みなさんこんにちは。
アクアライフWEB編集部です。
なんとなくわかる気がするけど、なんとなくわかりにくい「パルダリウム」という言葉。
本日はその意味を、テラリウム、アクアテラリウム、ビバリウムという言葉たちと共に、ググッと掘り下げていきます。
掘り下げるのは、月刊アクアライフのパルダリウム特集などを手掛けた、山口 正吾(やまぐち しょうご)!
いろいろ振り返りもした「言葉」の話。どうぞご覧ください!
定義も大切、現場も大切と。
アクアの雑談恒例の「山口さんに聞いてみた」シリーズです!
アクアの雑談 アクアの雑談は、その名の通りアクアリウムに関する「雑談」をお届けする連載です。お題は回ごとにいろいろ! 雑談いたしますのは、月刊アクアライフ前編集長の山口 正吾(やまぐち しょうご)と、アクアライフWEB編集部の板近 代(いたちか しろ)。雑談ならではのお話を、どうぞお楽しみください。 |
月刊アクアライフ“パルダリウム特集担当”に聞いてみたい!
板近:本日の雑談のお題ですが「パルダリウムとは」ということをお聞きしたくて。
山口:パルダリウムとは……ですか。
板近:ええ。山口さんが特集担当をされた、月刊アクアライフのパルダリウム特集号も発売されていることですし。今こそ、この漠然としたお題をと!
山口:たしかに、漠然としているというか、根源的というか(笑)。
板近:(笑)。
山口:しかしながら、パルダリウムもだいぶ浸透してきて、案外そこをすっ飛ばしている人もいるかもしれませんね。
板近:すっ飛ばしてる、ですか。
山口:ええ。パルダリウムという言葉ありきで、この趣味をはじめる人も多くなったといいますか。
板近:あ、最初から「パルダリウム作りたい!」という気持ちでパルダリウムを作っているというか、始める前からパルダリウムという言葉にイメージがあるというか。
山口:そうですそうです。
板近:たしかに、最近はパルダリウムを見かける機会も多いですもんね。言葉としてもナチュラルに使われている印象があります。
山口:ええ。でも、まだまだ“新しいジャンル”という感がありますし「パルダリウムとは?」という疑問を抱えている人も多いのかもしれません。今日はいろいろ振り返ったりもしながら、掘り下げていきたいと思います。
板近:はい、お願いいたします!
パルダリウム、テラリウム、アクアリウム、ビバリウムの違い
山口:パルダリウムという言葉を聞いて、板近さんは何か思うことがあったりしますか。
板近:そうですね……今は私も自然と使っている言葉ですが、聞いたばかりの頃はちょっと考えたりもしました。
山口:考えた、ですか。
板近:ええ。パルダリウムとテラリウムの違いってなんだろう? とか。パルダリウムと呼ぶための条件はなんだろう? とか。
山口:なるほど。そういう疑問を持つ方は多いかもしれませんね。
板近:今日はパルダリウムだけでなく、テラリウム、アクアテラリウム、ビバリウム……このあたりの言葉も合わせて振り返ってみたい気がしますね。なんだか開始早々お題を追加して申し訳ないのですが。
山口:(笑)。でもそうやって列挙してもらうと、私も話しやすいです。
板近:ありがとうございます。
山口:じゃあ、順に行きますね。なんだか講義みたいで緊張するなぁ。雑談なのに(笑)。
板近:(笑)
ビバリウムの意味
山口:まず、大枠からいきますね。
板近:大枠というと……ビバリウムですかね。
山口:そのとおりです。パルダリウム、テラリウム、アクアテラリウム、ビバリウム。……ビバリウムは、これらの言葉の中で最も大きな枠を持っている言葉ですね。
板近:テラリウムもパルダリウムも、それに、アクアリウムなども含む言葉ですよね。
山口:ええ。それらはビバリウムの一つの形態としてもいいものです。ビバリウムは「自然を切り取って再現したもの」みたいな意味だから、包括してるんです。でも、実際にビバリウムという言葉が使われる場面は、もっと限定的であることがほとんどで。
板近:使われる場面というと、たとえば会話や記事の中で使われる時などですか。
山口:ええ。たとえば、ビバリウムと聞いて魚の泳ぐアクアリウムを思い浮かべる人はまずいないと思うんです。
