類徹底飼育講座こぼれ話
山口:そうそう、さきほど話に出た一種類徹底飼育講座。ああした「がっつり文字数使って解説できる記事」なんかでも、水槽のサイズについての話し合いがあったりもするんですよね。
板近:それは著者さんとの間でですか?
山口:ええ、例えば「この魚は30cmキューブ(幅30×高さ30×奥行き30cm 約27L)くらいの水槽で飼える!」という意見があったり、「いやいや最低60cm規格はほしい」という話が出たり。
板近:食い違うときもあるのですね。
山口:著者さんと編集でそれぞれ経験から話していたりするので「以前に30cmキューブで飼った時よりも60cm規格水槽で飼ったときの方が、断然生き生きしていたし綺麗だった」というようなエピソードも出たりして。
板近:そういうディスカッションの中、あの解説が作られていくのですね。
山口:ええ。本当に水槽の大きさって、いろいろな視点から決まっていくものなのだなと思います。
海外では容量、日本は幅?
板近:ちょっと話は変わりますが、水槽のサイズに関して前々から思っていたことがありまして……今話してもよいでしょうか?
山口:さて、なんでしょう。
板近:海外の動画とかを見ていると、水槽の大きさについて、リットルだとかガロンだとか、水量で示すことがあるような気がするんですよね。もちろんメートルとかの長さで示してある時もあるのですが、水量表記が目立つことが多いなと。
山口:たしかにそれはありますね。
板近:対して、日本では、本日私と山口さんも話していたように60cmだとか、90cmだとか、水槽の幅で語ることが多い気がするんです。規格水槽のイメージが定着しているというのもあるのかもしれませんが。この点、山口さんはどう思われますか。
山口:本質的には、水量で語るほうが正確ではありますよね。一言に90cm幅の水槽と言っても、90cm規格水槽と90cmスリム水槽(規格水槽に比べ奥行きが短く設計された水槽)では、水量がぜんぜん違うから。
板近:水量は、水質にも影響しやすい大事な要素ですよね。
山口:ええ。ただ、水槽の幅、高さ、奥行き……つまりは形状もとても重要で。水槽の形で見え方も変わるし、特に幅は鑑賞に影響しやすいから意識する人も多いのではないでしょうか。
板近:魚に合わせたスペースを確保するために、水槽の形状が重要になることもありますね。たとえば「底物だから底面積を多めに」など。
山口:そうそう。縦に長さのある魚であるアルタムエンゼルの飼育なんかでは、水深が必要であったり。大型魚飼育では、魚がターンできるよう奥行きを重視したりもしますね。
板近:形状と水量、どちらからも考えていくと、よりよい水槽選びができますね。
本日の話をふりかえり……
山口:板近さんは、本日の話を振り返って何か思うことはありましたか。
板近:水槽の大きさを決める時に「余裕」を意識することはとても大切なことなのだなと、改めて感じました。
山口:基本的なことですが、大切なことですね。
板近:この「余裕」は水槽のサイズの話だけでなく、ろ過の余裕だったり、飼育する魚の数を「自分でちゃんと世話できる範囲に収める」という余裕であったり、いろいろなところに通づる本当に大切な話だなと。
山口:ええ。
板近:水槽は、飼育の土台でもありますから、そうしたいろいろな余裕の基礎のような存在だと思ったんです。山口さんは、何かありますでしょうか?
山口:今回の図鑑特集号を見て、種によっては水量が多めに感じる人も多いと思うんです。つまりは、ネオンテトラにも「90cm規格水槽まで」と書いてあるので。
板近:そう感じられる方も、いると思います。
山口:ただ、ネオンテトラに対して「大きな水槽でもいい」という発想を持つことって、なかなかないと思うんですね。「小さな水槽で飼える」とは思っても。
板近:後者のほうが多いかもしれませんね。
山口:なので、今回の図鑑が「ネオンテトラを大きな水槽で飼ってもいいんだ!」という発想をするきっかけにでもなれば、嬉しいなと思いますよ。
板近:魚とのよりよい生活を目指すきっかけにもなりそうです。
山口:そうであったら嬉しいですね。置ける水槽のサイズは人それぞれではありますが、その中でストレスを感じにくいであろう種を選んでもらえればなと、そんな思いも込めています。2022年1月号、どうぞよろしくお願いいたします。
アクアライフ2022年1月号の巻頭特集は2022年アクアリウム超図鑑800 特大両面ポスターカレンダー付き