みなさんこんにちは。
アクアライフWEB編集部です。
今回のアクアの雑談のお題は、発売になったばかりの月刊アクアライフ2023年1月号「2023年 アクアリウム超図鑑800」についてです。
アクアリストの身近な存在である図鑑について、一歩踏み込んだお話もさせていただきましたので、図鑑をお持ちの方もそうでない方もぜひご覧ください!
おかげさまで第3弾です。
図鑑を見て憧れる。子どもの頃から何度もそういうことがありました。
アクアの雑談は、その名の通りアクアリウムに関する「雑談」をお届けする連載です。お題は回ごとにいろいろ! 雑談いたしますのは、株式会社エムピージェー出版部長で月刊アクアライフ前編集長の山口 正吾(やまぐち しょうご)と、アクアライフWEB編集部に社外からの協力スタッフとして参加している板近 代(いたちか しろ)。雑談ならではのお話を、どうぞお楽しみください。 |
月刊アクアライフ最新の図鑑特集号が登場です!
板近:2023年1月号は図鑑特集号ですね!
山口:そうなんですよ、800種図鑑の第3弾。つい先日(2022/12/9)出たばかりで。
板近:2021年、2022年と3年連続の図鑑特集号。これは月刊アクアライフ史上初のことですか?
山口:初めてかな? まあ、初めてでしょうね。お陰様で好評であり、3年連続の特集採用となりました。
板近:今日のアクアの雑談は、その最新の図鑑特集号についてお聞きしたいと思うのですが、良いでしょうか?
山口:いいですよ。メインの担当は私ですし。
板近:でははじめに「アクアリウム初心者さん」と「今まで図鑑特集号を買ったことがない方」に向けたお話。次に「過去の図鑑特集号を購入した方」に向けたお話をお伺いしたいと思います。
山口:わかりました。
板近:その後にもう一つ、質問させていただきたいことが。
山口:今日はずいぶん段取りが決まっている感じがありますね。「アクアの雑談」にしては珍しい(笑)。
板近:図鑑特集号については2021年号、2022年号とお話をお聞きしましたから、さすがの私も心の準備ができていたようです(笑)。
初心者さんでも手に取りやすい図鑑
板近:では早速「アクアリウム初心者さん」と「今まで図鑑特集号を買ったことがない方」に関連する質問をさせていただきますね。
山口:はい。
板近:私の感想で恐縮ですが、図鑑特集号はアクアリウム初心者さんにも勧めやすいし、月刊アクアライフを今まで買ったことない人にも勧めやすい特集だなと思っているんです。
山口:たしかに、800種が掲載された図鑑をパラパラとめくって眺めるというのは、他の特集号とは異なる面白さだと思うし、そもそも熱帯魚は種類が多いから図鑑との相性は良いと思う。
板近:いろいろな魚を一挙に見れるというのは魅力です。熱帯魚を多く掲載しているだけでなく、他のグループも掲載した号になっていますし、一冊でいろいろと知れる楽しさもあるかなと。
山口:おっしゃるとおり、熱帯魚以外にも改良メダカを掲載していますし、今回は水草を掲載していますから、よりアクアリストに身近な図鑑になっていると思う。
板近:水草の追加は熱いなと思いました。一冊で対応できる幅がぐっと広がっている。
山口:今回は60種以上の水草を掲載しています。掲載の基準は水草レイアウトによく使われる種類。実はレイアウトに使われる水草はそんなに多くないから、この図鑑号を持っていればある程度はカバーできると思います。
板近:レイアウト水槽を見て「あの水草なんていうのかな?」と思ったときにも役立ちそうです。
山口:そういう図鑑の使い方もいいですね。ただ、水草はレイアウトに使いやすいもの以外でもたくさんの魅力種があるし、より広く水草を知りたい方もいると思う。そういう方には、弊社刊の「水草500種図鑑」をお勧めします。
板近:趣味を深めていくのは楽しいですよね。
山口:ですね。この度発売となった図鑑特集号は、気楽に眺めてもらってもいいし、より深く知るためのきっかけにしてもらってもいい。そういう意味でも、初心者さんにも使いやすい図鑑になっているのではと思います。
過去の図鑑特集号を買った人が買っても楽しめる?
