新年あけましておめでとうございます。

アクアライフWEB編集部です。

 

2022年、初のアクアの雑談のお題は「新着(しんちゃく)」です。

月刊アクアライフの新着コーナーの話を中心に、アクアの世界における新着についていろいろと紐解いていきます。

 

今年もアクアの雑談、どうぞよろしくお願いいたします!

山口 正吾山口 正吾

しばらく追っていると楽しくなる分野です。

板近 代板近 代

これだけ多くの魚が知られた今でも新着の魚たちが来てくれる。本当にすごいことですね。

アクアの雑談

アクアの雑談は、その名の通りアクアリウムに関する「雑談」をお届けする連載です。お題は回ごとにいろいろ! 雑談いたしますのは、月刊アクアライフ前編集長の山口 正吾(やまぐち しょうご)と、アクアライフWEB編集部の板近 代(いたちか しろ)。雑談ならではのお話を、どうぞお楽しみください。

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新年あけましておめでとうございます

板近:みなさん、新年あけましておめでとうございます! 今年もアクアライフブログをどうぞよろしくお願いいたします!

山口:よろしくお願いいたします。

板近:山口さんは、年末年始どうでしたか。

山口:この年末年始といえば、やはり、今開催中のフォトコンの作品を見て過ごせたことですよね。日々作品の投稿があって、Twitterを見るのがとても楽しく。

板近:私も見てました! リアルタイムで投稿が増えていくのが嬉しいんですよね。

山口:まだ募集期間が終わっていないですし、詳細な感想は言えませんが、今回も素晴らしい作品がたくさん投稿されています。気合を入れて審査をさせていただきたいと思っています。

板近:はい! 私も気合を入れて審査させていただきます! その……フォトコンテストのことで、一ついいですか?

山口:はい。なんでしょう。

板近:今回は、リツイートキャンペーンも開催させてもらってるじゃないですか。その説明を書いた画像なんですが「フォトコンテスト」と書くべきところが「フォコンテスト」になっていたんですよね……すいません。

山口:そうでしたか。私も何度かチェックしましたが、見落としていました。これは校正した私にも責任があるので、申し訳ないことです。ただ、まあ、案内を見てくれれば意味は伝わるかなと(笑)。

板近:ええ。すでにキャンペーンにご参加いただいていますし、フォコンテスト画像はそのまま残させていただきます。

山口:そうですね。

板近:というわけで、引き続きフォトコンテストよろしくお願いいたします。

山口:お願いいたします。

新年のお題は「新着」

板近:さて、新年一発目のアクアの雑談。お題は何にしましょうね。

山口:昨年は、黒豆に似ているという理由で砂利をこじつけたんですよね。

黒い砂利
昨年の砂利  Photo by S.Yamaguchi

板近:あけましておめでとうご砂利ます(笑)。

山口:あれは苦しさがありましたね。なんで新年早々駄洒落で攻めたのか、今になってもよくわかりません。

板近:今年もよい駄洒落がありますか。

山口:駄洒落というほどではありませんが、新年ということで「新着」なんてお題はどうでしょう。

板近:新着というと、魚や水草の新着ですか。

山口:ええ。雑誌(月刊アクアライフ)のコーナーで言うと「アクアフィーチャー」ですね。この新着という概念が、意外とわかりにくいかもなぁと思い、ここで解説させてもらおうかなと。

新着魚
月刊アクアライフ「アクアフィーチャー」より

板近:雑誌のコーナーを紐解く。

山口:それに加えて、新着魚についての解説もさせていただいたらなと。なのでアクアフィーチャーに馴染みのない方でも楽しんでいただけるかなと思います。

板近:それは面白そうですね。あ、一応雑誌の話を掘り下げるということで、恒例の前置きをさせていただきますね。

山口:はい。

板近:私、板近は、アクアライフ“WEB”編集部に社外から参加させていただいているスタッフなのですね。なので、雑誌の方は自分が関わった記事以外はノータッチなんです。今話に出たアクアフィーチャーに関しては一度も関わったことがないので、毎月発売後に読むという、読者さんと完全に同じ状態でしか接したことがありません。

山口:板近さんには私がお願いして、WEBのほうへご協力いただいている形です。このあたり説明しておかないと、今日の話は「なんで編集部の人なのに知らないの?」と勘違いさせてしまうかもしれず。

板近:はい。私は「アクアライフ」という枠で言うと、かなり限定的な部分でのスタッフで。なので今日も気になることは、いろいろ質問させていただこうと思います!

