みなさんこんにちは。

アクアライフWEB編集部です。

今回の金魚Q&Aは金魚の稚魚の育成について。

特に稚魚期の餌について解説します。

金魚Q&Aとは

金魚Q&Aは金魚に関する様々な疑問に理科教諭、生物部顧問であり金魚の研究なども行なっている川澄 太一(かわすみ たいち)さんにお答えいただく連載です。一回一回独立したQに答えていくので、まとめて読んでいただいても、気になるQだけ見ていただいても、どちらでも大丈夫! 金魚Q&Aの更新情報はアクアライフ編集部のTwitterでもお知らせしておりますので合わせてご覧ください。

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Q:金魚の稚魚の餌は何? 期間による違いは?

稚魚の大きさに合わせることが大切

まず前提として、単純に期間で分けるのではなく、稚魚の口のサイズによって与える餌が変わっていきます。

それぞれの成長段階で、稚魚の口のサイズに入る餌であることが大切です。

卵からふ化して2ヵ月たっても稚魚の大きさがまだメダカサイズなら、相応の大きさの餌にします。

ふ化して1ヵ月たっていなくても、もう10円玉ぐらいのサイズ(体長で25mmくらい)になっていたら、直径1.3mmくらいの人工飼料を食べることができるようになります。

このとき、きちんと餌を食べられているかチェックしてください。

私は、ふ化したての稚魚は、動く生き餌の方がよいと思っていますが、稚魚の頃から人工飼料を与えて大きく育てているという方の話も聞いたことがあります。

初期餌料はブラインシュリンプ幼生がよい

私の場合は、卵から稚魚がふ化して2日ほどたち、餌を食べ始めるようになった頃からブラインシュリンプの幼生を与えています。

ブラインシュリンプの幼生は市販の卵からふ化させたもので、小さな生き餌として広く利用されています。

稚魚の口が小さく、ブラインシュリンプも口に入らない時期があるのかもしれませんが、稚魚たちは水中のなにかしらの小さな生物を食べていると思います。

なぜかというと、顕微鏡で我が家の飼育水をみると、ゾウリムシのようなプランクトンが観察されるからです。

水槽で観察していると、金魚がミズミミズを食べていたこともありました。

ミズミミズは、水槽のガラス面にへばりついている、白いミミズのようなやつです。

ブラインシュリンプについて問題なのは、ブラインシュリンプは淡水中では長生きできないので、稚魚が食べ残した場合、ブラインシュリンプが死んでしまい、水を汚してしまうことです。

水が汚れると、あっという間に稚魚が死に始めて、水槽の上にしらすのように亡骸が浮いてきてしまうのです。

ブラインシュリンプ。これはふ化して日が経ちおよそ5mm程度に育った個体。ふ化したての幼生は0.5mmほどの大きさ。Photo MPJ
水槽にわく微生物を金魚が食べることもある。写真はミズミミズ。Photo MPJ

水を汚さない与え方

では、どれぐらいの量のブラインシュリンプを与えたらよいのでしょうか?

私は、朝7時に餌を与えてお昼の3時になっても水中にブラインシュリンプが泳いでいるときは、与えすぎと考えて量を減らします。

ブラインシュリンプの量を測定する方法ですが、毎回ブラインシュリンプをふ化させるときに、卵と塩水の量をそろえておきます。

たとえば1gの卵に水500mLと塩10gといった感じです。

そして、卵がふ化してできるブラインシュリンプジュース(?)をコップなどの容器ですくいだし、稚魚に与えます。

コップ2杯でブラインシュリンプがお昼の3時になってても泳いでいたら、翌朝は1.5杯に変更して様子を見ます。

ブラインシュリンプのふ化のさせ方は、購入した商品のパッケージなどに記されているのでそちらを参考にしてください。

私からのアドバイスとしては、しっかり強めのエアレーションをしないとブラインシュリンプのふ化率が下がるので、かなり強めにエアをしたほうがよいということです。 

ブラインシュリンプを卵からふ化させているところ。ここでは、ヒーターで水温を28〜29℃に保ち、ふ化容器(左)の中の水(塩水)にエアポンプから送気している。これでおよそ1日後には卵からふ化する。ブラインシュリンプをふ化させる方法は色々あるが一例として。Photo N.Hashimoto

私なりのちょっとしたコツ・その1

先にはペットボトルにはエアを強めに送るとよいと書きました。

しかし、エアが出る勢いが強いと、エアチューブが浮いてしまい、卵を撹拌できず、ブラインシュリンプのふ化率が下がることがあります。

かといって先端にエアストーンをつけると、エアがつまったりもして、悩ましくもあります。

そこで、私は分岐コック、または流量調整コックをエアチューブの先に刺して重しがわりにしています。

分岐コックが詰まるとエアの出る勢いが弱くなるので、2〜3日に一度はつまようじを刺してエアの通りを良くしてます。

エアチューブの先に分岐コック(または流量調整コック)を接続しておもり代わりにすると都合が良い。Photo T.Kawasumi

私なりのちょっとしたコツ・その2

ふ化したブラインシュリンプを取る方法について、先ほどはコップで掬い取ると書きましたが、もう少し楽な方法があります。

それはホースを使って吸い出す方法です。

エアを止めて2分ほどでブラインシュリンプ幼生が水底に沈みますので、そこを狙ってホースで吸い出します。

この吸い出す力はサイフォンの原理を利用します(サイフォンの原理はネット検索ですぐに調べられます)。

こうすると、ペットボトルの中がかき回されず、ブラインシュリンプが入ったジュース(?)が簡単にとれます。

例えば2Lでわかしたのなら、私はジュースを1.9Lはとります。

こんな楽な方法なのである程度はブラインシュリンプの卵の殻も一緒に吸い取ってしまいますが、あまり気にせず私は稚魚に与えてます。

このやり方なら、毎日5分ほどの作業で素早くブラインシュリンプを稚魚に与えることができます。

「ブラインシュリンプジュース」を吸い出すホースとそれを受けるペットボトル。Photo T.Kawasumi

塩分は取り除かない?

先述のようにブラインシュリンプをふ化させる際の水は塩水です。

私はふ化したブラインシュリンプを塩水ごととって、金魚に与えています。

熱帯魚を飼育される方は、ふ化したブラインシュリンプを一度淡水にさらしてから魚に与えることもあると聞きます。

つまり、塩水の塩分が飼育魚に与える影響を取り除いているわけです。

しかし、こと金魚に限っては、耐塩性が高く、そこまで神経質になる必要もありません。

とはいえ、金魚の水槽に水草を入れている場合には、塩分による影響も考えられるので、そのときは淡水に一度さらすなどした方が良いでしょう。

人工飼料への切り替え

私はいつもブラインシュリンプの卵を400gほど入った缶で購入しているのですが、高価なものですし、年月がたつとふ化率が落ちると聞いていますので、毎年それを使い切るまではずっとブラインシュリンプを稚魚に与えています。

で、すべての稚魚が体長で15mmを超すようになってきたらもしくは大きな個体だけ集めて水槽を用意し、そこだけは粒サイズ0.38mm以上の人工飼料に切り替えています。

そして、冒頭に書いたように1O円玉くらいのサイズ(体長25mm程度)になったら、より粒の大きい人工飼料に切り替えます。

ブラインシュリンプはよい餌かもしれませんが、粒の餌よりは重さが少なく、やはり、金魚がどんどん大きくなるのは粒の人工飼料を与えてからのような気がしています。

直径0.38mmの人工飼料。Photo T.Kawasumi

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