みなさんこんにちは。
熱帯魚Q&A編集部の山口正吾です。
本日は「熱帯魚の学名ほか名前」について解説します。
このあたり、けっこうややこしいんですよね。
熱帯魚Q&Aとは 熱帯魚Q&Aは“熱帯魚専門編集部”が、熱帯魚の飼育などに関する質問にお答えしていく連載です。熱帯魚Q&Aの更新情報はアクアライフ編集部のX(旧Twitter)でもお知らせしておりますので、あわせてご覧ください。 |
学名は世界共通の生物の名前
まずは学名について。
筆者の力不足もあり、全体を詳細に解説するのはちょっと難しい……というか無理なので、熱帯魚派アクアリストに有用であると思われるところを解説します。
より詳しくは専門の書籍をお読みになるとよいでしょう。
学名についてこれから学びたい方には、細谷和海先生の「シーボルトが持ち帰った琵琶湖の魚たち」という本がおすすめです。
学名についての専門書ではありませんが、第3章では学名や記載について、わかりやすく解説されています。
……
さて。
前置きが長くなったので、サクサクと進めていきます。
学名は世界共通の生物の名前です。
「FISHES OF THE WORLD FIFTH EDITION」という本によると、魚類には32000種以上が記載されているそうです(学名がつけられているそうです)。
この本は2016年の発刊なので、現在はもっとたくさんの種類が記載されているはずです。
学名は、学術的な用途のほか、商業や法律など一般でも使われます。
その一般には我々が楽しむアクアリウムも含まれます。
というのは、学名で流通する熱帯魚もあるからです。
学名はラテン語のアルファベットで記されますが、日本国内では学名にカナをあてた名前で流通することが普通です。
たとえば、Corydoras pandaという学名の熱帯魚は、日本国内ではコリドラス・パンダという名前で流通します。
学名は属名と種名で構成されます。
上記のCorydoras pandaでは、Corydorasが属名でpandaが種名です。
これは「Corydorasというグループのpandaという種ですよ」ということを示しています。
(少し難しい言い回しになりますが、属は種に対して上位の分類単位であり、近縁の種をまとめたものです)
学名は1種に対して1つあり、同じ学名が複数の種につけられないように運用されています。
ですから、Corydoras pandaと記されていれば、世界中の人が同じ魚(種)を特定することができるわけです。
ちなみに、ここまで読んだ方は、Corydoras pandaが斜体になっていることに気がついたかもしれません。
学名を使う際にはそれが学名とわかるように、斜体を用いて他の書体とは異なるように記すことがルールとされています。
学名と熱帯魚の名前は別物なの?
これについては別物とも言えるし、そうではないとも言えます。
先ほど述べたように学名で流通する魚もいますが、その他の名前で流通する魚もいるからです。
その他の名前(学名以外)の主なものに、英名(英語圏で使われる名前)、現地名(その魚の採れた地域で使われる名前)、和名(日本で使われる名前)などがあります。
英名の例では、Neon tetra(ネオンテトラ)があります。
現地名の例では、Pirarucu(ピラルクー)があります。
和名の例では、海水魚になりますが、カクレクマノミがあります。
当然ですが、日本産淡水魚はほとんど和名で流通します。
ここで、学名、英名、現地名、和名のうち、その魚がどの名前で流通するのか(誰がどんな風に名前を決めているのか)、疑問に思った方もいるかもしれません。
実際のところ、日本のアクアリウムにおいては流通名を定める機関はなく、採用の基準もありませんから、およそ馴染みのよい名前で流通していると思ってよいでしょう。
品種名とハウスネーム
以上は原種について述べましたが、改良品種には品種名がついて流通します。
たとえば、グッピーにはブルーグラスやドイツイエロータキシードほか、たくさんの品種がありそれぞれに品種名がついています。
これはベタやディスカスなどの改良品種も同様です。
また、細かい話になりますが、改良品種または養殖された魚には、ブリーダーや販売業者が独自につけたハウスネーム(ブランド)があることもあります。
たとえば、レッドアロワナには、ウルトラレッドやメタルレッドなど、たくさんのハウスネーム(ブランド)があります。
魚ではありませんが、ファンシータイガーシュリンプには、SARASAタイガーや太極(たいぢ)などのハウスネーム(ブランド)があります。
……
以上、簡単ではありますが、熱帯魚の名前には、学名、英名、現地名、和名、品種名、ハウスネームなどが混在していることがおわかりになったものと思います。
そのことで難しく感じるかもしれませんが、興味のある分野(魚)に触れていれば自然と馴染んでいくものと思います。
アクアリウムは趣味ですから、無理をして関心のない魚の名前まで覚えることもないですし、学名について体系的に学ぶ必要もありません。
もちろん、学びが喜びになることもありますから、興味があれば存分に取り組んでもよいと思います。