山口:お願いします。特に今日は、問屋さんとかショップさんとの話も出てくると思いますから、この前置きが効いてくると思いますよ。

板近:私は問屋さんやショップさんとのお仕事はしていないですもんね。なんだか今日のお題は、聞く前からドキドキしますね。

新着は難しいコーナー!?

山口:さて、雑誌の話から初めさせていただきますが、板近さんはアクアフィーチャーを初めて見た時どう思いました?

板近:初見の印象は覚えていないのですが、危険なコーナーだなとは思っていますね。

山口:危険といいますと?

板近:あのコーナーは生で見たいと思っても、なかなか見られないような魚が出てくるじゃないですか。なので「うう、見てみたい……」とジタバタすることになりかねないなと。

山口:なるほど。たしかに、日本全国の新着を扱うコーナーですから近所のショップで見られるとも限りません。見に行っても、すでに売れてしまっていたり。新着は数が少なかったり、一匹だけの輸入であったりすることもざらにあるから。

アルビノハイフィンブルーバックキャット
“一点もの”として輸入されたアルビノハイフィンブルーバックキャット 2016年8月号掲載 Photo by N.Hashimoto

板近:逆を言えば、そういう魚の写真が見れるありがたいコーナーでもあるんですけどね。山口さんは読者時代にはどんな風にあのコーナーを見ていましたか。

山口:実は私は、自分には縁が遠いコーナーと思っていたんですね。だからあまり目を通さなかった。

板近:おお、それはまた衝撃発言ですね!

山口:嘘を付くわけにはいきませんからね。

板近:なぜ、そう思っていたのでしょう。

山口:先程話していたように、多くのショップに安価で並ぶ魚はあのコーナーにはあまり出ないですよね。

板近:ええ。

山口:だから、郊外に住む金欠学生アクアリストである自分には縁がないと思っていた。それに写真に添えられている解説もちょっと難しいから、ビギナーであった自分には読み解けない部分もあった。

板近:私もあのコーナーは、昔よりも、今になって見る方が面白い気がしますね。そこには、解説に対する理解度の変化もあるのかもしれない。

山口:経験を積んだ人だからこそ「なるほどな」と思うようなことも書いてありますからね。

板近:今でも、新着コーナー、つまりは情報の新しさが一つのポイントでもあるコーナーなのに、雑誌の発売直後ではなく後からゆっくり眺めたりする時があるんですよね。そんな感じで、アクアフィーチャーと私の間には、不思議な距離感がある気がします。

山口:「飼育する機会はまずないから……」みたいな距離感ですよね。ある意味それが、あのコーナーの価値の一つでもあるんですが。新しい魚や珍しい魚を紹介するのが主旨ですから。

板近:完全に無関係ではないけれど、手の届かない魚が中心だから、自分の飼育と関連付けにくいと。

山口:そうそう。それにそもそも論として、特にコーナーの説明などもないから「新着? なにそれ?」みたいに思っていたところもあった。

板近:たしかに、シンプルなページです。

山口:「生物で新着って? え? どういうこと?」という感じ。服や車ならわかるけど「生き物だよ?」と。

板近:その生物はアクアライフで紹介される以前から、地球上に存在していたわけですもんね。「新作の生物です by地球」というわけではないというか。

山口:まさにそういう感じです(笑)。読者さんの中にも同じように感じている人もいるかもしれませんので、本日は新着とはなんぞやというところをお話できればなと思った次第で。

板近:私もそれは聞きたいですね。なんだかんだアクアフィーチャーは眺めるだけで終わってしまっているので。

山口:一度つかめると奥が深いというかなかなか面白みのあるコーナーなので、ぜひその楽しさも伝えたいなと思っていますよ。

板近:よろしくお願いいたします。

新着とはなんぞや

山口:ではまず「新着とはなんぞや」というところからいきましょうか。

板近:はい!

