みなさんこんにちは。

アクアライフWEB編集部です。

 

「熱帯魚の飼育は大変ですか?」

実際に飼育を経験されている方であれば、この答えを自ら見つけることができるかと思いますが、未経験の方はそうはいきません。

 

熱帯魚を飼ってみたいけど、大変そうだな……。

大変すぎて、続かなかったらどうしよう……。

 

本日はそんな「大変」について、いろいろと掘り下げていきましたので、どうぞご覧ください!

山口 正吾山口 正吾

大変と思われない趣味としなければならない、などと思いましたよ。

板近 代板近 代

鉢植えへの水やりが、ちょっと多くて大変だったあの日。でもあの日は、がっつり体調崩していたので、水やりじゃなく体調不良に対して大変だと思っていたんだなぁ……なんて、思い返していました。季節の変わり目ですし、みなさんもお気をつけて。

アクアの雑談

アクアの雑談は、その名の通りアクアリウムに関する「雑談」をお届けする連載です。お題は回ごとにいろいろ! 雑談いたしますのは、月刊アクアライフ前編集長の山口 正吾(やまぐち しょうご)と、アクアライフWEB編集部の板近 代(いたちか しろ)。雑談ならではのお話を、どうぞお楽しみください。

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熱帯魚の飼育は大変? 簡単?

板近:本日のお題は「熱帯魚の飼育は大変なのか?」でお願いします。

山口:ああ、そこですか。

板近:過去に、熱帯魚の飼育をはじめたいと相談を受けたことが何度かあったのですが、「熱帯魚=大変」というイメージを持っている方もいて。

山口:なるほど。

板近:熱帯魚って海外の生き物だし、種類も多いし器具も多いし……難しく感じてしまう人が多いのかもしれないなぁと。魚を飼育したことない人からするとさらに。

山口:うーん、そうなんでしょうね。ただ、これに関して私の中では、大昔に答えが出ていまして。

板近:そうなのですか。

山口:話しちゃっていいですか。

板近:はい、お願いします!

山口:「飼育の手間<喜び」であれば、大変じゃないんです。だから、そこは個人の問題というべきで。

板近:喜びが手間を大変と感じさせないというのは、私もよく思います。

山口:だから、私たち編集部ができることは、飼育の手間を低減する提案や、喜びを感じてもらえるような提案をすることであって。

板近:はい。そうありたいですね。

山口:以前、私の家には来客が多いというお話をしたじゃないですか。

板近:ええ。水槽の置き場所についてお話した回ですね。

山口:皆、「大変なんでしょ?」みたいなことを言うらしいんです。「らしい」と言うのは、私は家人からそれを伝え聞いているので。

板近:そういうイメージを持たれる方が多いのですね。

山口:そういう時には決まって、私は「60cm水槽一本なら、週に30分くらい手をかければきれいに維持できるのになぁ」と思うんですね。

板近:たしかに、60cm水槽ってそんなにあつかいにくいサイズじゃないんですよね。そこそこサイズがあるので、大変そうに見えてしまう人も多いかもしれませんが。

60cm水槽
60cm水槽は、水量がそれなりにあるおかげで水質が安定しやすいというメリットもある Photo by T.Ishiwata  協力:アクアフォレスト新宿店

山口:イヌを飼っている人は、たとえ一頭でも、イヌに関わっている時間はそれより長いはずで。

板近:たしかに。

山口:中型犬以上なら散歩だけでも1日1〜2時間は必要でしょうし。小型犬でも、餌をあげたり、トイレシートを変えたり、遊んであげたりでけっこう時間は費やします。でも私自身、イヌが好きなので、その時間が苦痛と思ったことはないんです。1日何時間でも遊んであげられる。というか、「遊んでもらっている」くらいの気持ちであって。

板近:好きな相手、好きなことにかかる手間って苦痛に感じないものですよね。

山口:そうそう。だから、大変というのは苦痛に感じているからであって。そのときは熱帯魚の飼育に、手間以上の喜びを感じていないんですよね。

板近:水換えなんかは、手間のひとつとして語られることが多いですよね。そういえば先日水換えをした時に、小さな喜びがあって妙に嬉しくなってしまって。27℃の水に温かさを感じて「もうすぐ冬だなぁ」と。雑談の水換え回でもこんな話をしましたね(笑)。