板近:そうですね。アクアリウムはアクアリウムというか…………ビバリウムと聞いて、水ががっつり入っている水槽は思い浮かべないかも。
山口:はい。多くの人が、ビバリウムと聞くと、爬虫類両生類を飼うケージとか、爬虫類両生類を飼う趣味そのものを想像すると思うんですよね。
板近:ああ、そうですね。私もそのイメージが出てきます。
山口:海外なんかでもVIVARIUMというタイトルの爬虫類両生類雑誌があったりして。本来は包括的な言葉であるにせよ、爬虫類両生類限定で使うことには違和感がないと。
板近:実際に使われる中で、言葉が新しい形を得たというか。
山口:言葉は世につれ、という面もあるので、あまりそこで頑なになる必要もないですし、そんな感じで捉えておくとよいと思います。
テラリウムの意味
板近:では今度はテラリウムをお願いします。
山口:はい。テラリウムは、自然、特に陸地部分を再現した環境という感じですかね。あまり水を入れないというか。
板近:「特に」「あまり」という部分が揺らぎであるというか、完全に水が駄目というわけではないんですよね。
山口:うーん、陸地が多ければテラリウムでいいんじゃないですか。「テラリウムで飼う」となれば陸が多い……ほとんどが陸のケージを指すような感じで。
板近:たしかに、そういうイメージですね。
山口:砂漠棲の生き物を飼うケージであっても、水飲みくらい入れることもあるわけだし。水の割合が厳密に決められているわけでもない。
板近:陸イメージが強いというか、そんな印象であるスタイル……というニュアンスですかね。
山口:そうそう。そういう感じでいいと思います。
アクアテラリウムの意味&ハイドロテラリウムの思い出
板近:テラリウムから、だんだん水が多くなってくると言葉が変わってきますよね。
山口:アクアテラリウムですね。
板近:ええ。多分ここにも厳密な「この割合からアクアテラリウム」という境目は無いのだと思いますが。
山口:そうですね。
板近:そのあたりの感覚を掘り下げていただければ。
山口:わかりました。そうそう、その前に一つ。
板近:はい。
山口:アクアテラリウムというのは造語であるらしいんです。ただ、いつ頃誰が作ったのか私にはよくわからず。
板近:その話私も知ってます! 山口さんから教わったので(笑)。
山口:(笑)。ただ、80年代初頭の月刊アクアライフでも大した説明もなくアクアテラリウムという言葉が使われていたので、だいぶ年季が入った言葉であるとは思います。
板近:私もアクアテラリウムは、当たり前にある言葉として認識していました。
山口:今更、造語であるとお断りする必要がないくらい、認知されている言葉だと思います。アクアテラリウムと言えば、みなさんもうだいぶイメージ共有できると思うんですね。
板近:そう思います。
山口:陸地があって、水場があって。水場はひたひたではなく魚が飼えるくらいの水量があって。
板近:目に浮かびます。
山口:私の場合は滝のイメージもありますね。
板近:滝ですか。
山口:2000年頃になるかな。当時、ニッソーさんと広瀬さんがハイドロテラリウムと称して一大キャンペーンを繰り広げていたんですね。
板近:あー! ハイドロテラリウム! すごく憧れて欲しかった覚えがあります。
山口:それは水場があって、流木で陸地を作って、滝が流れているものが多かった。私なんかはそのイメージで。
板近:分岐パーツからエアチューブを通して水を流して。
山口:そうそう。当時からそういう分岐パーツはあったけれど、それとは別に滝を作っていたことが多かったんです。
板近:なるほどです。たしか……ハイドロテラリウム用の水槽なんかもありましたよね。
山口:前面がカットされた専用の水槽ですね。
板近:それです! 欲しかったなぁ……当時はそこまで手を出す余裕がなく。お店で見て本当に憧れて。
山口:いろいろなお店に置いてありましたね。陸地ではコニファー類を植えて、なんというか山を表現していたんですね。多分、今どきのパルダリウムとの違いはそのあたりにあると思います。
板近:確かに当時よく見た雰囲気と、今、パルダリウムとしてよく見る雰囲気はけっこう違いますね。
山口:ええ。ではでは、そろそろ本日のメインであるパルダリウム行ってみましょうか。
板近:お願いします!