山口:新着というのは、読んで字の如しではあるんですね。新しく着いた、つまりは日本に初輸入された、それまで日本では見られなかったという魚です。

板近:私もそういう認識でした。よかった、間違ってなくて(笑)。

山口:(笑)。ただ、アクアフィーチャーは月刊誌の一コーナーであるし、アクアリウムシーンとのリンクも大切だから必ずしも初めてであるわけではないんです。

板近:ページにも「今月の新着・注目魚、水草」と書かれていますもんね。

山口:ロゴのところに小さく書いてありますね。

アクアフィーチャー
ロゴに添えられた「今月の新着・注目魚、水草」

板近:新着だけでなく、注目の魚なども掲載されたりもするコーナーなんですよね。

山口:ええ。たとえば、2019年の7月号かな、アクアフィーチャーで紹介したハイフェソブリコン・エイリョス。

ハイフェソブリコン・エイリョス
ハイフェソブリコン・エイリョス Photo by MPJ

板近:黒い体にヒレの赤いカラシンですね。

山口:これはアクアフィーチャーで紹介する以前からチラホラ見る魚であって、なんなら月刊アクアライフの特集記事などにも掲載していたんです。

板近:その後、2019年にアクアフィーチャーに載るような理由があったと。

山口:2019年にハイフェソブリコン・エイリョスの本格的な輸入があったんです。つまりはまとまった数の輸入があった。

板近:アクアフィーチャーの解説にも「今回はある程度まとまった数」と、書いてありましたね。

山口:はい、まさにそれが理由であったんです。こうしたケースはけっこうあって、たとえば「○年ぶりの輸入」などもアクアフィーチャーに掲載されることがあります。

板近:「久しぶりに日本に来ました!」ってたしかに注目度高いですね。私も「来てくれないかなぁ」と待っている魚がいます。

多角的な視点から判断する

山口:それと、初めてということ。それについても補足が必要かもしれない。

板近:はて、なんでしょう。

山口:雑誌を作っている我々も、「新着魚で間違いなはい、けれど前に来たことのある可能性もゼロではない」と思うことはあるんですね。

板近:それはまた、興味深いお話ですね。

山口:そうですか。

板近:確認なのですが、今おっしゃっていた話は、○年ぶりに日本に来た魚とかではなく、アクアフィーチャーで完全な新着として紹介されている魚の話であっていますよね?

山口:ええ。もちろん、我々も雑誌作りのプロですし創刊から数えて40年分の新着の資料が会社にあるわけだから、それなりに過去の新着の情報は頭に入っているつもりです。ですから、そんなに外すことはないとは思うのですが。

板近:それでも、100%初であると言い切れないと思うことがあるわけですか。

山口:時にあります。

板近:なぜ、そういうふうに思うのでしょうか。

山口:板近さんはなぜだと思いますか。ここは新着を扱ったことのない板近さんの視点で考えてもらうほうが、面白いかもしれない。

板近:そうですね……たとえば、他の魚に混じってひっそり入ってきていた……なんていう可能性なども考えると言い切れないということでしょうか。

山口:ええ、そういうことです。自然のものだし、絶対に過去に輸入されたことがない、とは言い切れない。

板近:たしかに。混じりぬきなんて言葉もある世界ですもんね。

山口:それに過去の新着が私どものネットワークに引っ掛からなかったケースだってあるかもしれない。

板近:日本にはたくさんのショップさんがありますし、そういうこともありそうです。

山口:ですから、多角的に見て、つまりはショップさんや問屋さんとの情報交換、あるいは過去の資料との照合の上で「これは初めて」とか「これは数年ぶりだ」という魚を選んで紹介をしています。

板近:プロの方たちが考え、過去に照らし合わせていった上で、その魚が「新着魚」や「注目魚」と判断されるわけですね。

山口:ええ、そういうことです。様々なプロのフィルターを通しているので、確実性の高い情報はお届けできているかと思います。

かつての新着へ

板近:新着といえば、月刊アクアライフのバックナンバーを見ていると、今ではわりと見られるようになった魚が「ついにやってきた!」みたいに書かれていたりするのを見かけたりもしますよね。

山口:長くやっていますからね。特に新着コーナーはかなり前からありますし。

板近:私はアルティスピノーサの新着記事(月刊アクアライフ1987年6月号)を昨年見てすごくドキドキしました。好きな魚なんですが、新着当時の熱は知らず。

アルティスピノーサ新着
アルティスピノーサの新着情報が掲載された1987年6月号アクアフィーチャー

山口:バックナンバーをコレクションしていると、そういう面白さもあると思います。

板近:雑誌は、当時新着を体験した人の手で書かれた文などが読めますし。

山口:写真だって、当時の写真になりますからね。

板近:初めて日本に来てくれた個体の写真ですもんね。

山口:スカーレットジェムやアベニーパファーだってかつては新着だった。インペリアルゼブラプレコやコリドラス・ステルバイも。

アベニーパファー Photo by N.Hashimoto

板近:どれも、とても人気のある魚ですよね。そして、今となってはそこまで入手が難しいわけでもない。

山口:魚にインパクトがあって需要が見込めるとなれば続けて輸入されるし、養殖されたりもして一般化することが往々にしてあるんです。

板近:以前山口さんが話していたコバルトブルーラミレジィのように「まとまった数が新着として来た」なんてこともあるんですよね。やはり、こうしたケースは珍しいですか?

