みなさんこんにちは。
アクアライフWEB編集部です。
買って楽しんでいる方がほとんどでしょうが、金魚は手元で殖やすこともできます。
人工授精の具体的な手順なども解説してみましょう。
金魚Q&Aとは 金魚Q&Aは金魚に関する様々な疑問に理科教諭、生物部顧問であり金魚の研究なども行なっている川澄 太一(かわすみ たいち)さんにお答えいただく連載です。一回一回独立したQに答えていくので、まとめて読んでいただいても、気になるQだけ見ていただいても、どちらでも大丈夫! 金魚Q&Aの更新情報はアクアライフ編集部のTwitterでもお知らせしておりますので合わせてご覧ください。 |
Q:金魚は何歳から卵を産む? 繁殖に適した年齢は?
生まれた1年後には繁殖します
今年の春に生まれた金魚がいるとします。
雄雌ともに、その金魚が子孫を残せるようになるのは、基本的には次の年の春です。
私の友人には、生まれて半年後の秋に産卵させた経験を持つ人もいますが、一般的には次の年の春には子孫を残せます。
繁殖に適した年齢は、卵を多くとるのであれば3歳魚くらいからかな、と思います。
なぜなら、体が大きいため卵を多く産めるからです。
となると、オスの方も大きなメスを追いかけることができるサイズがあるといいですよね。
以上のような理由で3歳魚くらいからが適齢になるわけです。
ただ、人工授精をするのであれば、理論的にはオスは小さくてもいいはずです。
私は学校の授業で金魚の精子を用いて浸透圧の実験を行ないますが、ほんの一滴の精液のなかにものすごい数の精子を観察することができます。
1つの卵細胞に1つの精子が入ればいいわけですから、オスの体が小さくてもたくさんの精子を用意することができるわけで、問題はないはずです。
※年齢についての関連記事はこちら。
きれいに育つのは…
実際に金魚に卵を産ませて、その稚魚を育てた経験のある人ならわかると思いますが、なかなか思い通りの形質・外見を持つ金魚にはならないですよね。
赤と白の更紗の金魚同士を交配して子どもをとっても、きれいな模様の金魚に仕上がることはほとんどありません。
私の感覚では、1000個卵がとれても、専門店などで販売することができるレベルの外見を持つ金魚に育つのは30匹くらいですねえ……。
うっかり水質が悪化するなどして死なせてしまうこともあり、私の場合はこんな具合です。
先ほどは3歳以上のメスが適していると書きましたが、このような確率であるため、ある程度成長して卵をたくさん産んでもらう必要があるのです。
人工授精にするのであれば、オスは2歳からでいいと思います。
室内で飼育していて、暖房がよく効く環境であれば、金魚は1月頃に卵を産むことが多いです。
早朝に金魚がいつもとは違ってバシャバシャ音を立てながら泳ぐので、水槽のある部屋で寝ているとその物音で起きることもあると思います。
暖房がそんなに効かない部屋であれば、桜の花が咲く頃からゴールデンウィークにかけてよく産卵を目にすると思います。
※オスとメスの見分け方についての関連記事はこちら。
人工授精の方法
私が行なっている人工授精の方法を紹介します。
用意するものは、
・タオル
・サランラップ
・平たいお皿
・飼育水を張ったバケツ×2
・手のひらサイズのタッパー
・ビニール袋をタコのように裂いた人工産卵床
です。
春になるといつも朝6時30分頃に水槽を見るようにしています。
卵を産んでいるメスを見つけると、それを追いかけているオスもとらえて同じバケツに移動させます。
このとき「卵がこぼれて、もったいない!」といつも思ってしまいますが、まあしょうがないです。
もう1つのバケツには人工産卵床を入れておきます。
こちらのバケツは人工授精の最後に使います。
さて、メスから産み出された卵は、水に触れてから受精の準備を始めるのですが、その後、短い時間で精子を受け入れられなくなります。
ですので、精子と受精させるまでは、できるだけ水に触れさせないようにしたほうがよいのです。
一方の精子も、淡水中に放出されると、およそ1分で動きが鈍くなります。
顕微鏡で見ると、当初はあまりにも精子がよく動くので、アナログテレビの放送が受信できないときのザラザラしたような状態を観察できます。
ですが1分ほど経つと、運動が衰えて粒々がたくさん並んでいる状態になります。
ですので、人工授精はスピードが大事です。
人工授精の手順.1
それでは手順を説明します。
まず、サランラップを用意して平たいお皿に広げます。