パルダリウムの意味
山口:パルダリウムというと、まず湿地の再現が定義として挙げられます。
板近:たしかにそんなイメージがありますね。
山口:ええ。山を模した作品もありますが、それはパルダリウムの中のひとつのスタイルという感じであって、パルダリウム全体を代表するイメージではありません。
板近:私は、パルダリウムには「湿度の高いジャングル」みたいなイメージもあるのですが……これはどうでしょう?
山口:ジャングル、ありますね。
板近:おお、よかった! ここで「違います」って言われたらけっこう落ち込んだと思います(笑)。
山口:(笑)。実際、パルダリウムは緑が深いイメージがありますよね。まぁ、パルダリウムの本来の意味では、必ずしもジャングルでなくともよいとは思うんですけれど、緑が多いほうが見栄えもするし、今時のボタニカルブームにおいてもそのほうが楽しい人も多いだろうし。
板近:緑が少ないと土台の土とか流木、石などが目立ちますよね。それはそれで一つのスタイルではあると思いますが、山口さんの言う通りパルダリウムと聞いてパッと連想するものとは、少し異なるところがあるかもしれません。
山口:ええ。そのイメージが今のパルダリウムの感覚であるのだと思います。それで、ジャングルという言葉が出てくるのでしょうね。
板近:では、水場はどうでしょう?
山口:水場はあってもひたひたとか、そういうイメージですよね。
板近:そうですね。水深が出てくるとパルダリウムと言うより、アクアテラリウムと言ったほうが通じやすい気もします。
山口:おっしゃるとおりで。今まで、たくさん取材をしてきた中で、みなさん自然とそういう使い分けをされていました。水場が多いものをアクアテラリウム、水場が少なくて緑が多いものをパルダリウム。このような感じで。
板近:なるほどです。
傾向と、人それぞれの使い方
山口:ああ、あと今年2月に発売した本(パルダリウムとアクアテラリウム)では、アクアテラリウムは開放型ともしましたね。フタがなかったり前扉がなかったりして密閉されていないもの。もちろん、これも絶対ではないけれど、多くの愛好家が持つイメージと乖離していないと思います。
板近:「傾向として」みたいな感じですね。
山口:傾向。うん、そうですね。言葉は生き物だし人によっても使い方が違うので、一概に言えない部分がありますから。
板近:たしかに。
山口:たとえば、たくさんのレイアウトを作ってきたレイアウターの方は、パルダリウムとコケリウムを明確に分けたりします。
板近:今、パルダリウムとコケリウムと聞いて、頭の中でちゃんと二つのイメージが湧きました。
山口:私も、このレイアウターの使い分けは、すごく伝わりやすいと思いました。私からすると「コケリウムもパルダリウムの一形態」というイメージもありましたが、たくさん作る方だからこそ、意識の中で細分化が進んでいるのかもしれない。
板近:細分化ですか。
山口:アクアリウムの世界においても、水草水槽、混泳水槽、単独飼育、大型魚、小型魚……などと、細分化したりもしますよね。
板近:あ、そうですね。
山口:でもこれはアクアリウムが好きな人の感覚で。そうでない人からしたら水草レイアウトも、水草を使わず流木だけで構成したレイアウトも同じアクアリウムだったりすると思うんです。
板近:それはありますね。逆に、接する機会が多いものや事柄は、自分の中での細分化が進みやすいというか。
山口:はい。板近さんのお好きなカメラだって、カメラという大きな枠の中にいろいろなジャンルやカテゴリがありますし。でも興味のない人からしたらカメラはカメラで。
板近:そうした細分化は、趣味として楽しむ上ではとても役に立ちますよね。情報収集する時なども、ある程度照準を絞ったほうが濃い情報を得られたりしますし。