山口:最初からまとまった数が来るのは、あまりないですね。海外の改良品種くらいじゃないかな。

板近:そうしたケースを除けば、基本は少数、もしくは一匹。そのあとのアクアリウムシーンの反応により、輸入や養殖が盛んになったりすることもあると。

山口:ええ。だから、意外とあのコーナーはマニアのためだけのものではないんですよね。

板近:いずれは自分の水槽で飼育することができるかもしれない。今一般的となっている魚も、みんな新着魚だった時があるわけですもんね。

山口:あのネオンテトラだって、かつては新着魚だったわけですからね。

板近:全て新着魚であった。ここからは、いろいろと学べることがありそうです。

山口:一つ補足させていただくと、輸入や養殖が盛んになる魚以外、つまりは珍しいままでいる魚にも価値があるということです。

板近:ええ。珍しい魚の価値については以前この雑談でもお話しましたね。

山口:そんな感覚を持ちながらアクアフィーチャーを見ていると「この魚は流行りそうだなぁ」などとわかったりもするし、逆に「これは本当にごく一部の人だけが反応する魚だろうなぁ」などと思ったりもして。読むのがより楽しくなるんですよ。

板近:なるほどですね。私はアクアフィーチャーはつい、自分の好きなかんじの魚に目が行きがちでそういう想像をしたことはなかったのですが……今度やってみようかな。

山口:ぜひぜひ。そうそう、次回のアクアフィーチャー(月刊アクアライフ2022年2月号)には、板近さんの好きそうな魚が……。どうぞお楽しみに。

板近:おお、それは楽しみです! ええっと、今日は6日で……ああ、まだ発売日までちょっとありますね。それまでヤキモキします(笑)。この雑談が公開される頃には、発売してるかな?

未記載の新着魚

山口:新着といえば、まだ記載されていない魚が輸入されることがあるじゃないですか。

板近:ありますね。あ、ここで一度「記載」について説明してもらってよいでしょうか。知らない読者さんもいると思いますし。

山口:そうですね。記載というのは生物学的に名前がつけられることで。「この魚はこれまで知られていなかった新種です」という論文が出て、それで種として認められる。

板近:ええ。

山口:たとえば、記載された種としてコリドラス・アエネウスを例にあげるならば、生物学上の名前、つまり学名は「Corydoras aeneus」となる。学名は二命名で属と種で成り立つから、この魚はコリドラス属のアエネウスという種であることを示しているわけです。

赤コリ
Corydoras aeneus Photo by N.Hashimoto

板近:未記載種の場合はその「aeneus」の部分がないのですよね。

山口:はい。未記載種であると属名の次に「sp.」と書いて「Corydoras sp.」というふうになります。これはコリドラス属の一種であると示している。まあ、属すら見当のつかないこともありますが、ひとまずそれは置いておきます。

板近:「Corydoras sp.」はコリドラスエスピーと読むんですよね。

山口:そうですね。補足するとsp.は未記載種などにあてられる記号であって、特定の種を示しているわけではありません。一口にsp.といっても別々の魚を包括していることもある。

板近:それぞれ明らかに違う姿をした5匹の別種であろうコリドラスがいたとして、その5匹が全て未記載種であれば、みんなCorydoras sp.となりますね。

ニューアドルフォイブラックアエネウス

オガワエ
上から、ニューアドルフォイ、ブラックアエネウス(Photo by N.Hashimoto)、オガワエ(Photo by T.Ishiwata)。これらは全てCorydoras sp.である

