みなさんこんにちは。
アクアライフWEB編集部です。
「熱帯魚の飼育をはじめたい」
そんな相談を受けた時、あなたならどう答えますか?
本日は、過去の経験も振り返りつつ、そんなお題について考えてみたいと思います。
相談にはズバッと答えるタイプではありません。
相談を受けたことをきっかけに、自分がはじめたばかりの頃の思い出がよみがえる。そんな嬉しさもありました。
アクアの雑談 アクアの雑談は、その名の通りアクアリウムに関する「雑談」をお届けする連載です。お題は回ごとにいろいろ! 雑談いたしますのは、月刊アクアライフ前編集長の山口 正吾(やまぐち しょうご)と、アクアライフWEB編集部の板近 代(いたちか しろ)。雑談ならではのお話を、どうぞお楽しみください。 |
熱帯魚相談と込み入った話
板近:今回のお題は「熱帯魚をはじめたいと相談を受けたとき、どう答える?」ですね。
山口:板近さんはそうした相談を受けたことはありますか?
板近:そこまで多いわけではありませんが、何度か。
山口:どうでした、そのときは。困ったとか、楽しかったとか。
板近:昔は相談されると、ついつい熱くなって喋り過ぎちゃうところがありまして。多分、熱帯魚の話ができるのが嬉しくて。今思うと相手にとっては迷惑な時もあったのかなぁ……と反省したりもしています。
山口:あまり他人との接点ないですよね、この趣味は。
板近:そうですね。私も長いこと、一人で楽しんでいました。
山口:その熱くなって喋りすぎてしまうというのは、込み入った話をしすぎたということですか?
板近:そうですそうです。込み入りすぎちゃった感じが。
山口:実際にどんな相談を受けましたか?
板近:そうですね、具体例を出すならば「熱帯魚飼ってみたいんだけど」というようなざっくりした話からはじまり、いろいろ進めていく中で出てきた疑問に答えていきました。その方は相談の前に自分で調べたりもしていましたし、私は時々聞かれて答えるという形で。
山口:相談するだけでなく、自分で調べることもできる人であったと。
板近:そうですね、まったく魚の飼育経験のない人ではあったのですが、ずいぶん前から、気になってネットで調べたりもしていたようで。熱帯魚屋さんに何度か一緒に行ったこともありましたし。
山口:つまり「いよいよ、はじめよう!」と思った時に相談を受けたわけですか。頭ではわかってるけど、ちょっと不安もあると。
板近:はい、まさにそのタイミングでした。そういえば、その人の場合は込み入りすぎた話をしても喜んでもらえましたね(笑)。しばらくすると、向こうからも込み入った話が出たり。
山口:それはお二人の関係がよかったのかもしれませんね。波長があった。そういう時って、お互いが楽しいですよね。
板近:ええ、今思い返しても、とても楽しい思い出ですね。熱帯魚に対するテンションも近かったのかもしれません。
山口:結局その方はスタートしましたか?
板近:はい。今では複数の水槽を持っていますね。
山口:おお、素晴らしい。教え方がよかったんでしょうね、導き方というか。
板近:ありがとうございます。でも、最初から熱量が高い人だったので、私がいなくても調べ上げてよいかたちをつくっていたんじゃないかなとも思います。
山口:それでもうまく乗せてくれる方がいるのといないのでは違いますよ。想像ですが……今は熱帯魚仲間とか?
