みなさんこんにちは。

アクアライフWEB編集部です。

 

本日のお題はエアリフト!

エアリフトとは、投げ込み式フィルターやスポンジフィルター、底面式フィルターなどで採用されている「水を動かす」方法です。

本日はそんなエアリフトについて、メリットデメリットなどを語ります!

山口 正吾山口 正吾

スタートでありゴールでもあるという感じのフィルターかな。

板近 代板近 代

今までで最も使ったエアリフト式は、投げ込み式だと思います。

アクアの雑談

アクアの雑談は、その名の通りアクアリウムに関する「雑談」をお届けする連載です。お題は回ごとにいろいろ! 雑談いたしますのは、株式会社エムピージェー出版部長で月刊アクアライフ前編集長の山口 正吾(やまぐち しょうご)と、アクアライフWEB編集部に社外からの協力スタッフとして参加している板近 代(いたちか しろ)。雑談ならではのお話を、どうぞお楽しみください。

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エアリフトって何?

板近:前回の雑談では上部式フィルターについてお話させていただきましたが、この回もたくさんの方に読んでいただいたようで。ありがとうございます。

山口:ありがとうございます。まあ、フィルターはアクアリストが悩むところでもあるでしょうし、こだわるところでもありますよね。

板近:ええ。せっかくなので、今回もフィルターの話で行きますか?

山口:そうですね。なにがいいだろうな。

板近:前回は私が「上部式で!」と選ばせていただきましたので、今回は山口さんセレクトでどうでしょう。

山口:わかりました。うーん、前回とは少し路線を変えてエアリフトで動くフィルターはいかがでしょうか。

板近:いいですね! であるとまずは、エアリフトとは何かという解説からですかね。

山口:たしかに、エアリフトという言葉に馴染みがない人もいるかもしれませんね。

板近:ええ。

山口:エアリフトというのは、まあ、ブクブクですね。エアポンプで空気を送り込む。その空気が水中を上昇する働きで水を動かすと。読んで字の如くエアリフト(空気が持ち上げる)ですね。

エアリフト
パイプの中で空気が上昇することで水が持ち上げられる。写真の例では水面から5cmほどの高さに出水口がある Photo by MPJ

板近:その空気の動きで動作させるフィルターを「エアリフト式」なんて呼びますよね。

山口:混乱しやすいのは、このエアリフト式を採用しているフィルターが多種多様であるという部分ですね。

板近:投げ込み式フィルターやスポンジフィルター、底面式フィルターなどがありますね。でも、「底面式フィルターは全てエアリフト式なのか?」と言われると、そうではなかったりするところがややこしいかもですね。

山口:底面式にはエアリフト式ではなく、水中ポンプで水を動かすタイプがありますからね。あくまでエアリフト式は「底面式フィルターに“よく”採用されている方式」なだけで。


底面式における、エアリフト式(上)と水中ポンプ式(下)の構造の違い

エアリフト式を動かすためのエアポンプ&パーツたち

エアポンプ
エアポンプの見た目は様々で、さらには製造の終わったモデルが中古品として販売されていることもあるためコレクション性も高い。使用感バリバリのポンプは歴戦の勇士のようでかっこいいですよ! Photo by S.Itachika

板近:エアリフト式の相棒となるエアポンプ選びも面白いですよね。

山口:エアポンプもたくさん種類があるから悩みますよね。

板近:勢いが調整できる機能の有無であったり、静音性能であったり。

エアポンプ
エアポンプ本体に送気量調整機能がついたタイプ。逆流防止のため(後述)に高い位置に設置している Photo by S.Itachika

山口:その製品のパワー、つまりは、送気の力も重要なポイントです。

板近:それと、エアリフト式を使う時は意外とエアチューブのストックが重要かなと思っていて。新規で設置するときや設置の仕方を変えるときに、エアチューブの長さが足りないと困る。

山口:足りない時は接続パーツ使ってつないだりしますよね。

エアチューブ接続
プラ製のエアチューブ接続パーツ Photo by MPJ

板近:ああ、しますね! あと、私は本体のメンテがしやすいように、フィルター本体近くのところでチューブを切って、間にパーツを入れてつなぎ直したりしていましたね。そうすると掃除のときにそこで切り離せるので。

山口:それはなかなかポジティブなつなぎ方ですね。そういう理由があるならいいんだけど、そうでないときに「致し方なく」短いチューブをつなぐとちょっと惨めな気持ちになっちゃうんだよなぁ。つぎはぎみたいで。

板近:無駄遣いしていないという点ではいいですよね(笑)。

山口:まあ、エアチューブくらい、ドーンと買い置きしておきたい気持ちもあります(笑)。

エアリフト式のメリット・デメリット

山口:では今度は、エアリフト式のメリットデメリットについて話していきましょうか。

板近:上部式の回と同じく、まずはデメリットからでいいですかね。

山口:そうですね。

板近:ではでは、山口さんからお願いいたします!

