みなさんこんにちは。
アクアライフWEB編集部です。
「ザリガニの飼育が禁止される!」
今、そんな噂が流れています。
実はこれ、かなり“事実に近い噂”で、また現実になる日がそう遠くないものでもあります。
色々な情報があって混乱している方もいるかと思いますので、今回のブログでは「ザリガニ類の規制」について一度整理したいと思います。
※閣議決定について追記しました。詳細は文末をご覧ください。(2020年9月11日)
1.特定外来生物とは
みなさんは「外来生物法」はご存知でしょうか?
名前の通り、外来生物(外国から日本にやってくる生物)について、いろいろな規制をかける法律です。
もちろん全ての外来生物が規制の対象となるわけではなく、この法律で「生態系、人の生命や身体、農林水産業に被害を及ぼすもの、もしくは及ぼすおそれがあるもの」として「特定外来生物」に指定された生物がその対象となります。
詳細については以下の環境省サイトをご確認ください。
「外来生物法」は2005年から施行されており、「特定外来生物」は随時追加されています。
当初は、オオクチバスが「特定外来生物」に指定されて話題になりました。
近年ではガーパイク類が指定されたことで、アクアリウムを楽しむ方にとって身近な法律になったかもしれません。
そして、「ザリガニの飼育が禁止される」という噂は、この「特定外来生物」にザリガニ類の多くの種が指定される可能性が高い(政令の改正が検討されている)ことに由来します。
ただ、検討されている政令の改正では、ザリガニの全種が対象となるわけではありません。
そして、現在飼育しているザリガニが規制対象となった場合にも、飼育を続けるための方法があります。
2.どんな規制がかかるの?
まずは、外来生物法で特定外来生物に指定されると、何ができなくなるのかを確認しましょう。
- 飼育、栽培、保管及び運搬
- 輸入
- 野外へ放つ、植える及びまくこと
- 譲渡、引き渡し、販売
以上が“原則”として禁止されます。
原則としたのは、先ほど記した「飼育を続ける方法」など、この禁止事項が適用されない例外もあるからです(詳しくは後述)。
これらに違反した場合には、懲役や罰金などの重い罰則が科せられる可能性があります。
悪意を持って違反するのはもちろん、ついうっかり……という事態も避けなければいけません。
3.今回指定が検討されているザリガニ
ザリガニ類は、現時点(2020年9月4日)でも、ウチダザリガニやヤビーなど多くの種類がすでに「特定外来生物」に指定されていますが、この度検討されている政令の改正では、さらに指定される種類が増えることになります。
それら全ての種を一つ一つあげていくと煩雑になるため、ここでは簡単に記しますが、「アメリカザリガニ以外の外来ザリガニ全て」が対象となる予定です。
また、ニホンザリガニは元から日本に生息している「在来種」なので、この法律の対象とはなりません。
本ブログを訪れる人に向けてシンプルに伝えるとすれば、「この度検討されている政令の改正後には、アメリカザリガニ※以外の外来ザリガニは飼えなくなる」ということです。
※アメリカザリガニにはたくさんの品種があり、以下のような名前で流通しているものも含まれます。レッドザリガニ、オレンジザリガニ、スーパーレッド、ブルーザリガニ、コバルトクラーキー、ナイトメアゴースト、ホワイトザリガニ、ゴールデンキング、タイゴーストなど。
4.今飼っているザリガニはどうすればいいの?(ミステリークレイフィッシュの扱いなど)
では、すでにこれらのザリガニ(アメリカザリガニとニホンザリガニ以外)を飼っている人は、どうすればよいのでしょうか?
そのときは、環境省に申請すればペットや観賞のための飼育を続けることができます。
申請は施行から6ヵ月以内に行なう必要があります。
また、手続きに関する不明な点の問い合わせ先として、管轄の地方環境事務所を覚えておくとよいでしょう。
ただし、許可を受けたとしても、飼育できるのは申請した個体に限ります。
その個体から繁殖した個体は許可基準に合致せず、残念ながら殺処分をしなくてはなりません。
ですから、複数の個体を飼っている方は、殖えないように1匹ずつの管理としてください。
特にミステリークレイフィッシュは1匹だけでも殖える(単為生殖)ため、意図せぬ繁殖が起こることもあるでしょうが、その際は抱卵段階で早めに処理するなどして、違法飼育とならないよう、また当然ですが決して野外に捨てたりしないようにしてください。
5.規制対象になっても慌てないで!
政令の改正にあたって、「アメリカザリガニとニホンザリガニ以外」のザリガニを飼っておられる方は不安な気持ちになるかもしれません。
しかし、上記のようにきちんと申請をして許可を受ければ、その個体の飼育は継続することができます。
間違っても「もう面倒だから放しちゃおう」などと思い、近くの川や池に放流してはいけません。
「外来生物法」は、我が国の生態系を保全するために作られたものです。
「特定外来生物」に指定された種を放流することは、この法律の主旨とは真逆の行動ですし、ましてや先にも述べたように重い罰則もあります。
ペットを含む産業目的として持ち込まれた外来種が野外に出て生態系に被害をもたらしてしまったため、このような法律ができてしまった……とも言えます。
これ以上「ペットとして飼育している人のせいで日本の生態系が破壊された!」などと思われないように、理性的な行動を心がけてください。
そう思われること自体が、生き物の飼育という素晴らしい趣味の衰退を招く原因になってしまいますので、どうぞよろしくお願いいたします。
一応、補足しておくと、「特定外来生物」以外の外来生物の放流も絶対にダメですよ!
(最近は在来種の移動もだいぶ問題視されていますが、その点についてはまた別の機会に)
6.スケジュール
この度の政令の改正は、2020年9月中に公布(国が決定し、発表される)がされる予定です。
その後、2020年11月頃には規制が開始される予定とされています。
月刊アクアライフ2020年11月号(10月11日発売予定)では、政令の改正内容やスケジュールについて、もう少し詳しくお伝えできるはずですから、興味のある方はぜひそちらも合わせてご覧ください。
それでは、本日もアクアライフブログをお読みいただき、ありがとうございました。
追記:閣議決定について(2020年9月11日)
外来生物法の改正が本日(2020年9月11日)正式に決まりました。
2020年11月2日からの施行になります。
詳細は以下環境省サイトをご確認ください。
▶「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律施行令の一部を改正する政令」の閣議決定 について(環境省)