みなさんこんにちは。
アクアライフWEB編集部です。
今回の金魚Q&Aは金魚の病気について。
特に金魚に特有とされるキンギョヘルペスウィルスの感染について解説します。
金魚Q&Aとは 金魚Q&Aは金魚に関する様々な疑問に理科教諭、生物部顧問であり金魚の研究なども行なっている川澄 太一(かわすみ たいち)さんにお答えいただく連載です。一回一回独立したQに答えていくので、まとめて読んでいただいても、気になるQだけ見ていただいても、どちらでも大丈夫! 金魚Q&Aの更新情報はアクアライフ編集部のTwitterでもお知らせしておりますので合わせてご覧ください。 |
Q:キンギョヘルペスウィルスってよく聞くけれど怖い病気?
キンギョヘルペスウィルスにかかった金魚の様子
このウィルスは金魚に貧血症状をもたらすので、金魚は群れに参加して泳ぐ機会が減り、孤立してぼーっとするようになります。
このウィルスは、32℃を超えたあたり、33℃くらいで金魚に悪さをしなくなり、金魚の体内に入りこむようです。
そして、その場合、金魚はウイルスに対しての免疫を持ちますが、体内にウィルスが潜んでいるので、移動のストレスなどでちょっと金魚が疲れると体内から出てきたりして、免疫を持っていない金魚に悪さをするようです。
水温を上げることで免疫をつける
私は、ヘルペスウィルスにかかった金魚を見つけたときは、水槽用ヒーターで水温を上げ、33℃で5日飼育することで死亡率を下げたり、免疫をつけさせています。
ヒーターの中には33℃まで水温を上げることができないものがありますから、購入の際には気をつけてください。
また、ヘルペスウィルスは高水温にならない秋や冬に発症しやすいですから、そんな時期に33℃まで水温を上昇させるときは必ず水槽にフタをしてください。
そうしないと、水温がなかなか上がりません。
そして、水温を一気に上げるとそのことが原因で金魚が死亡してしまうので、初日は30℃、2日目に33℃と段階的に水温を上げるようにしています。
実際に、私は11月、一気に水温を33℃まで上昇させて金魚を全滅させてしまったことがあります。
このウィルスは水温28℃くらいが最も活動しやすいようで、そこが面倒なところです。
ですから、私は先に書いたような手順、初日に30℃、2日目に33℃にしているわけです(28℃近辺を避けている)。
ただし、金魚には個体差もありますし、初日を30℃までと抑えたとしても温度の上昇が原因で死亡する金魚がいるかもしれません。
様子をみながら水温を上げてください。
一方で、水温を上げない状況では病気が進行して金魚が死に至るかもしれません。
このように、なかなか対応が難しい病気なのです。
参考までに金魚ヘルペスウィルスに感染した金魚の死亡率と水温の関係を示す図を引用して掲載します。
また引用元もリンクしておくので、よろしかったら参考にご覧ください(リンク先)。
ヘルペスが出てから処置をする必要がある
さて。
前文までを読んだ方ならば、
「ヘルペス発症の有無に関わらず、購入してきた金魚すべてに水温を上げる処置(前述の方法)をすれば、よいのではないか」
と思う人がいるかもしれません。
しかし、残念ながら、その方法は役に立たないようです。
私は一度11月に購入した金魚に、すぐに前述の処置をしたのですが、ちょうど処置が終わって1週間ほどしたときに、その水槽内でヘルペスが出ました。
しかも、「この処置をしたのだからヘルペスはもう大丈夫だろう」という変な自信のせいか発見が遅れ、1匹は残念ながら死んでしましました。
やっかいなことに、水温を上げるこの処置は、ヘルペスウィルスに金魚がしっかり(?)かかってからでないと効果が出ないのです。
キンギョヘルペスウイルスが発症しやすいとき
ここまではヘルペスの症状や発症した際の処置について述べました。
ここでは、「どういうときにヘルペスが出るか」についてお話します。
それは主に、水温が33℃を下回るような時期に、金魚を新しく購入して水槽に入れるときだと思います。
新しく金魚を入れた水槽で、数日後に特定の金魚が普段と違い群れに参加せず、ぼーっとしているときにヘルペスの疑いがあると考えています。