エアリフト式のデメリット

山口:まずは、エアポンプの振動を挙げたいかな。私が寝室に水槽を置かないようになったのは、この振動に原因があると思う。アクアリウムには、他にも音が出る器具などはあるんだけど、あの音は妙に気になるんだよなぁ。

板近:なんというかエアポンプって、一回気になりだすとずっと気になってしまうタイプの音ですよね。

山口:そうそう。もちろん、だいぶ静かなエアポンプもあるし、気にならない人もいると思いますが。

板近:私も一時は寝る部屋に何個もエアポンプを置いていたんですね。それで、普段は平気だったんですが、妙に「気になるなぁ」なんて日があったりして、布団にもぐった記憶がありますね(笑)。

山口:日によって気になったりならなかったりというのもあるかも。板近さんの思うデメリットはありますか。

板近:空気を送るので、水面での泡の破裂による水ハネが気になる人はいるかなと思いますね。

山口:なるほど。汽水や海水は塩ダレもあるし、水面で泡が破裂するのは歓迎しない人もいるかもですね。いや、けっこう渋いところをつきますね。

板近:破裂が繰り返されちゃうから、意外と気になる結果になっちゃったりする時があるんですよね。

山口:あの泡の破裂は、ガラスブタの受けのパーツと水槽が作る小さな隙間をつたって、水漏れを起こすこともありますよね。毛細管現象で。

エアリフト
破裂する泡と、フタ受け(写真左の透明のパーツ)が近くにある場合は水漏れに注意しよう! Photo by MPJ

板近:私はそれは経験したことなかったですね。

山口:普通にあることなので、気になる人は一度チェックしたほうがいいかもです。他にデメリットとしては、何があるかな。ああ、水流が弱くなりやすいことは挙げられるかも。エアポンプの力が弱いと特に。

板近:ろ材の目詰まりとかですかね。

山口:そうそう。あとは投げ込み式だと、パーツのエアストーンが詰まったりもする。そういう時にてきめんに送気の量が落ちるから。まあ、そうなったらフィルター(ろ材)自体のメンテナンスの時期ということなのだけれど。

板近:送気の量が目に見えるという点では、わかりやすくてよいですよね。

山口:そうですね。案外エアストーンが詰まるんで、予備を持っておくといいかも。

板近:交換で対処したほうがいい時もありますもんね。

山口:予備があれば安心ですからね。板近さんは、他になにか思いつくデメリットはありますか?

板近:うーん……あ、本体が水中にあることをデメリットだと感じてしまった、なんてことがありました。これは「そこにモノがある」という、物理的な意味で。

山口:エアリフト式のフィルターはだいたい小型ですが、それでも気になりますか?

板近:いえ、気になった経験はほんとに限られていて。なんというか、すっごくピンポイントな話になってしまうのですがよいでしょうか(笑)。

山口:どうぞ(笑)。

板近:では……ちょっと前に投げ込み式をやめて上部式に交換した水槽がありまして。その水槽は真ん中で仕切ってあって、それぞれのスペース(幅約30cm)にちょっと大きめサイズ(幅約9cm)の投げ込み式を入れている状態だったんですね。

山口:ええ。

板近:そういう状態だったので、フィルターの裏の死角が大きかったんです。それで、その水槽には小さな底物、魚種で言うとロックドラスがいて。時々、その死角にいたりするんですよね。そこを確認しようとすると、水槽の設置場所の関係で狭い隙間に頭を突っ込んで横から覗くしかなく。

ロックドラス
ロックドラス。全長3~4cmほどの小さなナマズである Photo by N.Hashimoto

山口:ああ、投げ込み式をなくすことで、どこにいるかわかりやすいように。

板近:そうですそうです! 細かい話ですが、隠れ家に冷凍アカムシを狙って落としやすい水槽にしたかったんです。また、小型ナマズの数も増やしたかったので「それぞれに隠れ家がありつつも見通しのよい状態」を作りたいなぁと。

山口:そういえば、私も魚の撮影をする時にフィルターが写り込んだりすることもあるし、意外と存在感は大きいかもですね。ろ過槽の大きさに比して目立つというか。

写り込み
投げ込み式フィルター(左後ろの白いキラキラしたもの)が写り込んだ例。写り込んだらだめというわけではないが「魚と自然物のみ」というようなテーマで撮る場合は邪魔になってしまうことがある Photo by MPJ