板近:ここからは「過去の図鑑特集号を購入した方」に向けた質問に移らせていただきます。
山口:はい。
板近:2023年の図鑑特集号は過去の図鑑特集号、つまりは2021年版、2022年版を購入した人が買っても楽しめる内容になっていますでしょうか。2022年発売時には「2021年と2022年ではできるだけ魚がかぶらないようにした」と、お話をお聞きしましたが。
山口:それについては方針を引き継いでいて、2021年、2022年、2023年それぞれ、なるべく種類がかぶらないように作っているので、過去の号をお持ちの方でも楽しんでいただけると思います。どうしても外しにくい種類などもあり、一部はかぶっていますが。
板近:基本的な種類が載ってないと、初めて買う人が困っちゃいますもんね。
山口:それもあるし、例えば「この種類はあの種類と似ている、またはここが違う」など、ある種を基準にした解説をする際に、基準となる種が掲載されていないと分かりづらいから。
板近:写真で見比べられるというのは大きいです。
山口:ともあれ、過去号から多くの種類を更新しているのは間違いないので、2021年、2022年と図鑑号を購入された方でも楽しんでもらえると思います。
板近:3冊合計すると何種類くらいになるんでしょう。
山口:800種の3回だから単純に言えば2400種、かぶっている種類を考慮してもそれに近い数は載ってるんじゃないですかね。
板近:かぶりを避ける作業というのは、実際どんな感じですか?
山口:3回目の800種図鑑ということもあり、かぶらないように構成するのが少し大変なグループもありました。有名なグループでも、そこそこの種数しかいないものもありますから。
板近:なるほどですね。
山口:ただ、先ほども言ったように熱帯魚は種類が豊富だし、地域タイプやsp.もありますから、そこは専門誌ならではのフォトストックで乗り切ることはできました。
板近:熱帯魚好きからすると、タイプなどまで押さえてくれるのは嬉しいです。逆に、更新が難しくないグループというのもありますか。
山口:新着の多いグループや改良品種はその点でいえば悩みは少ないかもしれない。たとえば、改良ベタなどは日進月歩ですから。
板近:たしかに、どんどん新しい品種が出てきますもんね。質問続きとなりますが、2023年は過去の号と比べると、図鑑全体の雰囲気に変化はありましたでしょうか。
山口:振り返ると、いちばん最初の2021年号は基本的な種が多く掲載されていると思います。それに比べると2023年号は少しマニアックになっているかもしれない。もちろん、基本的な種は掲載していますから、初心者さんを置いてけぼりにするようなことはないと思いますが。
板近:基本的な種から、マニアックまで。そういう幅があるのは楽しいですよね。それは、より多くの人が、好みの魚を探しやすいということでもあると思いますし。
山口:人の好みもいろいろですからね。
図鑑は「好きだからこそのコメント」に注目?
板近:私は図鑑特集号で、すごく楽しみなことがあって。
山口:なんでしょう。
板近:コメントですね。写真とともに掲載されているコメントが、ただ特徴を書いているだけでなく気持ちまで伝わってくるというか。
山口:なるほど。私ども編集部は根っこがアクアリストだから、思い入れがにじみ出てしまう種があるかもしれません。また、魅力などは主観で書くしかないこともあるし。
板近:図鑑として役立つコメントであり、さらには全体としてまとまりもある上で、気持ちが伝わってくるというのはすごいなぁと。アクアリストとしてだけでなく、物書き仕事をしている身としても思いました。
山口:図鑑特集号は、書き手が編集部を中心にしているので、完璧ではないにせよ、ある程度は解説の書き方を共有しているし、全体に見ればまとまっていると思います。
板近:なにか図鑑づくりで「こういうところが難しい」みたいな、そんなエピソードはありますか?