山口:あとはなんだろう、言葉を扱う本なんかでよく出てくる話としては「出世魚」とかもそうですよね。同じ魚なのに、魚の成長段階において名前が変わってくる。それはその魚と関係性が強いから自然と細分化しているわけで。
板近:魚は、地域によって呼び方が変わったりというパターンもありますね。
山口:ありますね。ちょっと脱線しましたが、要するに「言葉、または言葉の使われ方は使う人や背景により変わってくることがある」という意識を持っていると、今日挙げたパルダリウムなどの言葉に対する理解もしやすいのではないかなということです。
板近:そこを知っていないと、混乱してしまう時があるかもですね。
山口:そうですね。もうひとつ例をあげるならば、「イモリウム」という言葉は、わかりやすい細分化の例ですよね。パルダリウムやアクアテラリウムの一形態ではあるけれど、イモリを熱心に飼う人にとってはイモリウムというのがしっくりくる。
板近:イモリウムって綺麗にハマった言葉ですよね。聞くだけで、イモリがいて緑のある空間が思い浮かんで。
山口:そうですね。イモリとリウムの「リ」が重なっているのもいいですし、言葉としてとても自然ですし。
板近:こう、パルダリウムやそれに関連する言葉を掘り下げていくと、この文化の深さを感じられる気がしますね。新しい「◯◯リウム」が生まれたりもして。
山口:そういうこともあるかもしれません。
板近:言い換えれば、言葉のあり方も文化のうちということですね。
ここでおさらい、◯◯リウム
板近:ここまでのお話を聞いて「パルダリウムの定義みたいなものは明確に断言しなくともよい」と……そしてそこがけっこう大切なポイントであると感じたのですが、どうでしょうか。
山口:言葉の本来的な意味とは別に現実があり。そして、その現実はわりと多様であるので、定義というのもお節介な気もします。
板近:私も、その揺らぎがあるからこそ面白いところがあるのだなと、改めて思いました。と……ここで、一つお願いよいでしょうか。
山口:なんでしょう。
板近:今日ここまでお話してきた、各リウムについて。「だいたいこんなものだよ」的な感じで、もう一度、まとめたいなと思いまして。
山口:それは私も必要だなと思っていました。掘り下げるためにいろいろ脱線もしましたし、おさらいということで(笑)。
板近:(笑)。ではでは、ビバリウムからお願いします!
山口:わかりました。私もアクアリウムシーンをウオッチしている一人なので、その感覚みたいなものでお話しすれば……ビバリウムは「爬虫類両生類を飼うケージ」で、いいと思います。
板近:実際にそう使われているということですね。
山口:はい。次にテラリウムは土や砂などを入れて、なんらかの生物を飼育したり育成したりしているケース。生物は特に爬虫類両生類に限らない。
板近:水量は少ないですよね。ひたひたであったり、水飲み場程度であったり、陸メインで。
山口:その通りで。あと、動物がいなくともテラリウムという言葉は使います。つまり、今言った「なんらかの生物」には植物も含むということで。
板近:園芸方面などでも「植物のみで作られたテラリウム」の例が紹介されたりしていますよね。
山口:ええ。
板近:ではでは、次に、アクアテラリウムをお願いします。
山口:アクアテラリウムは陸地のほかに水場があって……わりと水場が多くて、そこで魚が飼える感じ。緑についてはパルダリウムよりも控えめかなぁ。うーん、緑の多い少ないはさほど重要でもないか。緑が多いアクアテラリウムもあるし。
板近:テラリウム+アクアリウムという言葉の成り立ちからも想像しやすそうです。水陸どちらも利用する生物にもよい環境ですよね。
山口:そうですね。最後にパルダリウムはアクアテラリウムに比べたら水場が小さくて、割と緑を重視する。全面緑というか、底面や背面などを緑で覆うことが多い。
板近:「緑を重視」が、パルダリウム的な特徴の一つであると。