山口:そういうことです。

板近:その未記載種がアクアリウムの世界に「新着」として登場することもある。

山口:ええ。sp.扱いのまま流通して、その後に学名が決まったという例がいくつもあって。

板近:いくつか例を挙げてもらえますでしょうか。

山口:有名なところではインペリアルゼブラプレコとか、ドレープフィンバルブやスカーレットジェムなどもそうじゃないかな。

板近:インペリアルゼブラプレコの学名であるHypancistrus zebraというのは、新着時点ではつけられていなかった。たしかに、こういうパターンは意外とある気がしますね。

インペリアルゼブラプレコ
インペリアルゼブラプレコ Photo by N.Hashimoto

山口:ええ。そんな感じで、新着魚を見るときは、学名にも注目してみると面白いかもですね。

板近:また、「sp.」な魚が流通するときの名前も面白いですよね。

山口:そのまま「○○sp.」として流通することもあるし、別の名前、つまり流通名がつけられたりもしますね。先のスカーレットジェムだって、学名はついていなかったけれど、初めからスカーレットジェムという名前で流通していた。

スカーレットジェム
スカーレットジェム Photo by N.Hashimoto

板近:そのあたりを少し知っているだけでも、魚について調べるのが面白くなりますよね。「え? この魚有名なのにsp.だったの?」みたいな。

山口:有名だけどsp.、アクアリウムあるあるですね。そうそう、未記載のまま流通した魚といえばインカ50が印象に残っていますね、個人的には。

板近:インカ50といえば、アピストの。

インカ50
インカ50 Photo by N.Hashimoto

山口:あれはうちのスタッフも同行した調査で見つけられた新種で、その後に記載がされた。学名はバエンスヒだったかな(Apistogramma baenschi)。アクアライフにもゆかりのある魚なんです。

板近:掲載号なども教えてもらえれば。

山口:月刊アクアライフ2002年6月号ですね。その時は南米にいたスタッフから「どんでもないアピストが採れたからページを押さえておいてくれ」と連絡があって。興奮しましたね。

板近:新着の魚には、それを発見した人や世に伝えた人の物語もあるわけですね。

改良品種がアクアフィーチャーにあまり登場しないのはなぜ?

山口:アクアフィーチャーですが、あのコーナーのワイルドと改良品種の比率について、何か思うところはありませんか。

板近:ワイルドのほうが多いですよね。

山口:グッピーなんてあんなに品種改良が進んでいるのに、新着としてアクアフィーチャーに出ることは稀です。私が入社してから20年以上経ちますが、両手で数えられるくらいじゃないかな。もうちょっとあるか。なんにせよ人気の割には少ない。

板近:それはなぜでしょう。

山口:まず、グッピーは(月刊アクアライフに)途切れずに連載があるので、そちらで紹介するのが雑誌的には自然だということもあるんですね。

丹頂ブラックタキシード
アクアフィーチャーで紹介された数少ない改良グッピーである、丹頂ブラックタキシード(台湾産)2017年8月号掲載 Photo by N.Hashimoto

板近:「まず」ということは他にも理由があるということですか?

山口:ええ。多分、アクアフィーチャーには「外国からきたと」いう条件が強くかかっていて。

板近:グッピーは国内で品種改良が盛んだから。

山口:その他にも、改良品種は新着というより「新しく作り出された」つまりは「新作」という感もあり、それで新着に載りづらいのかもしれない。

板近:海外から来た改良品種は時折載っていますね。

山口:ええ。同じ改良品種でも海外発は載せやすいんですよね。先にもお話ししたように。

板近:2021年の10月号にブルーゼブラタイラントパラダイスフィッシュが載ってましたね。

ブルーゼブラタイラントパラダイスフィッシュ
ブルーゼブラタイラントパラダイスフィッシュ  Photo by N.Hashimoto

山口:あれは中国のブリーダーにより作出された改良品種ですね。

板近:まさに海外からの新作となるわけですね。

山口:そうそう、他に有名なのに新着にあまり登場しない魚といえばアジアアロワナがありますよね。

板近:そういえば見ませんね。

山口:アジアアロワナは養殖されている魚だけれど改良品種かと聞かれると、ちょっと答えが難しい存在でもあります。

板近:なるほどです。

山口:ブラッシュアップはされているけれど、まだまだワイルド然としているし。

板近:えっと……では、なぜ載らないのでしょう。

山口:アジアアロワナは個体で語られがちだからかもしれません。

板近:たしかに、個体ごとに語られるイメージがありますね。だから新着として紹介しづらい……?