山口:難しい……か。仕事だし、自分でそういう話をするのはちょっと気恥ずかしさがあるのですが。
板近:すみません(笑)。ただ、図鑑として見せることを考えた上で800種並べるというのは簡単なことではないだろうなと思い、聞いてみたくなってしまいました。
山口:では少しだけ(笑)。板近さんの言う通り、簡単ではないところはありますね。たとえば、どのグループを何種にするかなどの配分も頭を使うところです。それは熱帯魚の市場を継続的に肌感覚で捉えていないとできないと思うし、機械的に振り分けられるものでもない。正解がないから。
板近:経験や知識がないとできないことですね。
山口:その他、単純なところでは、800種に通し番号をつけているのですが、これを間違えないようにしないといけない。
板近:それも神経使いそうです……。
山口:グループごとに担当が分かれているから、そういう全体に共通した仕事の進め方はきちんと共有しておかないとミスが起きる。ミスが起きるとリカバリーが大変ですから。800種もあると。
板近:やはり、量の多さゆえの難しさもあるのですね。
図鑑の掲載順ってどうやって決めてるの?
山口:他になにか質問ありますか?
板近:あります! 図鑑の並び順……魚の並び順や、グループの並び順をどう決めているのかなと。
山口:そこですか。うちの雑誌の図鑑特集号は、カテゴリで言うとカラシン、コイ、熱帯メダカ…という順番ですね。この順番に関しては、熱帯魚独特だと思います。
板近:熱帯魚独特なんですね。たしかに、アクアリストとして見慣れた分け方です。
山口:そうそう。普通というか、大学の出版会が作るようなかちっとした図鑑では、古い魚から新しい魚という順番に並んでいることが多いんですね。
板近:魚の歴史を追う形で。
山口:そうです。そういう並びだと、ヤツメウナギなどの無顎類から始まって、次にサメやエイなどの軟骨魚類、その次にコイやスズキが含まれる硬骨魚類……そして最後はフグになる。大雑把にいうと。
板近:なるほどです。
山口:そういうスタイルがオーソドックスなんです。対して私どもの図鑑特集号は、硬骨魚類であるカラシン(テトラ類)が先頭に来る。
板近:そこがまさに「熱帯魚独特」なのですね。
山口:ええ。この並びはアクアライフに限った話ではなくて、他社さんの熱帯魚図鑑でもカラシンが先頭に来ることが多いかな。
板近:たしかに、熱帯魚図鑑がカラシンから始まる印象が私の中にもある気がする……!
山口:全ての熱帯魚図鑑共通とまでは言えないかもしれないけれど、ただ、うちの書庫にある古い本を見てもそうなっていますね。たとえば、アクアライフが編集した本だと1982年頃に発刊された「熱帯魚入門」でもそういうスタイル。カラシンが先頭に来ている。
板近:カラシンが先頭に来る理由はなんでしょう。
山口:なんとなくですけれど、カラシンは花形だし、最初に人気種を載せて読者の心をつかみたいという編集的な心情が背景にあるんだと思う。
板近:なるほどですね。また、カラシンは「初めて飼う熱帯魚」として選ばれることも多い魚がいるグループでもありますよね。ネオンテトラやカージナルテトラなど。
山口:ええ。今となってはこの並びが私も馴染みがいいし特に変更する必要もないと思っています。
アクアリスト向けの図鑑だからこそ
板近:アクアライフの図鑑特集号では、熱帯魚に含まれるメダカの仲間と、日本のメダカ(改良メダカ)が別カテゴリになっていますよね。それもまた、アクアリウム的かなと思うのですが。
山口:ああ、そこですか。ここはちょっとお話だと説明が難しいかな……。
板近:ざっくりと……お願いしてもいいですか?