山口:ええ。ついでに補足しておくと、我々の本分であるアクアリウムは水中に全てあるというか、陸地のない空間ですね。ただ、水面から少し流木が飛び出しているレイアウトなどの場合は、アクアリウムに含めてよいとは思います。
板近:その流木が陸地として機能してくると、アクアテラリウムに近づいていくと。
山口:そうですね。そんな感じで、ざっとこのくらいの感覚が今の現実に近いとは思います。もちろん、傾向としての話ではあるのですが。
板近:ひとつ確認したいのですが、今お話いただいた各リウムは、区切られた空間であるという前提でいいですかね。たとえばガラスやアクリルの水槽内、ボトルの中など。
山口:そうですね、それでよいと思います。
板近:規模はどうでしょう。空間のサイズというか。
山口:規模は、小型から大型まで本当に幅広いですよね。ただ、場面によってはある程度の偏りもあると思います。たとえば、アクアリウムと聞いて想像する水槽のサイズは人それぞれ異なるところがあるでしょうし。
板近:Googleで「アクアリウム」と画像検索してみると、個人宅に置けそうなサイズの水槽が多く並びますよね。でも、意味合い的には水族館の超大型水槽なども含まれるはずで……といった感じでしょうか。
山口:そうそう。その感覚ですね。
板近:これもまた、一つの傾向ですね。
山口:ですね。ただ、「傾向、傾向」とは言っていても、場合によっては言い切ってしまったり、傾向であることに触れないほうが伝わりやすい場面もあるとも思います。私もそういう風に言い切ってしまうこともありますし。
板近:ああ。傾向と言うことでモヤッとしてしまって、話が複雑になりすぎたり、必要な情報が伝わりにくくなったり……。
山口:そうなんです。でも、結局捉え方は人それぞれであるし、割と幅はある。今は情報の量が多いし、発信する人も多いから無理にこうだと決めつけずに、イメージとして捉えるくらいでいいんじゃないですかね。……こんな感じでどうでしょう。ちょっと、簡潔ではないまとめとなってしまったかもしれませんが。
板近:いえいえ、私も間で質問してしまいましたし。
山口:さっきも言ったように、私はパルダリウムなども含めたアクアリウムシーンをウォッチしている立場であって、面白いと思うものを掬い上げている人間ですし……。
板近:はい。
山口:そういう面白いと思えるものは変化の最中にあることが多い。例えば今はメダカなんかの変化は凄まじいですよね。だから、「これはこうですよ」と定義するのは後に必要だと思う人の仕事なのかなと思ったり。
板近:パルダリウムが、今後も進化していくことは間違いないですもんね。
山口:まさにそういう変化のときにあって、あまり制限をかける働きかけをしたくないと思うんですよね。パルダリウムはこうだ! と決めた瞬間に、新しい表現、遊び方の芽が摘まれてしまうかもしれないから。
合本後のパルダリウム特集
板近:本日、パルダリウム関連で、もう一つ聞きたいことがありまして。
山口:はい、なんでしょう。
板近:今年、2月に『パルダリウムとアクアテラリウム』という合本(以下「合本」と表記)が発売されましたよね。
山口:ええ。
板近:あの合本はそこまでの月刊アクアライフに掲載された、パルダリウム特集や記事をまとめて、再編集や新情報を加えるなどした、ある意味「集大成」のような号であったと思うんです。
山口:はい。
板近:私も読ませていただきましたが「ああ、これがあればパルダリウムのことが相当わかるぞ!」といいますか、長く使える一冊であると思ったんですね。
山口:ありがとうございます。
板近:それで、あの合本を担当されたのは山口さんであって。
山口:ええ。
板近:そして今月の月刊アクアライフ(2021年7月号)は合本発売後、初のパルダリウム特集で、その担当も山口さんですよね。
山口:そうですね。あ、聞きたいのは今月号に関してですか?