ぼーっとする金魚は購入したものの場合が多いですが、そうでない場合もあります。
また、外から持ち込んできた金魚がヘルペスウィルスを持っていたとしても、その金魚に免疫があった場合。
いわゆるキャリアの金魚ですね。
キャリアの金魚は一見すると健康に泳いでいます。
そうした金魚が、水槽にいたその他の金魚にヘルペスウィルスをうつすことがあります。
なので、新しく購入した金魚だけを観察するのではなく、それ以外の金魚すべてをしっかり観察することが大切です。
そして、群れに参加せず、1匹でぼーっとしている金魚がいた場合、水温を上昇させてください。
キンギョヘルペスウィルスの見分け方
ぼーっとしている以外にも、キンギョヘルペスウィルスの感染が疑われる症状があります。
時々、このウィルスにかかると尾ビレに白点よりも大きい、直径2mmほどの白い塊がつくことがあります。
そのような白い塊があり、金魚の様子がいつもと違う場合、水温を上昇させた方がよいと思います。
このウィルスにかかると貧血になるのでエラの色が薄くなりピンク色になるとされていますが、エラの色の比較はなかなか難しいと思います。
エラ蓋の中に収まっているエラは、簡単に見ることができませんし。
健康そうに見えた金魚が死んでしまったとき
新しく金魚を水槽に入れた時のリスクは先に記しましたが、新しく水槽に金魚を入れていないのに水槽にいた金魚が死んでしまうことがあります。
ほかの金魚は健康で白点も尾ぐされ病も出ていない、松かさ症状もない、いたって健康そうに見えるのにいきなり死んでしまった……。
そんな時はヘルペスが発症した、と考えてもいいかもしれません。
水槽内のいずれかの金魚がウィルスを体内から外に出し、免疫がなかった金魚が死んでしまったという可能性があります。
そんな水槽内の金魚はしばらくよく様子を見て、場合によっては水温を上昇、そして死亡した金魚がいた水槽内の金魚を他の水槽に移すことは1ヵ月は避けたほうがいいと思います。
どうしても移す場合は毎日しっかり様子を見ることです。
育てた金魚とキンギョヘルペスウィルス
また、家で卵から稚魚を育てている方は、稚魚を育てあげ、いよいよ成魚の水槽に混ぜるとき、このウィルスの存在を忘れないようにしてください。
家の水槽で稚魚を育てている間にウィルスが外部から入ることはまずないでしょう。
ということは、それらの稚魚は一度もヘルペスウィルスに触れ合わずに生きてきた可能性が高いのです。
つまり免疫がありません。
一方で、成魚たちはひょっとしたら体内にウィルスを持っているかもしれませんよね。
体内にウィルスを持っていても健康なのは免疫をどこかで獲得したからで、そういう状態で生きている可能性があります。
先にも述べたキャリアです。
免疫を持たない稚魚とキャリアの成魚を混ぜてしまった場合、成魚から稚魚にウィルスがうつる可能性があります。
ですので、稚魚を成魚の水槽に混ぜたとき、必ずしばらく毎日金魚の様子をしっかり見守ってください。
稚魚たちがぼーっとし始めたら、すぐに水温を上げた方が良いです。
稚魚のワクチン接種
成魚から稚魚への感染。
私はそのようなトラブルを避けるために、あることをしています。
それはですね、夏場の暑い日に、稚魚がいる水槽に成魚が泳ぐ水槽の水を混ぜてしまうのです。
成魚の飼育水の中には、少しはウィルスがいることを期待(?)して行なっていることですが。
33℃以上だとウィルスが悪さをしないので、そのような環境(水温)のときに稚魚にウィルスを人為的にかけてしまうのです。
ヒトでいうワクチン接種と同じですね。
それで免疫をつけさせようとしています。
今のところ、このようにしていると、我が家では稚魚を成魚の水槽に入れたあとに、ヘルペスになってしまうようなことはありません。
まとめ
この病気は、金魚がぼーっとする間もなく、突然死んでしまうことも時々あるのでやっかいです。
前の日の夜には全然元気だったのに、翌朝死んでしまう、なんていう場合もあるんです。
なかなか難しく、こちらも疲れることはありますが、このヘルペスウィルスという壁を、私を含め、皆さんで乗り越えてうまく適応できていけたらな、と思っています。