山口:それに好きな人と一緒にいる時間だって苦痛ではないし。……いつか苦痛に思う時が来るにせよ(笑)。

板近:「好き」という気持ちにも動きがあったりして、すごく高まって幸せに満ち溢れる好きもあれば、緩やかで穏やかな好きがあったりもしますよね。どれもよい時間ですが。

山口:ええ。そういう時間を増やすために日々過ごしているわけで、苦痛を味わいたいためではない。

板近:はい。そもそも趣味自体が楽しむためにはじめるものですもんね。

山口:そうですよね。そしてその楽しみというのは、個人によって異なっていて。私なんかは持久力がないので、ジョギングや山登りを趣味としている方の話は理解できませんが、それは私が理解できないだけで、その人にとっての喜びがあるわけで。

板近:人それぞれの趣味ってありますよね。アクアリウムも万人に受けるわけではない。アクアリウムという枠の中でも、人により興味がむくところが違いますし。

山口:本当に人それぞれですよね。

板近:そういう部分もあって、私が過去に飼育相談を受けたときは、大変かどうかは置いといて「だいたいこのくらいの手間がかかるよ」とか「最初はこういうことに気をつけたほうがいいよ」という話をしていましたね。それを聞いて、大変かどうかを考えてもらうと。

山口:そうなんですよね。あまり事細かに話しても「もういいや、お腹いっぱい」ってなっちゃう。だから私も、最初はあたりさわりのない話をして、興味を増すようであったら、徐々に込み入った話をするようにしています。

板近:私はつい、事細かに話しすぎてしまうところがあったので、途中からすごく気をつけるようになりました。ついつい、熱帯魚の話だと熱くなってしまうのか、語りすぎてしまうところがありまして。そのせいで「大変そうだ」と思わせてしまったんじゃないかなと……。

山口:(笑)。私は、どちらかというと、逆ですかね。好きな人は放っておいてもやってくれるし。あ、これはもちろんプライベートな話ですよ。雑誌では全身全霊でアクアリウムの魅力を語っているつもりですし、喜びが大きくなるようなお手伝いをしているつもりです。

板近:月刊アクアライフの中に詰まっている情報は、本当にすごい量ですよね。

山口:そうですね。いろいろな情報を詰め込んでいると思います。

板近:私自身も、飼育の参考書として使わせてもらうことが今まで何度もありました。

山口:ありがとうございます。

板近:魚の種類によっては、ネット上に情報が少なかったりするじゃないですか。そういった時に月刊アクアライフに頼ることも多く。

山口:そうですね。ネットとの棲み分けは難しい問題ですが、まあ、そういう時にもお役に立てていることはあると思います。

板近:例えば連載の一種類徹底飼育講座とか。ピンポイントで1種類解説してくれているから、すごくありがたい。

一種類徹底飼育講座
一種類徹底飼育講座は月刊アクアライフにて連載中(2020年11月号より)

山口:あの連載も長いですね。30年くらいやってるかな。

板近:2015年以降の掲載種はアクアライフブログでも一覧化していますが、今後また追加していきたいですね。

山口:ええ、あのページもアクセス多いみたいですね。

板近:はい。この一覧は、バックナンバーから情報を探しやすいようにという目的で提案させていただいたものなのですが、実は私自身がほしかったという裏話もあり(笑)。同じように思ってくれた人が多かったのですかね。嬉しいです。

山口:いいコラムですよね。

板近:そうですね、いいコラムですね。

知ることで軽減される大変さ

板近:熱帯魚の飼育って「知ってる、知らない」が大きく影響するところってあるじゃないですか。

山口:それにつきますね。「きれいだなあ」だけじゃ長く続かないと思います。

板近:はい。基礎的なところだと、カルキ抜きの存在とか、ある程度水量が多いほうが安定しやすいという話とか。

山口:はい。

板近:熱帯魚との出会い方はいろいろありますし、そういう情報の存在を知らないまま飼育をはじめる人も多いのではないかなと。もちろんしっかり調べている方も多いと思うのですが。