山口:では。簡単にいうと、日本のメダカはオリジアス属の魚であり、オリジアス属は日本以外の熱帯域にも分布しているんですね。
板近:ええ。
山口:ただ、日本のメダカ、特に改良品種は一つのカテゴリとして成立しているし、熱帯産のオリジアスと同じカテゴリで紹介するのも不自然なんです。
板近:趣味の分類として不自然なんですね。
山口:そうそう。だから、日本のメダカでカテゴリを一つ作って、その他の熱帯産のオリジアスは「熱帯メダカ」というカテゴリのなかで紹介しています。
板近:アクアリストの図鑑としてはそのほうが実用度も高そうです。
山口:メダカについては一例ですが、ベースとしてはアクアリストに最適化しようと試行錯誤した結果、今みたいな並び順やカテゴリになったのだと思います。これは、他社さんも含めた先輩編集者さんたちが繋いできたスタイルですよね。
板近:なるほどですね。
山口:「熱帯魚の図鑑はこういうもの」という風に受け入れてもらえる土壌みたいなものは、長い時間をかけて作られてきたんだと思います。時代時代での変化はあるにせよ、繋いできたものであることは間違いない。
板近:素敵な話です。
山口:素敵かな(笑)。ともあれ、今話したような熱帯魚独特なスタイルは、各カテゴリ内にもあって。たとえばですが、「コイ」というカテゴリは「小中型種」「ローチ」「大型種」という分け方をしています。
板近:大型、小型なども熱帯魚的な分け方ですね。飼育環境にもダイレクトに影響しますし。
山口:はい。他にも、シクリッドは産地で分けられていますね。南米、中米、タンガニイカ湖やマラウイ湖などの産地という要素は、シクリッドを楽しむ上では軸になるから。
板近:趣味のジャンルに沿った分け方を、カテゴリ内でもしているわけですね。
山口:そのほうが親切だと思うし、自分としても南米産のディスカスとマラウイ湖産のアーリーが隣り合っていたら違和感があるから、自然とそういう分け方になっている。
板近:たしかに、アクアライフの図鑑は自然に読める感じがありますね。
山口:そう言っていただけるとありがたいですが、私どもはアクアリストに向けた雑誌をずっと作っていて、感覚として身についているからそれが自然なんです。
板近:なるほどです。
山口:そういう意味では、趣味の分類がされているので、「熱帯魚ってこういう世界なんだな」と自然に理解できる図鑑には仕上がっているかなと思います。
板近:ええ。
山口:お店だってそうじゃないですか。専門店を見ればディスカスに強い店、小型魚に強い店、水草に強い店、古代魚、大型魚に強い店と、自然と分かれている。総合店は別にしても、そういう文化みたいなものが雑誌にも落とし込まれていると。
板近:実際にお店で魚を買うことや飼育とイメージを繋げやすい図鑑でもありますね。アクアリストの即戦力になってくれる一冊というか。
山口:であれば、先程板近さんがおっしゃった「月刊アクアライフを今まで買ったことない人にも勧めやすい」というお話も、しっくり来るのかなと思います。
板近:やはり800種はかなりの数ですから「この魚好きだな」とか「初めて見た!」とか、出会いもたくさんあると思うんですよね。
山口:ええ。図鑑はやはり楽しいものです。
「2023年 アクアリウム超図鑑800」は絶賛発売中です!
板近:では最後に、「2023年 アクアリウム超図鑑800」の特集担当でもある山口さんから、読者さんに向けてメッセージをお願いいたします!
山口:メッセージですか……。仕事なのであまり大袈裟なのも気恥ずかしくはありますが、なんにせよアクアリウムに興味がある人なら、持っていて損はない特集に仕上がったと思います。そもそも800種が載っていて、この価格はお値打ちだと思いますし(笑)。
板近:付録にはポスターカレンダーもついていますもんね。
山口:そうそう、今回のカレンダーも仕上がりが良いと思いますよ。
板近:いいですよねぇ。あ、まだ購入されていない方に向けて、この雑談公開時には詳細ページへのリンク(以下の表紙画像です!)を掲載しておきますね。楽しい図鑑をぜひ!
山口:みなさまどうぞ、よろしくお願いいたします。