板近:あの存在感が可愛かったりするので、嫌いというわけではないのですけどね。

山口:(笑)。あと、デメリットしては……曝気(ばっき。水を空気にさらす)がありますよね。

板近:上部式フィルターの回にも出た話ですね。

山口:そうそう。曝気するとどうしても、水草育成に使用する炭酸ガスが抜けやすくなってしまうという話ですよね。ただこれは、効率が悪いというだけの話で。完全に無駄になるわけではないんですよね。

板近:そうおっしゃっていましたね。

山口:実は今、実験的にエアリフトのフィルターを稼働した水槽で炭酸ガスの添加を行なっているのですが、添加しない水槽よりは水草が大きく育っているんですよ。

板近:おお。

山口:もちろん、炭酸ガス添加に向いたフィルターの水槽に比べれば弱いけれど、ちゃんと効果は感じられますよ。他になにかデメリットはありますか?

板近:デメリットというより注意点ですが、エアポンプが止まったときに水がエアチューブの中を逆流しないようにしないといけないですよね。

山口:そうそうあることではないけれど、だからこそエアポンプを水面より高く設置したり、逆流防止弁を挟むなどしてちゃんと対策しておきたいところですね。

逆流防止弁
逆流防止弁は、取り付ける際に“向き”を間違うと機能しないので注意したい Photo by S.Itachika

エアリフト式のメリット

板近:今度はメリットですね。

山口:ですね。板近さん何かありますか?

板近:エアリフト式には設置がめちゃくちゃ楽なフィルターが多いじゃないですか。これはすごくいいなと思っていて。

山口:投げ込み式とかスポンジフィルターとか。

板近:そうですそうです。すぐに使えるから、ストックしておくといろいろな場面で活躍できる。

山口:急な水槽設置、たとえば薬浴水槽とかにもいいですよね。プラケで簡易の飼育をしたりするときにも便利に使える。

エアリフト
プラケの簡易飼育で活躍するエアリフト式フィルター。向かって右のプラケは薬浴中 Photo by MPJ

板近:私も今まで何度か「持っててよかった」と思った場面がありましたね。

山口:プラケとの相性もいいですし。

板近:さっき例に出た投げ込み式やスポンジは水槽内に置いたり、吸盤でくっつけるだけでいいですもんね。

山口:そうそう。また、安い製品が多いから数持ちやすいんですよね。私も今使っていないのだけで、10個くらいあるかもしれない。使ってるのでも10個くらいはあるから。

板近:私も二桁ありますね。

山口:先のプラケの話とも関係する話だけれど、エアリフト式は水槽の形状や大きさに左右されにくいのがいいんですよね。だからこそストックとして適しているというか。

板近:水槽内から水槽外へ伸びるものがエアチューブだけですもんね。柔らかいし、細いから小さな隙間を通せるし。

山口:めちゃくちゃ融通が効きますよね。プラケでもいいし、ガラスやアクリルの水槽にも使えるし、枠のありなしにも左右されない。もちろん水槽の大きさにも。

板近:ほんと、融通効きますよねぇ。

山口:大きな水槽でろ過力不足だなと思ったら、複数個使えばいいわけだから。もちろん、動かすフィルターの数が増えればエアポンプにもパワーが求められるけど。

板近:逆を言えばエアポンプのパワーの面さえクリアできれば、簡単にフィルターの数を増やせるということでもありますよね。

山口:そうそう。

板近:また、単体でのろ過力が高い製品も多いですし。

山口:シンプルに見えて力あったりしますからね。そういえば、うちの90cm水槽も投げ込み式とスポンジだけで維持していますよ。

板近:私も奥行きが45cmある60cm水槽を、投げ込み二台で維持していましたね。

山口:何センチ水槽だってかまわないというのはいいですよね。もちろん、適したフィルターは魚の量や大きさ、餌の量や水換えのペースなどの条件によって変わるから、一概にはいえないけれど。エアリフト式が、様々な状況で活躍できるフィルターであることは間違いないと思いますよ。

板近:あと、さきほどデメリットで出た「曝気」もメリットになりますよね。

山口:ええ。いつも曝気しているから魚には安心ですよね。

板近:酸欠とかになりにくいし。

山口:ですね。そういう意味では、「初心者向け金魚飼育セット」みたいなものの中に、エアリフトで動くフィルターが入ってるのは親切だと思う。リスクが小さいですから。

板近:たしかに!