山口:なるほど。

板近:たとえば「水道水=人間が飲めるほどきれいな水=魚も嬉しい」と思ってしまっているとかですね。

山口:ああ、そういうところですね。

板近:はい、そういう方って、気持ちとしては魚のために水道水を使っているわけじゃないですか。

山口:あ、そこは大切かも。

板近:でも、そのせいで「大変」な目にあってしまうこともある。

山口:魚の気持ちにはなっているんですよね。でも間違っている。

板近:はい。カルキ抜きの必要性を知らず、水道水が魚にとってよいものだと信じてしまっている。人のお風呂も水道水使いますから、ありえなくもない勘違いだと思うんです。

山口:誤った情報を基にしたことで大変に。そんなものかもしれないなぁ。

板近:アクアリウムって、水合わせとか、水作りとか、pHとか……知ってるだけでリスクを減らせることって多いと思うんですよね。

山口:そうですね。基本をさらっておけば、後は応用で。

板近:応用も基礎を知らないとよくわからないことが多いですもんね。ある程度経験積むと、雰囲気でわかることもありますし。

山口:はい。

板近:でも経験がないと、どこまで勉強すればいいかわからない……というところもあると思うんですよ。調べてみると、いろいろな情報が出てきたりしますし。熱帯魚の飼育はケースバイケースなところもありますから、「正解がひとつではないこともある」ということを知らないと、混乱もしやすいのかなと。

山口:なるほど。本当は……といえば大げさですけれど、初心者本など複数のテキストを読んで、そこから浮かび上がる要素を気にしておけば。大体のことは対応できると思います。

板近:今の「そこから浮かび上がる要素」というのは、見事な表現だなと思いました。いろいろな情報を見ていると、なんとなく大切なことが見えてきて、そこからすごく理解が深まったりしますもんね。

山口:ただ、それは大人になってからはじめた人向けの話でもあって。小さい頃から金魚を飼っていたとか、そういう経験のある人は、そこは意識しなくても大丈夫であったりする。親御さんに教えてもらったこともあるだろうし。

板近:私も小さな頃から魚を飼育していましたね。だからこそ、飼育経験のない方から質問された時に、どの程度説明していいか悩んだのかなぁ……なんて思います。

山口:ええ。小さな頃からやっている人が感覚でやっているところも、初めたばかりの人はその塩梅がわからず苦労することもあるでしょうし。

板近:感覚的な部分を伝えるのは、なかなか難しいことでもありますよね。

山口:経験のある人は、小さな魚の儚さなども知っていますよね。生き物はいつか死んでしまうということを、自然と理解するようになる。

板近:飼育するということは、生き物の死に立ち会うことでもありますもんね。最後まで責任持って飼育するということは、そういうことですし。

山口:命あるものは必ず消えてなくなるということですね。

板近:はい。その「生きているものはいつか死ぬ」というところが、ある意味熱帯魚の難しいところなのかなとも思います。

山口:ああ、そうですか。

板近:さっき話した「ある程度情報を知らずに飼育すると大変な目に合うかも」という話あるじゃないですか。熱帯魚の場合は、その結果が魚の病気だったり死につながってしまうことがある。

山口:失敗のひとつですよね、魚の不調は。

板近:はい、みんなその魚を元気に飼育したくて飼育をはじめるわけで。

山口:ですね。

板近:だから、熱帯魚というかペットの飼育は、事前知識が大事なのかなと思うんですよね。気づいたときには遅かったという状況を避けるために。

山口:なるほど。

板近:手に入れて、後からゆっくり学んでいけばいいものもたくさんあるじゃないですか。熱帯魚はそれがやりづらいというか。

山口:私は衝動買いを否定しないタイプで。買い物は基本衝動ですから。いいと思いますよ、よく知らないで買ったとしても。泥縄で学んでいくことは悪いことではない。もちろん、学ばないのはよくないけれど。

板近:私も熱帯魚には衝動買いしたくなる魅力があると思いますし、今ふりかえると「あれは衝動買いだったな」という経験はあります。そこから学んだこともありますし。

山口:きちんと最後まで飼おうと思ったら、だいたいどんな魚でも飼えるでしょうし。今はアリゲーターガーも入手できないし、普通に売られている魚で飼育が困難なものなんて、そうそういないですから。ちょっと板近さんと意見が違っちゃいましたが。

板近:いえいえ。私も「飼いはじめた後に知った」ということが、たくさんあります。さっきの「事前知識が大事」という話には、私自身の理想も入っているのだと思います。失敗しない自分でありたいという理想ですね。