板近:ええ、そうですね。熱帯魚仲間です。元からの友人でもあるので、正確には「熱帯魚仲間でもある」ですかね。一緒にお店に行く機会などがすごく増えましたよ。
山口:いいじゃないですか。なんでもそうですけれど仲間がいると楽しいですよ、やっぱり。
板近:単純に魚の話で盛り上がるとか楽しいですよね。
山口:ですね。その方には具体的にどんな相談を受けましたか。
板近:記憶によく残っているのは、どのサイズではじめるかですね。水槽のサイズを。
山口:ああ、そこですね。気になりますよね、はじめてなら。
板近:はい、結果「小型魚をいろいろ飼いたい」という話でしたので、スペースに余裕をもたせて60cm水槽になったのですが、最初はもう少し小さな水槽が候補でした。
山口:先方にも理解があったのではないですか。小さいのを大きくするって、けっこう大きな変更ですよね。
板近:そう思います。60cm水槽って実際使うと使いやすいけど、初見だと大きく見える人も多いでしょうし。
山口:特に今は小さな水槽が充実していますし。
板近:そうですね、ほんとにいい感じの小型水槽が多くて、またサイズも豊富だなぁと思います。
山口:ただ、60cm水槽を選んでもらえたら、その後も提案がしやすいですよね。エンゼルも飼えるし、ディスカスはきついかもしれないけど、まぁ無理なわけでもないし。
板近:過密になりにくいだけでなく、魚の大きさの選択肢もひろがりますよね。水量に余裕があるぶん、水質も安定しやすいし。
熱帯魚の幅広さ
山口:相談は先輩が後輩にアドバイスする形になるかと思うのですが、熱帯魚は幅が広いからけっこう難しいですよね。
板近:そうですね。経験者と言っても、飼育したことない魚もたくさんいるわけですし。
山口:グッピー専門の人がアロワナについて教えるのもどこか違いますし。まあ、基礎的な部分は共通していますが。
板近:種類ごとの注意点や、ポイントなんかもあったりしますもんね。同じような方法で飼育できる魚も多いけれど、全てが当てはまるわけではない。
山口:結局、お金が絡むことだからお店を紹介するという方法もあると思うんですよね。「よくわからない魚について相談されたぞ」「設備のこともよくわからないし、お店を紹介するか」みたいな。
板近:そうですね、私もお店を紹介したことがありますね。お店であれば「この魚がほしい」となったその場で、具体的なことを相談できますし。
山口:そうなんですよ。今はSNSのグループなどもありますし、そういったところでも聞いたりもするのかな。
板近:SNSは今すごく発達してますし、情報交換も盛んなイメージがありますね。
山口:あれはいいですね。のぞいているとオフで会ったりもしているケースもあるし。楽しそうです。
板近:そういう意味では、熱帯魚の相談をできる機会が増えているとも言えるのかもしれませんね。
熱量の背中を押すだけ
山口:実は私は、あまりプライベートでは相談を受けたことはないんです。
板近:そうなんですね、意外です。
山口:私の周りの皆さんが、私の仕事を理解してくれているのかもしれないなぁ。私が本腰を入れるとなると、それこそ仕事に近づいてしまうから。つまりは割と幅広く情報を集めて、その方にフィットする形で提示すると。まあ、単に「頼りにならなそう」と思われているのかもしれませんが(笑)。
板近:そんなそんな、頼りにならなそうだなんてことはないと思いますよ(笑)。
山口:それでも簡単な相談なら受けたことはあります。
板近:簡単な相談ですか。
山口:簡単というのもちょっと違うかな。そのときは先方にかなり熱量がある状態で、私は「そうですね、悪くないですよ」くらいの相槌を打てばいいという具合で。
板近:相談は、相手の熱量もかなり関係してきますよね。
山口:間違っていればそれなりに指摘したりしますが、熱量を削ぐことになる言い方はできないし。ほんと、背中を押してあげられればそれでいいかな、というケースも多い。
板近:初めての立ち上げのための買い物について行ったことがあるのですが、たしかに、山口さんの言うように「悪くないと思うよ」とか「いいと思うよ」と、背中を押すようなかんじで答えることが多かったですね。
山口:相談しているとはいえ、興味を持った時点でもうイメージがあるんですよね。もちろん、ピラルクーを飼いたいと言われれば「ちょっと待って」と言いますよ。
板近:たしかにそれは、ちょっと待ってってなりますね。
考える楽しさ
山口:アクアに限らず、考えることも趣味の楽しさですよね。
板近:ですね。悩んでいるからといって、嫌な時間というわけでもない。むしろそれが醍醐味のひとつだったりする。
山口:そうそう。相談を受けたときは、そういう時間を大切にしてほしいとも思いますね。その人の楽しい時間を奪うことはできないし。
板近:はい。私が込み入った話をしすぎないよう気をつけるようになったのは、その時間を奪ってしまわないように……という思いもあります。