山口:あとなにかなぁ、繰り返しになっちゃうけど、パワフルなエアポンプとちょっとしたパーツがあれば、エアチューブを分岐してたくさんのフィルターを同時稼働させることができるというのはでかいですよね。水槽の数が多いショップで、エアリフト式のフィルターの採用が多いのも頷けます。

エアチューブ分岐
エアチューブ分岐
エアチューブの分岐パーツ二種。小さなレバーで分岐先それぞれへの送気量の調整を行う Photo by MPJ

板近:エアリフトで管理されているショップさんって、多いですよね。

山口:水作エイトを大磯砂に埋めたりして。あれがプロっぽくてかっこいいんですよね。

板近:かっこいいですよねぇ。あと、エアリフトだと、スポンジフィルターがディスカス水槽に入っているのもかっこいい。

山口:ベアタンクで。

板近:そうですそうです!

山口:あのスタイルは渋いですよね。大人の趣味という感じがする。アピスト水槽のスポンジフィルターなんかもかっこいいんだよなぁ。

スポンジフィルターアピスト
スポンジフィルター、そしてアピスト。魚単体ではなく器具を含めた全体を鑑賞するのもアクアリウムの醍醐味だ Photo by MPJ

板近:さきほどのデメリットの話では「本体が水中にあるから邪魔になるかも」という例を挙げましたが、だからこその良さもありますよね。水中にある器具独特の良さというか、器具そのものに観賞価値を見いだせたりもする。

山口:器具含めてのアクアリウムを楽しめるのも、いいですよね。

板近:またエアリフト式は空気の泡が出るから、それ込みで良かったりするし。

山口:そういえば、昔編集部の先輩の家に行って水槽を拝見したのですが、スポンジフィルターにあえてめちゃくちゃ弱い送気でろ過を効かせたりしていて。あのぽこ……ぽこ……くらいのリズムが「ああ、マニアっぽくてかっこいいなぁ」と思いましたね。

板近:何を飼われていたんですか?

山口:ベタだったか、ラスボラだったか……。強い水流はいらない魚であったけれど、かっこいいと思った。

板近:エアリフトは、水流調整をしやすいのもメリットの一つでもありますよね。水流が弱いほうが向いている魚の飼育にも、本当に嬉しい存在で。

山口:エアを絞ればいいからパワーを持て余すことがないですよね。エアポンプ本体で送気を調整できる場合もあるし、なければ一方コックなどのパーツを挟めばいいし。

板近:一方コックなんかがそう高くないのもありがたいですよね。

一方コック
一方コックは送気の調整だけでなく、水合わせ(点滴法)などでも使用できる便利なアイテムだ Photo by S.Itachika

山口:なんでも安いんだよなぁエアリフト関連は。これも繰り返しになっちゃうけど、安いしコンパクトだからストックしやすい。それでいて、能力も高い。

板近:常備しやすい、そして常備しておきたいフィルターですよね。

山口:ええ。

投げ込み式フィルター
高さ12cmの棚にも余裕で並べることができるコンパクトさ! 余談だが、グリーン、ブルー、オレンジは限定版である Photo by S.Itachika

板近:あと、ちょっと限定的な使い方かもですが、ろ過バクテリアを移動しやすいフィルターだなとも思っていて。

山口:移動ですか。

板近:はい。新しい水槽を立ち上げるときに、事前に、すでに立ち上がっている水槽に投げ込み式やスポンジフィルターなどを追加してしばらく回しておいて、それを新しい水槽にポンといれれば「バクテリアつきろ材」をろ過システムごと移動できるじゃないですか。

山口:それはいい方法ですね。

板近:ありがとうございます。

山口:手軽さは本当に武器ですよね。

板近:あの手軽さ、掃除のときにもいいんですよね。

山口:底面式は簡単に水槽から取り出せないから別としても、投げ込み式やスポンジのお手入れはかなり簡単ですよね。そもそも、フィルターをまるごと水槽から取り出すのが、すごく簡単だし。

板近:やはり、水上から水中へつながっているのがエアチューブだけというのはかなり強いですよね。

山口:ですね。今、底面式は簡単に取り出せないという話をしたけれど、底面式にも曝気のメリットはそのままあるし、底面式ならではのメリットがある。そうしたバリエーションがあるのもエアリフトの魅力ですよね。

板近:タイプごとにメリットデメリットがあるし、個性みたいなものがあるから、掘り下げていくと楽しいですよね。

山口:自分好みな製品が見つかった時は、本当に嬉しいと思いますよ。

投げ込み式フィルター
おまけ:使い込んだ投げ込み式フィルターの外装の中にプレコのフィギュアと流木を飾ったもの。活躍の日々を思い出すことができる特別なディスプレイケースだ Photo by S.Itachika

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