みなさんこんにちは。
アクアライフWEB編集部です。
金魚の病気として有名な転覆病。
その原因を探ってみました。
金魚Q&Aとは 金魚Q&Aは金魚に関する様々な疑問に理科教諭、生物部顧問であり金魚の研究なども行なっている川澄 太一(かわすみ たいち)さんにお答えいただく連載です。一回一回独立したQに答えていくので、まとめて読んでいただいても、気になるQだけ見ていただいても、どちらでも大丈夫! 金魚Q&Aの更新情報はアクアライフ編集部のTwitterでもお知らせしておりますので合わせてご覧ください。 |
Q:転覆病? 金魚がひっくり返ったときの治し方は? お腹がパンパンな時はどうしたらいい?
浮袋の異常が原因かもしれません
転覆病は古くから知られている病気で、金魚が消化不良になったり、それに伴い金魚がおなかを上にして浮いたままになったり、底に沈んだままになる病気です。
これといった治療法は知られておらず、難病と言っていいと思います。
琉金などの丸い体型の品種に起こりやすいといわれています。
まず、この写真を見てください。
これは転覆病を発症したリュウキンを背中側から撮影したX線写真です。
2つある浮袋(鰾)のうち、小さい方(後室)が左側にずれていることがわかります。
鰾は魚の浮力を調節するものですが、このように体の中でずれていると左を上に傾いてしまうのも頷けます。
また後室がなく、前室だけが異常に大きい個体もいました。
バランスボールに乗ったように不安定な状態であり、これでは体が転覆してしまうだろうと思います
これらのX線写真を撮影していただいたコネット動物病院の屶網(なたあみ)先生は、私と同じ旧・東京水産大学の同期でともに魚類について学んでいました。
今すこしずつですが、彼と一緒にこの転覆病について効果的な治療法がないか試しているところです。
例えば、鰾内のガスを抜き取ったらどのような効果があるか、そのときはどのくらい抜き取るべきなのか、また造影剤を注入したらどのように移動していくのか、さらに浮袋内に金魚にとって害のない液体をおもり代わりに入れたらどうなるか……など試行錯誤しています。
鰾内のガスを一定量抜いたら転覆が治ったこともあり、今後も研究を重ねていく予定です。
餌への配慮で予防
私の経験上、転覆病を発症した個体を治すのはかなり難しく、治ったように見えても、一度ひっくりかえるクセがつくと餌を食べたあとなどに再発します。
じゃあ、餌を抜けばよいかというと、ほとんどの個体には効果はありません。
かなり難しい状態ですが、転覆病は水温が下がると発症する個体がいるので、水温を25℃ぐらいまで上げて様子を見守るのは一つの方法だと思います。
また、3歳以上の金魚に餌を与えすぎると発症するように思います。
ですから、3歳以上の金魚には適度な量の消化しやすい餌、たとえば胚芽入りの餌を与えることで、転覆病の予防につながると考えています。
このことから、色揚げ成分が多く入った餌や育成用とされる餌を、水温が下がる冬に、3歳以上の金魚に与えることは避けた方がよいと思います。
また、これは稚魚の話になりますが、古くなった餌(自家製の炊き餌)を与えたところ、稚魚が転覆したことがありました。
ですので、使用期限以内の餌を与えるようにするべきだと考えています。
空気に露出した部位のケア
転覆病は水面に浮き、魚体が外気に露出してしまうことが多々あります。
特に冬ではその部分が傷んで赤くなることがあります。
これについては外気による乾燥と火傷のようなものと考えており、二次的に細菌感染にかかることを防ぐために抗菌薬を水に溶かしたものを塗布しています。
疎水性の軟膏を使うのも良いと思います。
一定の効果があるようですし、金魚の痛みが和らぐのか、それはわかりませんが、できるだけのことはして見守るようにしています。
また、海外には転覆した金魚に浮きなどの補助具をつけることで金魚の姿勢を正しく補正するようなことをしている方もいるようです。
参考にそのことを伝える記事のリンクを貼っておきます。