山口:はじめこそ思いっきり考えてほしいんですよね。
板近:そうですね。最初ならではの楽しみもありますし。
山口:実は、私が「あまり事細かに相談に答えない方がいいな」と思うようになった経験があって。私を釣りの世界に導いてくれた方が、まさにそうなんです。細かいことを言わない。でも、必要なときには手を差し伸べてくれる。
板近:私もカメラのことで、そういった経験があります。
山口:初めはそれに気づかなかったんだけれど、途中で「ああ、この人はこんなところまで考えてくれていたのか」と思える出来事が何度もあって。
板近:あとから気がつくってありますね。
山口:釣りにしてもやる気がないと続かないから、やる気を削がないようにとても頭を使われていたのだなと。考える楽しみを奪わないことも含めて。
板近:私もいろいろ自分で考える楽しさを、残してもらっていた気がします。言葉で伝えられたことが全てではないんだなぁ……って本当に思います。
山口:買い物だって、ある程度は教えてくれるけれど「あとは好みだよ」と。そうすることで、考えることが楽しくなるし。その人とはまた別のアプローチも見つけられるかもしれないし。
板近:それもあると思います。アクアリウムも「自分でやりたい」って部分が大きいですよね。最初は手伝ってもらって立ち上げたとしても、その後自分だけでチャレンジしてみたくなったりもするでしょうし。
山口:個人の領域ですから誰かに押し付けられるものでもない。
板近:はい、飼いたい魚も人により違いますし。
山口:同じコリドラス好きだって十人十色ですよ。ロングノーズが好きな人もいれば、ショートノーズが好きな人もいる。
板近:ええ。友人と熱帯魚店に行っても、同じ魚に目が行くときもあれば、ぜんぜん違う魚に行くときもある。
山口:そうそう。熱量が高い人ほど、自分なりの理想をお持ちであろうし。
板近:なんだかんだ、管理方法も違ったりして。お互いよい刺激になったりもしますよね。
山口:ですね、はじめは一方通行だった情報が、相互になるとそこはもう違うステージです。
板近:ええ、友人が私が飼ったことのない魚を飼育して、それを見せてもらったり。
山口:教えている方からすれば「ライバルに育つかもしれない」という不安もない趣味ですし。ああ、あるかな。同じ分野のコレクターに育つと、いずれライバルになるかもしれない(笑)。
相談を受けたことで得るもの
板近:あと、相談を受けたことで、自分自身が成長できたなというところがありますね。
山口:それはありますね。
板近:ええ、単純に飼育の基礎の再確認ができたり、その過程で新しいグッズを見つけれたり。どう説明したらいいか悩んだりすることからも、学ぶことがありますし。
山口:確実にあると思いますよ。たとえば相談に答えながら「これは正しいよな」などと考えたりする。その作業がとても自分の身になっていると思いますし。
板近:「これは正しいよな」と思うことってありますね。
山口:ちょうどいいエピソードがあって。大昔に、ラジオか雑誌かで見聞きした話で、アクアリウムの話でもないのですが。
板近:はい。
山口:あるサッカーのクラブチームで、小学1年生から6年生まで一緒に練習するプログラムを取り入れたそうなんですよ。この方法だと、1年生が上手くなるのは想像しやすいですよね。身近にお手本ができるのだし、上の子に追いつこう、負けまいとすれば、その子は伸びる。でも、それは小さい子だけにメリットがあるわけではなくて。
板近:上級生にもあるんですね。
山口:ええ。下の子の面倒を見ると上手くなるらしいんですよ。この話には説得力を感じたし、自分を振り返ってみると確かにそう思えることもあったんですよね。
板近:はい。相談を受けることで成長に繋がる部分って、すごくありますよね。そしてその成長が、そのまま趣味の充実につながったりもする。
山口:そうそう。最低でも、相手の身になって考えるわけで。それは今までにないシュミレーションになりますよね。
板近:ですね。あと、相談に答えることができた自分というのも、嬉しいのかもしれません。
山口:あるかもですね。
板近:喜んでもらえて、その後、すごく熱帯魚を楽しんでいることを伝えてくれたりとか。
山口:私の場合は、読者さんかなぁ。教えたというつもりはないのですが、雑誌を楽しんでもらえた結果として「趣味が充実した」そういう報告をいただけると、とても嬉しいですね。それこそが私たちの役目というか、存在意義というか。
板近:私もブログの読者さんから反応をいただけると、とても嬉しいです。
山口:毎回のように話に出ますが、趣味を楽しむお手伝いができればと思っていますよ。もう、そこだけ。
板近:はい、アクアライフブログも、そうなれるようがんばりたいですね。
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