サランラップを使う理由は、卵はサランラップにほとんどくっつかないからです。
このあとの作業で卵と精子を混ぜ合わせたり、産卵床にまくので、ここで卵がくっついてしまうと困るんです。
魚の体から卵をとるときに、卵に水がかからないよう、メスの体をさっとタオルでふきます。
とはいっても、実際には尾ビレなどについている水が卵に触れてしまいますが……。
あまり細かいことは、気にしないようにしましょう。
さて、広げたサランラップの上にメスを手で抱いたまま移動し、そのまま肛門と腹ビレの間のやわらかい膨らみを優しく押します。
すると、メスは卵を産み出すので、それをラップの上に撒きます。
メスの体の中に卵がたくさんあると、ちょっと押しただけでたくさん卵が出てきます。
でも、ここであまりしつこくお腹を押しつづけるのは避けたほうがよいです。
私は一度、押し続けた結果、肛門から出血してしまい、残念ながらその金魚は死んでしまいました……。
人工授精の手順.2
次はオスです。
オスは手のひらサイズのタッパーで放精させます。
タッパーには飼育水を1.5cmくらい張っておきます。
タッパーの水にオスの体を漬けて、メスと同じように肛門と腹ビレの間をやさしく押して精子を水の中に放出させます。
そして、その白く濁った液体をサランラップに広げた卵にまくのです。
その後、30秒ほどサランラップ、もしくはそれをのせているお皿ごと優しく揺らし、卵と精子を混ぜ合わせます。
これで受精したものと考えます。
次にその受精卵を、人工産卵床が入ったバケツに優しく撒きます。
うまい具合にビニール袋(人工産卵床)についていくことでしょう。
ここで気を付けたいことは、撒いてすぐに「受精卵がついたかな?」とビニールを持ちあげたりしないことです。
まだくっつくことができていない受精卵がこぼれてしまいます。
こぼれてもバケツの底にくっついてふ化しますが、私の経験では受精卵がぐちゃっと一塊になっているとふ化率が落ちます。
多分、その塊の中の数個が受精できていなくて、それが腐り、他の生きている受精卵に悪影響を与えるからではないでしょうか。
ここまでに用いた水についても注意を述べておきます。
春頃、蛇口から出てくる水道水は、水槽の飼育水よりは水温が低いことが普通です。
人工授精において、「水温が低い水に精子を撒くと受精率が下がる」という話を養殖業者の方から聞いたことがあります。
ですから、産卵していた金魚たちがいた水槽の水を用いるとよいと思います。
特に、オスの精子をとる水は、水槽の水を使用しましょう。
受精後の卵の管理
人工産卵床に撒いたあとは水カビ病予防の薬を入れ、優しくエアーレーションをします。
受精できなかった卵が腐る可能性があるので、水質が悪化していないか毎日観察を続けて、場合によっては水換えをしてください。
その時は液体タイプのカルキ抜きなどを用いた水道水を使ってください。
新鮮できれいな水であることが大切なので、人工授精のときのように、金魚のいる水槽の水を使う必要はありません。
自分でとった金魚には愛着がわきます
ここまでの話を読むと、なんだか面倒で手間がかかりそうだなと思う人がいるかもしれませんが、人工授精には10分もかかりません。
これがうまくいくと、いろんな金魚が育つ様子を見ることができて、さらに新しい世界が開けます。
お店で金魚を買うだけでは見られないものがたくさん経験でき、楽しめます。
やみつきになりますよ。
自分の家で卵から育てた金魚にはなんともいえない愛着がわきます。
それに成長も楽しめます。
お店で二歳魚を購入しても成長を楽しむことができますが、卵から金魚らしい大きさまで育つときの成長には迫力があります。
きっと、金魚という生き物を見る目が少し変わると思います。
卵から、1cm未満の稚魚になり、やがて1円玉サイズになると親のような形に近づき、夏が来ると褪色が始まります(関連記事)。
褪色して、果たしてどのような模様になるか?
いつもワクワクします。
時には死んでしまったりしてうまくいかないこともあるでしょうが、楽しみの方が多いので私は毎年金魚に卵を産んでもらっています。
ちなみに、私は1000匹の稚魚であれば200Lの容器×5個に分けて飼育します。
そして、そのほとんどを金魚すくいや理科のイベントで配布しています。
本当は全部飼育したいところですが、なかなか難しいのです。
そのうち30匹ほどの自分の気に入った金魚を残すようにしています。
500円玉サイズの子がだいたい30匹、10月頃に残ります。