板近:はい! 「あの合本の後にパルダリウム特集を担当するのってどんな感じなんだろう?」と、そんなことを聞きたいなと思いまして。
山口:なるほど。合本発売後にいろいろ聞いていただいた回の続編みたいな感じでしょうか。
板近:そうですそうです! あ、少しここで読者さん向けに補足いいですか。
山口:どうぞ。
板近:ではでは……私はアクアライフ“WEB”編集部で、月刊アクアライフや合本、つまり雑誌や書籍の編集部の人間ではないんですね。なので、雑誌や書籍は、ほぼ一読者であるというか。
山口:ええ。板近さんが関わった記事のチェックぐらいですね、発売日より前に見ていただくのは。
板近:そうですね。ほとんどの記事を発売後に見ています。そんな、一読者として「合本に続く特集」がどんな風に作られていったのか、発売前から気になっておりました。
山口:わかりました。過度の宣伝にならないように、言葉を選びながらお話ししますね(笑)。
板近:(笑)。
山口:「合本に続く特集」であるという点は、私も悩みました。板近さんがおっしゃるように、合本はいろいろな要素が掲載されていますので、7月号で新たにパルダリウムを特集するにしても“それまでになかった切り口”というのも難しく。
板近:たしかにそうなりそうですね。
山口:であれば一つの要素を広げようと思いまして。
板近:一つの要素ですか。
山口:はい。それが制作例だったんです。
板近:実際、7月号は制作例が多く掲載されていましたね。
山口:ええ、制作例をたくさん掲載しようと思って、9〜10の制作例を掲載しました。全て新作というか、この特集のために作ってもらったものです。
板近:私も、あの合本にはない「新規情報」として見ることができました。やはり実例は参考になりますね。
山口:そうですね。今、パルダリウムに興味がある方は多いと思うのですが、難しいと思える部分もあるのではないかなと思うんです。それは本誌の読者であるアクアリストであっても同様で。
板近:水草と陸上の植物で勝手が違う所などもありますもんね。
山口:はい。そういった点で悩んでいたりする方の背中を押すには、実際の制作例をお見せするのが一番だろうと、そう思ったんです。たとえば陸地の作り方なんて、アクアリウムにはない要素だから。
板近:ええ。いろいろなアイデアがあって参考になりました。たとえば、36ページの◯◯を◯◯に◯◯るアイデアとか「ここから…………こうなるのか!」と感動しました。あ、ここはネタバレ防止でこの雑談公開時には伏せ字にしときますね。読む人の楽しみを奪ってはいけませんし。
山口:(笑)。今回の制作例はプロの方々に頼んだのですが、基本的にはその方のアイデアを優先したいと思いまして、私からはあまり細かく指定をしていません。それをしてしまうと、私の脳みその割合が多くなるから多様性に乏しくなりますし。
板近:バリエーション豊かな制作例が掲載されていましたね。
山口:はい。プロのみなさんは、「自分なりの表現で読者の皆さんに楽しんでもらおう!」という気概がありますし、見応えのある制作例が集まりました。
板近:はい。本当に見応えありました。
山口:もちろん、特集の全体がわかるのは私だけだから、同じような制作例が複数掲載されないような調整はしましたが。ともあれ、実際に見ていただいてこその制作例なので、ぜひ手にとっていただければ。
7月号は表紙にザクが登場!
板近:少し今月号の表紙について、よいでしょうか。
山口:どうでしたか?
板近:「アクアライフの表紙にザクがいる!」となりました。以前、ホビージャパンさんとのコラボで作った水槽(制作過程を月刊アクアライフ2019年12月号~2020年4月号まで掲載)ですよね。
山口:そうそう! 当時その水槽を作ったショップさんで、その後もきちんと管理されていたんですね。それで、植物がより育ってよい雰囲気になったから、今回、改めて取材に伺ったんです。
板近:その後がすごく気になっていた水槽だったので、嬉しかったです。
山口:7月号の表紙を決める段になってよい写真が他にもあって悩んだのですが、せっかくザクが入っている水槽を撮り下ろしたわけですし、とてもかっこいい写真であったので「ここで表紙にしないでどうする!」と。
板近:それで表紙に!
山口:パルダリウムって、なんというかジオラマ的であるし、プラモデルやフィギュアがよく似合うんですよね。
板近:ザクが月刊アクアライフの表紙に自然に溶け込んでいるのが、パルダリウムの楽しさをすごく表している気がしました。
山口:なるほど。
板近:Twitterで表紙画像が先行公開されたのを見てから、「はやくこの表紙生で見たいなぁ」という気持ちで到着を待っておりました。
山口:(笑)。ぜひぜひご堪能ください。
月刊アクアライフ2021年7月号の特集は「パルダリウムの作り方」 今回は、セッティングの過程がよくわかるように、制作例を数多くご紹介いたします。この夏、パルダリウムとアクアテラリウムを始めてみませんか。