山口:「アロワナファンが喜ぶよい個体が来た」というのは新着として扱いにくいところがある。それであると毎号のように載せなくてはならなくなるし。

板近:そういうことですか!

山口:数年前に黒いアジアアロワナが来た時には新着に掲載(月刊アクアライフ2016年3月号)されましたが、それを合わせてもアクアフィーチャーに載ったのはこの20数年で片手で事足りると思う。

黒いアジアアロワナ 
黒いアジアアロワナ Photo by N.Hashimoto

板近:アクアリウムの世界にはいろいろな形の「新」があるのですね。

山口:そうですね。アクアフィーチャーに載らないからといって、新しくないというわけではない。こういう視点も持ってもらえるとより面白いと思います。

板近:なぜその魚がアクアフィーチャーに載ったのか考えるのも、面白そうですね。

ショップの新着情報

山口:アクアリストに身近な新着といえばショップさん発の新着情報がありますよね。

板近:ありますね。

山口:ショップさんの新着情報は私にとっても刺激になるし勉強にもなって。

板近:今はSNSやホームページなどで新着情報を発信するお店がとても多いですし。

山口:もちろん、お店単位の新着と雑誌の新着では情報の性格に違いがありますが、ある特定の分野が得意なショップさんの新着は私なんかが見ても「え? そうなんだ」と感心することも多く。

板近:実際にショップさんが発信している情報から知ることって多いですよね。

山口:アクアリウムをやっていれば、お店経由で初めて知る魚はとても多いんじゃないかな。

板近:やはり「この魚初めて見た」という感動は代えがたいものがありますね。

山口:何年アクアリストをやっていても、感動がありますね。

板近:また、新着魚って、自分の脳内に情報を持ってなかったりするじゃないですか。事前に海外サイトで見たことがあった、なんて時もあるとは思いますが。

山口:予備知識がない時も多いでしょうね。

板近:そんな時に、新着紹介に添えられている解説などは道標としてとてもありがたいものですよね。

山口:ちょっとした情報がヒントになったりもしますからね。

私の新着

板近:アクアフィーチャーに書かれている解説は「私の新着」について考えるときの助けにもなりそうですね。

山口:私の新着……ですか?

板近:すいません、説明なしに思いついた言葉を言ってしまいました(笑)。

山口:(笑)

板近:私の新着というのはつまり、初輸入であるとかは関係なく、自分は今まで知らなかった、飼ったことのない魚という意味で。たとえば、ネオンテトラを飼ったことのない人からしたら、ネオンテトラは「私の新着」なわけじゃないですか。

山口:なるほど。特に初心者さんからすると、ネオンテトラがアクアリウムの世界ではメジャーな存在だとしても、知らないことのほうが多いわけですもんね。

ネオンテオトラ
ネオンテトラ Photo by N.Hashimoto

板近:はい。そんな時にアクアフィーチャーを見てみると、魚の特徴の見方だとか、お初な情報への接し方だとかを知るヒントになるのではないかなと、ふと思いまして。

山口:実際あのコーナーには、初めて触れ合う魚へのコメントが書かれているわけですからね。

板近:新着ということは、つまりは飼育データが蓄積されていない魚ということでもありますもんね。それを自分に置き換えてみる、と。

山口:そう考えるとアクアフィーチャーは(自分の中に)情報がない、情報が少ない魚に対してどう接していくか、それを考えるきっかけにもなるかもしれません。せっかくなので、板近さんからなにか例を挙げてもらってよいですか?

板近:そうですね……たとえば2021年の11月号のハイフェソブリコン・“マカパエンシス”の解説に「環境に慣れればグッと美しさが増すだろう」と書いてあるじゃないですか。ここから「魚の色は変わるかもしれない」だとか「環境で色を引き出せるかもしれない」だとか、そういう発想に繋がったりする人もいるのではないかな、と思います。

山口:たしかに、魚の色の変化は、経験がない人からすると「新しい情報」かもしれませんね。

板近:ええ、私も初めて知ったときは感動しましたし。そんな感じで、知らない魚にどう向き合うかのヒントが、あのコーナーにはあるのかなぁ……なんて、思ったりもしました。思いつきで話して申し訳ないのですが。

山口:いえいえ。

板近:ちょっとこの後、アクアフィーチャーを何ヶ月分か見直してみますね。なんだか新しい発見ができそうな気がします。

山口:またなにか見つけたら、ぜひ教えて下さい。

板近:はい!

アクアの雑談