山口:私は「習うより慣れろ」という段階が、熱帯魚はだいぶ早くからあると思っていて。頭で理解しただけではダメで、実際に触って得るものが大きいという。

板近:たしかに、やってみないとわからないことはたくさんありますね。触らないと身につかないことも。私自身も、そういった過去の飼育歴や失敗があるからこそ「今言えること」があるのだと思います。今まで全てを気をつけて、確実な飼育ができたのかと問われると、違うと思いますし。

山口:やはり、夏の金魚すくい的な要素は強くて。気軽に買って、そこから楽しさを含めて、いろいろと学んでいく。何でもかんでも初めから完璧に、というのは土台無理な話で。

板近:はい、完璧って無理なんですよね。完璧でありたいと思っていても、思わぬところで全然足りなかったりする。昔より知識も経験も積んだけど、今でも、自分の未熟を感じる場面がたくさんあります。

山口:大人になってはじめた人は、コスト意識もあるだろうし、失敗しないようにきちんと準備や勉強した上ではじめたい、そんな気持ちにもなるかと思います。それでも完璧は無理というか、やらないとわからない部分はある。

板近:そうですね。私も子どもの頃と今とでは、感覚が違うところがあります。変わってない部分もありつつ。

山口:たとえば、板近さんと私とでも差はあると思いますし。

板近:はい。

山口:完璧だと思っていても、うまくいかないことも多いし。状態が悪い魚を買ってしまったら、それまでの話であるし。運に左右される部分もある。

板近:そうですね、実は病気を持っているけど「まだ症状が出ていない」なんてこともありますもんね。

山口:だから、経験を積むしかないし、経験を積むことで、いろいろと楽になっていくと。

板近:そうですね。たとえば、白点病の対処なんかは、昔に比べると上手くなったなぁと思います。出る確率も減ったし、対応も早くなったし。

山口:そういう実感は嬉しいものですよね。

板近:そうですね。その技術の背景には、自宅で白点病にさせてしまった魚たちがいるわけで。直接恩返しはできないけれど……このへんの話は私の中でまだうまく言葉にできないですね。

美しく維持する大変さ

山口:熱帯魚が大変と言われるひとつの要素として、美しく維持できないというのがあると思うんですよね。

板近:ああ、それはありますね。魚を健康に飼育するのと、水槽の見た目は別というか。

山口:だいたい、はじめて一ヶ月くらいでコケまみれになって。

板近:でも魚は元気って状況ありますもんね(笑)。

山口:コケが出るのは、ろ過ができあがってないとか、餌を与えすぎたとかいろいろな理由があると思いますが、それで心が折れる人は多いと思う。でも、セット初期はそんなもので。ガラスはきれいにすればいいだけだし。コケはこまめにとっていけばいい。

板近:環境が落ち着いたら、コケが自然に消えていくということもありますもんね。

山口:ええ、手をかけていればそのうちきれいになるということさえ知っていれば、心が折れることもないと思うんですよね。

板近:そこも経験と知識ですね。

山口:そうそう。「そのうちなんとかなる」と思える。その心持ちが大切で。

板近:私もそういう経験ありますね。まさにコケの話で……今思えば大した量じゃないのに、すごく気にしていたんですね。コケのせいで水草の生育が悪くなったらどうしようとか。

山口:大体、最初はきれいにできませんよ。そこで、いろいろなコケ抑制の商品を試してもいいし、そこから自分に向いたものや方法を選べるようになる。

板近:まさに経験ですね。知ってれば「大変ではない」ことなんだけど、知らないと「大変なこと」に思えてしまう。

山口:ビギナーの頃は、毎日のように発見があるだろうし、また緊張もしているでしょう。そんなときにちょっとコケが生えた、くらいでもショックを受けるのかもしれませんが。

板近:そこで四苦八苦したからこそ身につく技もあるということですね。

山口:そうですね。経験も知識もどちらも大切と。対策方法を発見する喜びもあると思いますし。

板近:たしかに。熱帯魚の飼育は時には大変なこともあるだろうけど……「大変=悪いこと、つらいこと」ばかりではないですよね。手間がかかるからこそ、楽しいところも多大にあるでしょうし。

山口:世の中、そんなに簡単なことばかりではなくて、ましてやアクアリウムは生き物相手の趣味だから、不確定なことが多い。それでも水に手を入れることを楽しんでもらえれば、きっとうまく飼えるようになりますよ。構えすぎてしまってアクアリウムをはじめることに躊躇する、そんな状況にある人が一人でも減ってくれたらいいと思いますね。

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